放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

APの系列会社が北朝鮮に支局開設

映像コンテンツを配給するAP 通信の系列会社APTN(Associated Press Television News)社が,北朝鮮当局との4年にわたる交渉の末,5月22日,西側メディアとしては初めてピョンヤンに常設の支局を開設した。支局は英国本社から派遣される社員と北朝鮮の国営ラジオとテレビから派遣されるスタッフにより運営される。

韓国放送委,京仁地域の地上テレビ放送事業者を選定

放送局認可の推薦権限を持つ放送委員会は,4月28日,京畿道及び仁川地区の地上テレビ放送事業者として「京仁TV コンソーシアム」を選定した。同地域の地上テレビとしては京仁放送(iTV)があったが,財務の悪化や労使対立などを理由に,2004年,放送委員会が再許可推薦を拒否したため同年末日放送停止に追い込まれた。今回選定を受けた京仁TV コンソーシアムは,ヨンアン帽子(株)が最大株主で,キリスト教放送のCBS も主要株主の1 つとして参加している。同コンソーシアムは今後,放送委員会の許可推薦書交付と情報通信省の許可などを経て来年5月1日から放送を始める計画である。

台湾で「世界公共放送サミット」開催

世界18 か国の公共放送の関係者が一堂に会する「世界公共放送サミット」が5月8日,台湾の台北で開かれた。「文化の多様性」をテーマに開かれたサミットには,NHK,台湾公共テレビなど21 の公共放送機関の代表が集まり,「我々は文化的多様性が人間の基本的特質であり,それぞれの社会がユニークな文化的特色と文化的経験から形作られていることを認識する。我々は相互尊重が民主的な対話に基づき,メディアによって涵養(かんよう)されるものと信じる」としたサミット宣言を採択した。

台湾行政院,TVBSへの処分取り消し

台湾の行政院(内閣)訴願審議委員会は5月18日,先に新聞局がケーブル向け衛星テレビ局のTVBS に対して「株主構成が実質的に外資100%」であるとして行った罰金と期限つき改善の処分について,「会社法では台湾に関連会社を設立することによる外資系企業の間接所有を認めている」などとして,処分を取り消す決定を出した。この決定に基づき新聞局は罰金として徴収した100万元(約350万円)を TVBS に返還する方針を示した。

中国中央テレビ,IPTVの正式免許取得

中国の国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)は4月27日,中国中央テレビ(CCTV)の子会社「央視国際」にIPTV,携帯向けテレビ放送などの実施を認めた。IPTV の正式免許を取得したのは上海文広メディアグループに次いで2番目で,上海文広はすでに黒龍江省のハルビンで4万件の契約を獲得している。

インド,65の外国衛星チャンネルが登録を申請

インド政府は,国外から衛星にアップリンクしてインド向けに放送を行っている事業者に対し,5月11日までに登録申請をしなければダウンリンク(送信)を認めない旨,通達を出していたが,締切日までに65 のチャンネルが申請を行った。政府は,これらのチャンネルに対し,可否の結論が出るまで(6か月を超える場合は向こう6 か月間)国内のケーブルテレビ網での配信を許可することにしている。5月11日以降に登録申請を行うチャンネルは,政府の認可が下りるまでケーブルテレビでの配信が出来なくなる。パキスタンの国営テレビPTV や民放GeoTV,ARY などは締切日までに申請を出さなかった。

ネパール,最高裁が報道の自由回復の判決

ネパールの最高裁判所は,5月18日,ギャネンドラ国王親政時に放送弾圧の根拠として使われた「国家放送法」第8条と「出版・新聞法」第15(1)条は,報道の自由を保障する現憲法に抵触するとの判断を下した。「国家放送法」第8条は,ニュース報道の禁止命令に従わない商業FM 放送局の免許奪の法的根拠とされ,「出版・新聞法」第15(1)条は,政治的に微妙な問題の報道について政府が規制,検閲の権限を行使する法的根拠とされた。ネパールは2005年2月,「宮廷クーデター」により国王直接統治の下に置かれたが,高まる国民の反発に抗し切れず今年4月民政に復帰している。