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ブギウギ 茨田りつ子のお国ことば 『じょっぱり』って何?

  • 2023年12月14日

現在放送中の連続テレビ小説「ブギウギ」では、1999年に亡くなった青森市出身の歌手・淡谷のり子さんがモデルの「茨田りつ子」が、主人公の生涯のライバルとして登場しています。

「茨田りつ子」がドラマの中で使った青森のお国ことばについて掘り下げていきます。

今月4日放送では、警察の取り調べを受ける福来スズ子のことを「大丈夫でしょ、あの子は相当の『じょっぱり』ですよ」と表現します。

ドラマの中では、「青森では頑固者のことをそう呼ぶのです」とりつ子は説明していますが、取材を進めると「じょっぱり」とは、青森では単に頑固者という意味だけで使われていないことが見えてきました。

「じょっぱり」は頑固者?

まず、青森の人たちに「じょっぱり」にどんなイメージがあるのか聞いてきました。

20代 男性

ちょっとわからないです。

18歳 男性

意味はわからないです。

20代 女性

太鼓!じょっぱり太鼓。それ以外ではあんまり使わないかもしれない。

若い世代からは、聞いたことはあっても意味は分からないという声が多く聞かれました。
一方、50代以上の人たちに話を聞くと・・・。

70代 女性

津軽特有の頑固さみたいな感じ。間違ってもよくても頑として曲げないっていう感じ。夫婦げんかでは『じょっぱり』ですね。お互いに譲らない。

50代 男性

言うこと聞かない。ああしゃべればこうしゃべる。赤っていえば黒ってしゃべるような感じ。

「じょっぱり」の酒蔵にも聞いてみた

一方、幅広い世代が挙げたのが・・・。

18歳 男性

じょっぱりといえば日本酒のイメージがあります。

70代 女性

日本酒しか出てこない!好きで、じょっぱりはね。八戸から青森に転勤してきた時、やっぱりそのネーミングに引かれて。

「じょっぱり」という銘柄の日本酒です。そのネーミングに込められた思いを聞けば、「じょっぱり」のイメージもより鮮明になることを期待して、弘前市の酒造メーカーを訪ねました。

「じょっぱり」が誕生したのは昭和40年代。
このメーカーの前身の酒蔵で、甘口の酒が主流だった時代に辛口の酒が生まれたのがきっかけだったといいます。

北村社長
「杜氏が『将来的には絶対お酒は辛口になるから』ということで試験的につくったと言われているのだけど、おそらく失敗したのだろうなと思います。市場に出しても売れませんよということで、廃棄ということまで考えたようです」

しかし、当時の取引先の銀行の頭取が「俺が身を粉にして飲むから。じょっぱり張って飲むよ」と言って引き止めたこともあり、銘柄の誕生につながったのです。

北村社長
「じょっぱりの精神というか『そういう気持ちで俺は造ったんだ』ということで意地を張ったのですね。常々私どもの蔵人たちはそういう性格の人が多いんですよ。『じょっぱり』というのは、自分の非常に強い意思で信念を持って臨むという意味だと思っています」

およそ50年もの間、大衆酒として親しまれていた「じょっぱり」ですが、メーカーでは、酒蔵の移転を機に製造をやめ、新たな銘柄を立ちあげました。
お酒を少しずつ「たしなむ」ニーズが高まるなか、杜氏の「こだわり」を反映させた少量生産の酒造りにシフトするための決断だったと言います。

北村社長
「かなりお叱りも受けておりますし『何考えてるんだ』ってよく言われたりしますけど、やっぱりそれでブレちゃ駄目なので。そういうところはやっぱり『じょっぱり』なんですよ」

長年親しまれた銘柄を手放してもなお、酒造りの高みを目指す。その心意気こそ「じょっぱり」といえるかもしれません。

じょっぱりはもともと『強情っ張り』

「窓を開ければ港が見える この歌が私も好きでしたね」

最後にあっぷるワイドの定番コーナー「お国ことばで川柳」でおなじみの方言研究家の渋谷伯龍さんにも、「じょっぱり」の由来や意味を聞きました。

渋谷伯龍さん
「もともとは『強情っ張り』です。頭の『強』が長い時間をかけて消えて、『じょっぱり』になりました。『意地っ張り』とか『わがままだ』というイメージです。でもすごく頑張っているという場合にも『じょっぱりだ』と使います。場面によってよくも取れるし悪くも取られる。そんなに悪い意味ではありません」


取材後記
印象的だったのは、地元の皆さんに「『じょっぱり』って何ですか?」と聞いたところ、「自分のこと!」と答えてくれた方が多かったことです。
方言研究家の渋谷伯龍さんは、雪深い青森の冬を挙げて「厳しい自然や風土が育んだ頑張り精神みたいなものが『じょっぱり』なのでは」と話していましたが、まさにそういう気質の人たちがたくさんいるからこそ、生まれたことばなのだと感じます。
淡谷のり子さんも「じょっぱり」をコンサートのタイトルにするなど、よく使ったといいます。歌に生きた淡谷さんは自他ともに認める「じょっぱり」だったわけですね。

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