放送界の動き（ヨーロッパ） - 放送研究と調査（月報） 2006年7月

2006年7月｢放送研究と調査｣目次へ

英BSkyBのプレミアシップ生放送独占に終止符

イングランドのサッカー・プレミアシップのテレビ生放送権は，衛星放送のBSkyB とスポーツTV専門チャンネルを運営するSetanta の2社に販売されることが5月5日に明らかになった。欧州委員会は競争規制の観点から，プレミアリーグに対し1社によるライブ放送権の独占禁止を求めていた。このため，2007年夏からの3 シーズンの生放送権は6 つのパッケージに分割され，BSkyB は4 つ（92試合）を13億ポンド（約2,600億円）で，Setanta は2 つ（46試合）を約3億9,200万ポンド（約784億円）で獲得した。Setanta は，衛星放送のSky Digitalで試合を提供する他，地上デジタルの有料サービスのTop Up TV で放送することも検討している。

英BBC，デジタル送信業務をArqivaに委託決定

BBC は5月22日，地上テレビ放送のアナログ送信からデジタル送信への全面切り替えに際し，これまでのNational Grid Wireless（旧Crown Castle）から，Arqiva（旧NTL）に送信業務を委託することを決定し，契約の最終段階に入ったことを発表した。Arqiva は，1955年に商業テレビのITV が放送を開始してから，商業テレビ部門の送信業務を行ってきた。

独， DMBとDVB-Hで携帯端末向け放送を開始

ドイツ国内投資会社のコンソーシアムが設立したMFD は，携帯通信事業者Debitel と協力して，地上DMB 方式による携帯端末向け放送の商用サービスを5月31日，ベルリンやミュンヘンなど5都市で開始した。公共放送ZDF や音楽チャンネルMTV など4 つのテレビチャンネルと1 つのラジオチャンネルを月額9.95 ユーロ（約1,400円）で配信する。また，T-Mobile やVodafone など4携帯通信事業者は共同で，DVB-H 方式による試験放送をベルリン，ハンブルクなど4都市で5月29日に開始し8月31日まで実施する。

独ProSiebenSat.1，有料チャンネルを開始

商業放送グループProSiebenSat.1 Media は，傘下のテレビ局Sat.1 とKabel 1 の姉妹チャンネルを有料サービスとして立ち上げ，6月1日に開始した。「Sat.1 Comedy」はコメディ専門，「Kabel Eins Classics」は映画専門の24時間チャンネルで，国内の主要ケーブルテレビ事業者のデジタルケーブルで配信されるほか，年内にはIPTV 方式による配信も予定されている。

仏大統領，地上テレビ完全デジタル化に向け委員会を創設

シラク仏大統領は5月4日，地上テレビ放送の完全デジタル化に向け，デジタル化戦略委員会を設置した。委員会は首相が委員長を務め，放送，産業，国土整備を所管する3閣僚と専門家3人，および放送と通信部門の規制機関であるCSA とARCEP の委員長で構成される。委員会は，地上デジタル放送による人口の100% カバー，放送法改正によるHDTV 放送や携帯受信の導入と規制機関の再編，2010年末までのアナログ放送停止を主導するほか，アナログ周波数の再割当て問題なども検討する。なお，地上デジタル放送では，公共放送のFranceTelevisions が6月1日，テニスのローラン・ギャロス大会のHDTV 実験放送をパリで開始した。

伊Sky Italia，HDTV放送を開始

衛星有料テレビSky Italia は，UEFA チャンピオンズリーグ決勝戦のHDTV 放送に続き，サッカーW 杯ドイツ大会で全64試合をHD 放送する。なお，スポーツ，映画，ドキュメンタリーなど合計4 つのHDTV チャンネルの提供が始まるのは7月の予定。HDTV の視聴には，月額利用料に加え7 ユーロの追加料金と初期費用99 ユーロ（約1万4,000円）が必要で，デコーダーはレンタルされる。

伊「3」，携帯端末向け放送の視聴料金を発表

世界8 か国で第3世代（3G）携帯事業を行うハチソン・ワンポア傘下の「3（トレ）イタリア」は5月8日，6月のサッカーW 杯から開始するDVB-Hによる携帯端末向け放送の視聴料金を発表した。テレビ視聴料として1日3ユーロ，1週間12ユーロ，1 か月29 ユーロ，半年99 ユーロの4種類を設定。その他，テレビ視聴，データ通信，一定時間の通話料が込みとなった月額49 ユーロで対応端末が無料となる定額プランを目玉商品としている。