放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

タイ,クーデターでテレビなど軍の統制下に

タイで9月19日,タクシン首相の外遊中に軍部によるクーデターが起きた。19日午後10時頃から,チャンネル3,5,7,9,11など地上放送の全てのチャンネルが通常放送を停止し,国王のビデオ映像を流した。その30分後にはそれぞれのチャンネルで,「軍幹部と国家警察によって構成される『政治改革協議会』が,民主主義のもと,国王を国家の頂点として,抵抗もなくバンコクと周辺都市を完全制圧した。国の平和と秩序を保つため協力を要請する」という趣旨の字幕を放送した。またタイ情報・通信技術省のクライソーン・ポーンステー次官は21日,テレビ・ラジオ局や新聞社など各メディアの代表を集め,テレビやラジオの番組で視聴者からの意見を放送するのを自粛するよう要請した。こうした報道統制の動きに対し,タイ・ジャーナリスト連盟など4つの団体は26日会合を開き,クーデターで実権を握った民主改革評議会(CDRM)に対し,国民とメディアの表現の自由を保障するための行動規範の公表などを求めた。

香港,RTHK経営委員の任命手続き案発表

RTHK を含む香港の公共サービス放送の将来について検討している有識者委員会のレイモンド・ウォン( 黄應士)委員長は9月27日, 今後RTHK の業務運営に当たる経営委員の任命方法について,行政長官の裁量で決められる委員の人数を4人とする案を明らかにした。検討委員会の案によると,経営委員のうち9人はメディア・教育・科学技術などの各分野から推薦を受けた人物の中で選考し,行政長官が直接指名する4人と共にRTHK の最高経営責任者を選出するとされている。またRTHK の財源については,当初3年間は100%政府予算による一方,10年以内に協賛金・寄付などの収入比率を20%まで向上させるとなっている。今回の提案は,政府によるRTHKの管理強化を求める親中派と,RTHK の独立性強化を求める民主派の双方に一定の配慮をしたものとなっており,RTHK の従業員組合は,独立性強化の方向を基本的には歓迎している。

インド,Zee が中国CCTVと番組交換協定締結

インドの大手衛星テレビ事業者Zee Networkは,9月18日,中国中央テレビ(CCTV)と番組交換協定を結んだことを明らかにした。Zee によると,CCTVがZee Networkに英語のテレビ国際放送CCTV-9のニュースや番組の使用権を認める代わりに,Zee NetworkはCCTVに自社のニュース・番組の使用権を認める。双方は,ニュース番組やドキュメンタリー,それに文化,歴史,地理,経済などの紹介番組交換の他にドラマや映画,特集番組などの共同制作も行う。ドラマや番組は主に購入ベースで交換されるが,ニュースは無償で行われる。協定の期間は2年だが,双方の合意で延長可能。背景にインドと中国の間の関係改善がある。

韓国,第3期放送委員会の新委員長決まる

韓国の第3期放送委員会委員長に,漢陽大学校元教授でこれまで政府の各種委員会委員長などを 歴任したチョ・チャンヒョン(趙昌鉉)氏が,9月26日,互選で選出された。第3期放送委員会は7月12日に発足し,委員長にイ・サンヒ(李相禧)放送文化振興会理事長が選出されたが,8月末に健康上の理由で辞表を提出,趙氏はその後任の委員として大統領から推薦を受け,22日に任命されたばかりだった。

韓国,地上波DMBの地下鉄区間サービス停止へ

首都圏で地上波DMB を実施している6社から構成されている地上波DMB 特別委員会は,ソウルメトロ・都市鉄道公社・鉄道公社など首都圏の地下鉄事業者と地下鉄内中継網の占用料をめぐり協議していたが,9月26日,現在の地上波DMBの収益モデルでは地下鉄側が提示している占用料を払えないとして地下鉄区間内の放送サービス断念を決定した。DMB サービスの目玉でもある地下鉄内の視聴がいつ停止されるかは,地下鉄側の対応次第となっている。

地上波DMB は,韓国が世界に先駆け実施している移動体向けのデジタル放送で,順調に利用者を増やしているが,広告売上が極端に不振なため本放送開始7か月で1,000億ウォンを超す赤字を出し,事業中断の可能性すら取りざたされている。