神奈川県鎌倉市を拠点に、防災の大切さを動画などで発信し続けている高校生がいます。防災士の資格を取り、同世代の仲間と団体を結成。「大災害が起きた時に、死者数をゼロにしたい」と意気込む若者たちを取材しました。
小学校の防災倉庫を紹介したかと思えば、災害時の担架の運び方を説明。
時には台風で土砂崩れが起きた場所からのレポートもこなします。
防災士の資格を持つ高校2年生、橋本玄さんです。
鎌倉市を拠点に地域の防災情報を発信する学生団体「玄海」の共同代表を務めています。
動画制作のほかにも小学校で防災教室を開いたり、地域の避難訓練を企画したりと、防災をテーマにさまざまな活動を行っています。
橋本さん
災害は来るものだから、確実に来るものに対してどう備えるか。若者だからこそできることがあって、今、そのために勉強して伝えています。
橋本さんが防災活動に取り組むきっかけとなったのは東日本大震災でした。
被災した福島の人たちを鎌倉に招く活動に、小学生の頃から毎年参加。
家族を亡くしたり、津波で家を流されてしまった人たちの話を聞き、交流を重ねる中で、遠いところの話だと思っていた災害を自分事として考え始めたといいます。
橋本さん
涙ながらにその時の話をしてくれて。将来災害があったとき、自分たちはあのときから何も学ばなかったと言われたくない。次の災害にどう備えるか、教訓にするべきだと思っています。死者数をゼロを目指したい。
橋本さんたちに注目したのが、鎌倉市郊外にある梶原山町内会です。
丘陵の住宅地は高齢化が進み、住民全体を巻き込んだ防災対策が課題となっていました。
梶原山町内会防災委員長 加藤洋さん
住民みんなが自分の問題として動かない限り、いくら防災計画を作っても机上の空論になってしまう。橋本くんたちの活動を知り、動画作りに力を貸してほしいとお願いしました。
加藤さんは、防災に関心がない人にも動画なら伝えられるのではと考え、「玄海」に協力を依頼しました。打ち合わせを重ねた末、住民が出演者となり震災発生直後の様子をドラマ仕立てで撮影することになりました。
いすや机が乱雑に転がった町内会館。撮影は震度7の大地震が起きた想定で始まります。
橋本さんが指揮をとり、「玄海」の高校生メンバーが複数の携帯電話で撮影を進めます。
撮影は訓練を兼ねて行われたため、決められた台詞はありません。
住民自らが、対策本部の立ち上げに必要な役回りを演じました。
近隣に無事を伝えるために、自宅の前に黄色い旗を出すシーンの撮影では課題も見えました。
訓練に参加した住民
掲げることになっている旗がなかなか見つかりませんでした。
橋本さん
旗をいつでも出せる場所にしまっておいてください。
9月、撮影日から約5か月をかけて完成した動画の上映会が開かれました。
対策本部の立ち上げや安否確認のしかたなど、自分たちがどう行動すればよいのかが丁寧に描かれています。
防災倉庫の中にある機材を、うまく使えないシーンも盛り込み、まだまだ課題があることを伝えました。
動画には、住民みなに防災を自分事として考えてほしいというメッセージが込められていました。
住民
防災は日頃から考えながらやらなきゃいけない。すごい参考になりました。
加藤さん
全員が本当にやらない限り機能しないんですよということを伝えたい。この映像をみていただければ、今のままじゃだめなんだということがわかってもらえると思います。
橋本さん
自分たちにしかできないことで伝えていくって重要だなと思います。子どもたちには同じ目線で伝えるし、大人たちには「俺たちもこれだけやってるんですよ。いっしょにやりましょうよ」という気持ちで伝えていきたいです。
梶原山町内会では、動画をもとにした住民の安否確認訓練を12月に初めて実施したということです。