NHKアナウンサー新人研修 講師の横顔に迫る⑤「明日をまもるナビ」「きょうの料理」担当の片山千恵子アナから見た2024年度入局アナウンサー
- 2024年5月25日
- 瀬田 宙大
- アナウンス室/「ハートネットTV」担当
会議室の外に着いたら、皆さんが笑っていて。いや〜自己紹介でこんなに笑いがとれるなんて。皆さんお話が上手だなと思ってお顔を見る前から感心していました!
そう言いながら登場したのは片山千恵子アナウンサー。
業務の都合で、この日の研修に少し遅れてやってきました。
片山アナは2008年入局。今回初めて、アナウンス新人研修専任講師を務めます。
初任地は石川県。
みずから取材した内容で中継をしたり、リポートをつくったりしたほか、ラジオDJにも挑戦。さらに、朗読イベントの企画・運営も担当。イベントを実施する会場との調整や、読む作品の選定なども担いながら、自らもステージに立ったそうです。このほか緊急報道や選挙、スポーツ放送にも関わるなど、多くの仕事を経験。石川県の皆様に見守っていただきながら、足腰を鍛えたといいます。
アナウンサーとしての礎となる初任地での経験。ことしの新人12人も、まもなく各地域で本格的な業務をスタートさせます。
片山アナには、研修で接する中で見えてきた2024年度入局メンバーの特徴を語ってもらうことにしました。
第1印象は…!
これまでの研修を通じて、2024年度入局アナ全体の印象を教えてください。
優秀!
私たちが新人の頃を思い出し、こんなだったかな…⁈と思うほど。あとは、12人がみんなまっすぐで、キラキラまぶしい!そんな印象です。
そんなに違う?
わからないことがあればすぐさまネットで調べて、同期に「こんな情報もあるよ」と提案!切磋琢磨!
年齢がひと回りほど離れているので、当時は今ほどネットが普及していなかったということもありますが(笑)、彼らのように、瞬時に反応し、アイデアを出し合って積み上げていくことはあまりなかった気がします。もっと自分のことでいっぱいいっぱいだったな…と。
逆に、共通点はあった?
仲が良いところ!
我が同期は、新人時代からあだ名(ニックネーム)で呼び合っておりまして、にの(二宮直輝アナ)、たかにぃ(早坂隆信アナ)、ふみふみ(狩野史長アナ)、あいこ(寺門亜衣子アナ)など。今でもそう呼んでおります!
片山さんは何て呼ばれてたの?
わたしは「千恵」「ちぃ」などと呼ばれています。
ちなみに、講師で入局年度は1年後輩の深川アナには、たまに「ちえたん」て呼ばれていますけども!
初任地北陸チームの仲だから?!深川くんの意外な一面かも(笑)
それはさておき、年齢の近いアナウンサーや同期の存在って大きいよね。
本当に。
ことしの新人12人も誰かがプレゼンする時は「がんばれ!」なんて声を掛け合っていて、早くも同期愛を感じています。きっと、私たちのように同期愛は、ずーーっと続くんだろうなと!
2024年入局新人アナ研修
印象に残ったエピソード
研修中をふりかえって、どんなことが印象に残ってる?
たくさんあるのですが、赴任先に関連した研修の中で印象に残ったエピソードをご紹介します!
エピソード①エール合戦
羽深未奈乃アナが赴任先の徳島県を訪れ、その時に見つけた魅力について、研修の一環でプレゼンしたんです。それを聞いたみんなに「どう感じた?」と聞くと、中林彩乃アナが手を挙げて「自分の思いを届けたいという熱意がすごく伝わり、本当によかったです!」と、最高のエールを送っていました。
アナウンサーにとって大切な、伝えたいという気持ちも、応援したいという気持ちも感じられてジーンときました。
僕も研修にお邪魔したとき、お互いを信頼し合う様子は印象的だった!初任地も徳島と香川と、お隣同士。これからもお互いにエールをおくりあり、吸収して、いいアナウンサーになっていってほしいね。
エール合戦、ふたりのエピソードで紹介しましたが、こういう空気が全体にあるんです!これからが楽しみ!
エピソード②
独自の情報アンテナ
つづいては、「企画書の書き方」研修で印象的だったことをご紹介します。
講師で話し合って、テーマを「赴任する地域で気になること」としました。
私たちは、各地のニュースをベースに書く人が多いと思っていたのですが、実際には暮らしの中での気づきをもとにまとめる人が目立ったんです!
例えば、松江局に赴任する中山真羽アナ。
初めてのひとり暮らしをスタートさせるということで、ゴミ出しに注目。分別や出し方はなぜこうなっているのかに焦点を当て、企画書を書いていました。
つづいて、長野局に赴任する稲井清香アナ。長野を訪れた際に面白いマンホールを発見。まもなく出水期、しかも千曲川の堤防決壊から5年というタイミングを捉えて、身近な場所から防災を考えるようなリポートがつくれないかと考えていました。
田口詩織アナは、赴任する福島局の隣にある子ども向け(教育文化)施設から、多くの大人がでてきたことに「なぜ?」と自らも訪問。すると、大人向けのプラネタリウムが開かれているなど、大人も訪れる仕掛けがあることに注目し提案をまとめました。
その地に暮らしているからこその気づきは、とっても大事だなと思っているのですが、教えなくてもみんなそのアンテナをもっていて関心しました。
ちゃんと、生活者としてその地域で暮らす。地域の人と関わる。地域の人の視点を知る。本当に大事だよね。
あと、吸収力にも感心させられました!
羽深アナにエールを送った、高松局の中林アナは交通事故の防止に着目して企画書を書いていました。そこで「なぜ今(5月)なのかという視点を意識すると、もっとよくなるよ。例えば小学1年生にとっては慣れが出てくる頃だよね」とアドバイスをしたら、自分なりの言葉にして書き込んでました。すばらしい。
多くのつながりを
初任地での出会いは一生もの
初任地の話を聞いていて思い出したんですが…。
片山さんはキャスターとして、僕はプレゼンターとして一緒に「ゆう5時」を担当していたことし1月、片山さん、能登半島地震に関連するリポートを提案して放送したよね。
そうなんです。
奥能登の老舗酒蔵の若女将・金七聖子さんの声をお届けしました。生業の酒蔵が倒壊し、絶望的な状況でしたが、被災した自宅で酒米を発見。県内外の酒蔵の方の力を借りながら、また酒造りに取り組んでいます。能登の酒を絶やさないと、取り組む姿をお伝えしました。
もともとご存じの方だったの?
初めてお会いしたのは新人時代。一年目の冬でした。当時も能登半島地震(2007年3月発生 マグニチュード6.9 最大震度6弱)からの復興のため、地域を盛り上げようと活動されていて、その様子をご自宅から中継させてもらいました。
ことし1月の地震の後も、心配して連絡をし、それがきっかけで「ゆう5時」でお伝えすることになったんです。
さらに連絡を取り合う中で、金七さんが倒壊した自宅から偶然見つけたと、ある写真が送られてきました。
大変な中、ご自宅で私との写真を見つけ、「掘り出し物だね」とメッセージを添えて連絡をくださったんです。「私もできることをやろう。しっかりと皆さんの思いをお伝えしなければ」と強く、強く感じました。
NHKのアナウンサーとして、すべての皆さんのためにというのは大前提だけど、顔が浮かぶ人、連絡しあう人が各地域にたくさんいることも重要なことなんだよね。
本当にそう思います。
いまも、金七さんとは定期的に連絡を取り続けています。いま私が担当している「明日をまもるナビ」で能登半島地震についてお伝えする際には、教えていただいたことを頭に思い浮かべながら取り組んでいます。
片山アナから
初任地に赴任する12人へ
初任地での経験は、自分の根幹にあり、今も生きています。どんな経験も無駄は一切なく、二つと無い宝物なります。
仕事での経験ももちろんですが、地域の方との出会いや各地の風景、文化、食、すべてが糧となりますし、それが放送にも生きていると思います。だからとにかくなんでもチャレンジしてほしいです!
私自身、初任地での一番の宝物は、石川県のみなさんとの出会いだと思っています。能登半島地震では、報道に携わるものとしてニュースを伝える反面、友人や知人を思い浮かべて私ごととして心配する自分がいました。
新人の時のご縁で取材させてもらい、担当していた「ニュースLIVE!ゆう5時」で提案をして発信もしました。あの人の声を伝えなきゃ!その一心は、新人のときに地域に教わった心ですし、その気持ちを新人のみんなも感じて、これからのアナウンサー人生を謳歌してほしいなと思います。
▼東北・北信越・中部
▼関西・山陰・四国
▼九州・山口
編集後記
2024年度入局 新人アナウンサー専任講師の横顔シリーズをご覧いただき、ありがとうございました。
取材、写真撮影、構成・執筆を担当することになり、どこに焦点を当てるか悩みました。なにせ、アナウンサーの皆さん、よくしゃべるので(笑)。最終的には、NHKアナウンサーに共通する“こころ”のようなものに焦点を当て、構成・執筆しました。
赴任先やキャリアは様々でも、私たちNHKアナウンサーは、口をそろえて赴任する先を“第二のふるさと”と言います。その土地土地で出会った皆さんに、あたたかく、時には厳しく育てていただいた感謝を胸に働いています。
NHKアナウンサーとしてのはじめの一歩を踏み出す12人のアナウンサーに、基礎スキルと共にその“こころ”を伝える講師陣の姿は、私の新人当時に講師を務めた先輩方と重なりました。まもなく放送開始から100年、これも脈々と先輩から後輩へ受け継がれているもののひとつなのかもしれないですね。
今後も、NHKアナウンサーの取り組みをお伝えしていきます。