東日本大震災。熊本地震。そして、能登半島地震。改めて災害の恐ろしさと備えの大切さを感じている方もいらっしゃると思います。
首都圏ネットワークの「シュトボー」では、首都圏で活動する次世代の若者たちの活動にスポットを当てます。
今回注目するのは、神奈川県鎌倉市を拠点に地域に密着してさまざまな発信を続ける学生団体「玄海(Genkai)」です。
「玄海(Genkai)」のメンバーは中学生から大学生までの約40人。中には防災士の資格を取得しているメンバーもいます。
動画サイトやSNSなど、若者の目にとまる媒体を中心に「心肺蘇生法(AEDの使い方)」「必要な備蓄」「担架での搬送方法」などの防災情報を、楽しく、わかりやすく発信しています。
さらには、地元の人を巻き込んでの活動も。
高齢化が進み防災対策に課題がある地元の町会とコラボして動画を制作。
ドラマ仕立てで、大地震発生後の対策本部を立ち上げるようすなどを伝えました。
防災倉庫の中にある機材を、うまく使えないシーンも盛り込み、まだまだ課題があることも伝えました。
難しくなりがちな防災の話題を楽しく、わかりやすく伝えようという「玄海」。
代表を務めるのは橋本玄さん、18歳。
活動の原動力は何か尋ねると、東日本大震災の体験だと言います。
学生団体「玄海(Genkai)」代表 橋本玄さん
「団体の中で最年長の私でも、東日本大震災の時は小学校1年生くらい。記憶はあるが、災害の恐ろしさの記憶が少ないと思っています。しかし、だからこそ私たち若者が同世代に防災や備えの大切さを訴えかけ、いつか確実に来る災害に備えたいと考えています」
東日本大震災で父親が東北への支援活動を行っていたことから、自身も被災地へ入った橋本さん。現地の人との交流をきっかけに「災害の恐ろしさ」や「備えの大切さ」を感じたそうですが、そんな中で忘れられないエピソードを教えてくれました。
橋本さん
「被災地でボランティア活動をしていたときに、現地の方から“支援はしてもらえることはすごく嬉しい。ただ、自分の町は大丈夫?”と言われて、はっとしました。過去の災害から学び、備えにつなげるのが自分たちの役目だと思ったんです」
多くの人に“災害を自分事としてとらえてもらいたい”と考えた橋本さんは、中学3年の時に「玄海」を発足させ、高校入学後すぐに防災士の資格を取得しました。
「難しい」「つまらない」ものになりがちな防災を、楽しく、わかりやすいものにしようと活動を続ける中で起きたのが能登半島地震です。
発災から3か月たっても、現地には大きな爪痕が残り、日常が戻らない地域が多くあります。
橋本さんたち「玄海」でも“被災地から遠く離れた自分たちにできることはなにか?”メンバーどうしで話し合い、募金とボランティア活動を行いました。
橋本さんは、「玄海(Genkai)」の代表として被災地でのボランティア活動に参加し、支援を届けることの難しさを痛感しました。
橋本さん
「食料や水など、モノの支援が必要なことはもちろんですが、特に必要と感じたのは人手の支援だと思いました。給水車が来ていてもお年寄りは“水を家まで運べない”。“家がぐちゃぐちゃでもそれを片付ける人がいない”という状態でした」
さらに目の当たりにしたのが、建物倒壊、液状化、津波といった大地震ならではの複合災害のおそろしさでした。腰のあたりまで突き出るマンホール、避難に使う道路も土砂災害でズタズタに。
こうした被災地での記憶を、地域の若い人へ伝えようという取り組みも行いました。
3月下旬、鎌倉市内の公園に集まってきたのは多くの子どもたち。
大地震が起きたことをイメージしながら、津波の避難場所まで歩いてみるというイベントです。
ポイントは、いかに大災害時をイメージできるか。
住宅街を通る時には、電柱が倒れる危険や電線の断線による感電の危険などに触れました。さらに、いつもなら目にとめない足元にも・・・。
みんなの足元には、危険があります!なんでしょうか?
正解は…マンホールです。能登半島地震では、液状化などでマンホールが、僕の腰の辺りまで突き出ていました!今いる由比ヶ浜周辺は昔から川が多い地域でした。地震では液状化する可能性もあります。
橋本さんは、能登半島地震での被災地で見た光景を、子どもたちがなるべくイメージできるように伝えていきました。
危ない所をちゃんとして指摘してくれて分かりやすかったです!
マンホールが浮き上がってくるって教えてくれてうれしかった。
子ども自身も年が近いということで、興味もわくと思います!楽しく学べるということで、子どもたちも喜んでくれました
「100の街があれば、100の違う状況になる」と話す橋本さん。地域の住民や子どもたちを巻き込んで、今後も活動を続けようと考えています。
学生団体「玄海(Genkai)」代表 橋本玄さん
「自分たちだからこそ伝えられる方法やことばがあると思います。災害は絶対に来るものなので、過去の災害の経験をしっかりと受け止めて、それを若者、地元の人に還元して、助かる命を少しでも増やして行きたいと思います」
「学生が地域の防災を考える!防災情報を動画で発信」の詳しい内容はこちら
鎌倉市の高校生防災士が防災情報を動画で発信