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  • 2023年9月22日

デートDV 女性の6人に1人が経験 高校生・大学生の被害事例も 被害防ぐ難しさとは

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「交際相手から暴力をふるわれたことがある」と答えた人は、女性の約6人に1人、男性の約12人に1人にのぼります(2021年の国の調査より)。 
交際相手から受ける身体的・精神的な暴力は「デートDV」とよばれ、6月には横浜で女子大学生が元交際相手に刺殺されるなど、深刻な事件につながるケースが相次いでいます。

被害者や加害者を取材すると、デートDVならではの対応の難しさが見えてきました。 
(全2回の前編)

“被害に気づかなかった”

デートDVの被害に遭いながらも、それが被害だとなかなか気づくことができなかったと語る人がいます。大学生の結さん(仮名)です。

デートDVを受けていたのは高校時代。気がついたきっかけは、学校の授業で配られたデートDVのチェックリストでした。

・あなたのことを「バカ、うざい」と言う 
・自分を最優先にしないと怒る 
・望んでもいないのにセックスする

(授業で配布されたデートDVチェックリストより)

相手をバカにする言動や、過度な束縛、性行為の強要など「暴力的な態度」として挙げられていた例のほとんどが交際相手に当てはまっていたのです。

結さん(仮名) 
「普通のつきあいだと思っていたのに、そうじゃないかもしれないということが、チェックリストをやって分かって、すごくびっくりしました。 
元彼にデブとかブスとか、結構頻繁に言われていて。自己肯定感はすごく下がっていて、上下関係だったなというのは、すごく思います」

その後、結さんは友人からの忠告を受け、別れることを決意。ところが、別れ話をした後も、連日100件以上の連絡がありました。

繰り返しくる謝罪や反省の言葉に押し切られるようにして、何度か関係が戻ったといいます。

しかし、復縁してもデートDVは繰り返され、完全に関係を断つまでに、3年以上かかりました。

結さん 
「元彼から、いろんなことを言われたり、されたりした中で、『こんなダメな人間とつきあってくれてありがたい』とすごく思っていたので、実際に会わないようにするというのがすごく難しかった」

デートDVが殺人事件に発展

こうしたデートDVが殺人事件にまでつながってしまったケースもあります。

今年6月。横浜市鶴見区のマンションで、18歳の女性が刃物で刺されて殺害された事件です。被害者はこの春、大学1年生になったばかりでした。

殺人の罪で逮捕・起訴されたのは、23歳の元交際相手。女性とは少なくとも2年ほど前からつきあい、別れたばかりでした。

友人たちは女性がデートDVの被害を受けていたと涙を浮かべながら証言しました。

女性の友人

女友達と遊ぶときでも、彼氏から『早く帰ってきて』と何回も電話がかかってきたりして、しつこい感じでした。

女性の友人

彼氏がDV気質だとは聞いていて、腕とかにあざが残っていたり、おなかを蹴られたりしたと話していました。 
遊びに行く約束を立てていたのに、これからというときに…。

一方、今回逮捕された被告の知人は「交際中は友人関係が疎遠になるほど、女性に執着していた」と話しています。

事件が起きたのは、女性が別れを切り出した1週間後。被告は動機について「よりを戻したかった」と供述しています。

事件の前に被告の暴力について通報した人に話を聞くことができました。

通報した人

女の人が「痛い、痛い」って、悲鳴みたいな感じでした。普通のケンカじゃない、心配になるくらい。通報しないとやばいんじゃないかと思いました。

実は、ふたりが交際している間に、警察には4回の通報が寄せられていました。

3回目と4回目の通報の際、女性は、「別れるなら殺すと首を絞められた」(3回目)、「車内でけんかになりたたかれた」(4回目)と警察に証言しています。

しかし、警察は「被害届が出されなかったため、事件にせず、被告に口頭で注意することで対応した」と説明しています。

多くの被害者が“被害届を出せない”

暴力を受けているのにも関わらず、被害者を守れない。 
これが、デートDV対策の死角であると語るのは、被害者の相談に乗っているNPO法人の代表、阿部真紀さんです。

現状ではDVの被害者を守る法律には限界があるといいます。

DV防止法では、裁判所が保護命令を出し、加害者が近づくことを禁止することができます。しかし、対象は配偶者や同居中の交際相手などからの暴力です。 
デートDVの被害者の多くは同居していないため、法律の対象外なのです。

被害者が身を守るには多くのケースで警察に被害届を出して、加害者の逮捕を求める必要があります。

このNPO法人がこれまで受けた相談は約7000件。ところが被害届を出した人は、ほとんどいないといいます。

NPO法人エンパワメントかながわ 阿部真紀代表 
「好きな気持ちがゼロになる人はなかなかいません。相手を処罰したい気持ちにまでは、なかなかならないのが現状ではないかと思います」

さらに、被害者の話からは、被害届を出すことのさらなるハードルも見えてきました。 
学生時代にデートDVの被害をうけていた美奈子さん(仮名)です。

交際相手は次第に束縛が強くなり、外出先を告げないだけで、夜通し町じゅうを探し回り、美奈子さんを見つけると激怒してきたといいます。

美奈子さん(仮名) 
「胸ぐらをつかまれて振り回されることが結構多くて、そのまま引きずられたり、座り込んでいるところを蹴られたり。そのころ、その人に会うと殺されるんじゃないかという恐怖心はありました」

何度も別れを切り出しましたが、そのたびに家に押しかけられ、暴力を振るわれる生活は2年にわたりました。 

それでも、警察に被害届を出すことはできなかったといいます。

「私が警察に行ったことが相手に知られると、ほぼ間違いなく攻撃してくるだろうなという感覚はありましたね。私は相手を刺激したくないという思いが強かったので、被害届けは出せませんでした」

結局、仕事を辞め、誰にも知られないよう友人関係も絶って、引っ越すしか逃れる手段はありませんでした。

「一番つらかったのは、その当時いろいろ相談乗ってくれたり、支えたりしてくれた人たちと縁を切って離れなければならなかったことです。自分にとっても相当、喪失感があり、かなり寂しかったです」

加害者の心理を指摘する声も

加害者の暴力はなぜエスカレートしてしまうのか。

この日、オンライン上には交際相手や配偶者に暴力をふるった『DVの加害者』が8人集まりました。

更生を希望する人たちが参加するプログラムです。どんな言動が暴力行為にあたるのかなどを1年間かけて学びます。パートナーから別れを切り出されたことなどをきっかけに、通い始める人が多いといいます。

NPO法人ステップ理事長

今日のテーマはサイレントモラハラ。非言語暴力ですね。 
どんなモラハラをしていましたか?

参加者の 
男性

この10項目の中では、不機嫌、にらむ、舌打ちをしていました。

 

ある参加者の男性は交際相手が自分の思い通りにならないと衝動的に暴力を振るってしまったといいます。

参加者の男性 
「交際相手とは、対等な関係にはなっていなくて、恐怖による支配をしてしまっていました。僕たち加害者は、どうしたらいいか分からない状況で、ここに駆け込んできているような形です」

このプログラムの主催者、栗原加代美さんです。これまで1000人ほどの加害者と接してきましたが、ある共通点があるといいます。

NPO法人ステップ 栗原加代美理事長 
「うちに来る9割の方は両親のケンカを見たり、自分が両親から虐待をされたりした方々です。うちにくる8割~9割の方は連鎖しています。

小さい時に両親から愛されてこなかった、愛情タンクが満たされなかった人は、パートナーに異常なほど満たしてほしいと要求するわけですよ、両親の分まで。

それらがなされないときに、彼らは『俺のことを愛してくれてない、分かってくれてない』と怒りが出るんですよ」

加害が生じる背景として、子どものころに受けた虐待、ネグレクト、過干渉などのほか、仕事や人間関係での強いストレスなど、さまざまな要因を指摘する専門家もいます。

デートDVを見破り、身を守るためにはどうすればいいのか。後編の記事では、デートDVの危険度を知ることができるチェックリストや、危険度別の対処法についてお伝えします。

 

デートDV 相談窓口 
・NPO法人デートDV防止全国ネットワーク(NHKサイトを離れます) 
こちらのホームページでは、各地域の支援団体を紹介しています。

・性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター 
望まない性的な行為に関する悩みを相談することができます。

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