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東日本大震災から13年 富田望生さん ふるさと・福島を胸に俳優に臨む

  • 2024年3月8日

俳優の富田望生さん、24歳。連続テレビ小説「ブギウギ」で、主人公の福来スズ子に弟子入りを志願する“小夜ちゃん”役を演じ、その印象的なキャラクターが注目を集めました。

富田さんは、福島県いわき市出身。小学5年生の時に東日本大震災を経験しました。

震災後、避難のためにふるさとを離れた富田さん。
震災から13年がたとうとするなか、どんな思いで俳優に臨んでいるのか、語ってくれました。
(聞き手 押尾駿吾アナウンサー)

ふるさととのつながりを求めて俳優に…

小学6年生の頃の富田さん(2011年)

東日本大震災が起きたとき、富田さんは小学5年生でした。
家が半壊し、東京へ避難しましたが、しばらくは「ふるさとを捨てたと思われているかもしれない」と罪悪感を抱き続けてきました。

富田望生さん
「避難した人っていう感覚というより、逃げた人とかという感覚を持たれる方もやっぱりいますよね。私の意思じゃないのにって。

でも、そういう空気を感じ取ってしまうと、やっぱりどうしても罪悪感があるというか、罪悪感を持たなければいけないじゃないけど、自然とそういうものがくっついてくるみたいなのもあったので、そこから一歩踏み出すに至るまでには私の中では長かったですね」

東京では、俳優を目指して養成所に通いました。
中学3年生のときに映画に初めて出演して以降、数々のドラマや映画で活躍を続けています。

どういう思いから、俳優として活動していこうと思うようになっていったんですか。

「最初は、テレビに出てたら友達が見てくれるんじゃないかっていうことですね。
友達と離れたのがいちばんつらかったので、友達しかり、近所のおじちゃん、おばちゃんもそうですけど、テレビに出てたら、『みいちゃん、こんなこと頑張ってんだ』って私を思い出してくれるんじゃないかって」

今も年に数回は福島に帰るという富田さん。最近、うれしい出来事がありました。

「うれしかったのが、当時住んでいた地区でちっちゃい頃からお世話になっていたおじちゃん、おばちゃんのおうちに、本当に震災ぶりくらいにピンポンを押しに行ってみたんですよ。

もちろん何て言われるかわからないじゃないですか。逃げたとか、罪悪感とかそういうものがどうしてもつきものだったから、どんな表情をされるんだろうと思ってたんですけど、ピンポンを押して開けた瞬間に一瞬ポカーンとして。おばちゃんが。

もうすっごいそっから大きな声で『みいちゃん帰ってきたよ~!』って言って、畑でとれた野菜とか『お母さんに全部持って帰れ~』って言って、『もうこの辺みんな応援してんだよ!』って言って、『会ったとき、みいちゃんの話ばっかすんだから』って言われたときに、ものすごく届いてるんだなって、過去イチ実感しました」

時間がたっていても、近所の大事な方を訪ねるぐらい、今でもふるさとが大事ということですね。

「はい。そうですね。福島の皆さんに届いてるんだなって実感するときがいちばん幸せかもしれないです」

初主演の新作映画 テーマは阪神・淡路大震災

そんな富田さん、阪神・淡路大震災から30年となる来年公開予定の映画で、初めて主演を務めることになりました。

演じるのは、阪神・淡路大震災の1か月後に生まれた金子灯(かねこ・あかり)。
震災に向き合うことを避けて生きてきた主人公です。

30年という時間でかなり、阪神・淡路大震災を知らない世代というのも増えてきていると思うんですが、役を通して、どういうふうにこの30年というものを伝えていきたいと思いますか。

「30年って、私24歳なので、30年生きてないですよね。と考えると長いですよね。
でも、きっと阪神・淡路大震災を経験された被災者の方々というのは、30年に長いとか短いとかないと思うんですよ。

灯ちゃんは震災のあとに生まれた子ですけれども、兄弟だったり、お父さん、お母さんだったり、おばあちゃんだったり、その街の人たち、先輩たちだったり。みんな震災を経験しているわけで。

(灯は)知らないながらに、震災のことを知っている、経験している、そして、いろんなお気持ちがある方が身近にたくさんいるんですよね。そんな方が身近にいる灯ちゃんという部分が、私がいちばん考えなければいけない部分だなと思っています」

この日は、撮影に向けた衣装合わせが行われました。

富田さんは、灯が高校を卒業してから30歳になるまでを演じます。

メーク担当者

吹き出物をアゴに作ろうと思ってるんだけど、そういうの大丈夫ですか?

富田さん

大丈夫です、もちろんです。

 

いちばん病んでる時に、ノーメークから徐々にストレスかなんかで吹き出物がアゴの
あたりに出てるっていう感じで。

 

うんうん

今回、富田さんに主演をオファーした安達もじり監督は。

安達もじり監督
「今回の題材のことにある種思いを持ってやってくださるんじゃないかなという思いはありました。ただ、阪神・淡路大震災を経験していない役柄なので、実は、真っ白になってもらって、ゼロから役を作ってもらう必要があるのかなと、ちょっと思ったりしています」

撮影は今月(3月)下旬から始まる予定です。
撮影の間、富田さんは神戸で生活し、役に向き合おうとしています。

「ここまで感情のコントロールが難しい女の子を演じるというのは、本当に久しぶりというか。もしかしたら初めてに近いと思うので。他のものを同時にできる自信が全くなく。

なので、この撮影期間は神戸にずっと行かせていただいて、神戸で、この作品の皆様とも生活をしていくということにしていただいているので。
空気とか香ってくるものとか温度感とか、やっぱり全然違うので。もうそこは、自分の生活というよりも、灯ちゃんの生活の場所として考えて、神戸に向かおうかなと思っています」

富田さんが、この映画を通して伝えたいこととは―。

富田望生さん
「30年たとうが何年たとうが、それぞれの震災の受け止め方とか向き合い方とかって本当にそれぞれにあるものなので。そういった意味では、忘れない。忘れないっていう言葉もちょっと何か当てはまりきらないなとも思うんですけど。

震災ってやっぱり大変だよなとか、起こったらこうなっちゃうんだとかそういうことではなくて。起きたあと、この30年という月日の中で、いまだにもちろん向き合ってるって、本当にそこです。そこが大切に残っていけばいいな、伝わっていけばいいなと思っています」

富田さんが主人公を演じる映画『港に灯がともる』は、阪神・淡路大震災から30年となる、来年(2025年)1月に公開予定です。

富田望生さんインタビューを、3月9日(土)午前7:30から、おはよう日本(関東甲信越)で放送します。
NHKプラスでは、同時・見逃し配信を全国からご覧いただけます。(3月16日午前7:59まで)

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