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マンションやビルでの火災 逃げ方どうする?避難器具はどう使う?

  • 2023年3月29日

みなさん、ちょっと思い出してください。

マンションのベランダや、ビルの屋上などで見たことがある「避難〇〇」と書かれたアレ。
「避難するときに使うんだよね」そう、その通りです。
では、その「避難○○」の使い方、知っていますか?私は知りませんでした。
「その時」が来たら使うんだろう程度で…
火災が起きて、マンションなどの高い建物から避難するとき、もし階段が炎に包まれていたら…
もう1つの避難手段、それが「避難器具」になります。

「使い方を知ることが、あなたの命を救う」
ハラハラ・ドキドキの体験で感じたことをお話します。

(アナウンサー・原 大策)

こんにちは! 5分以内に脱出してください

アナウンサーがみずから防災体験をする「#防災やってみた」
このシリーズの怖いところは、本当に何も知らされずに体験現場に向かうことです。

案内されたのは、都内のとある施設の2階。
迎えてくださったのは、都市防災の専門家 工学院大学の村上正浩教授です。
そこで、いきなりの指示が…

村上教授

原さん、この1階で火事が起きたという想定で、この部屋から5分で脱出してください。ただし、階段はすでに火が回っていて使えません。

「無理じゃん… ここで試合終了だよ」と思った時に、目に飛び込んできたのが例の「避難〇〇」です。

避難器具 その(1)「避難はしご」

うつむいた私の視線の先にあったのは、「避難はしご」の表示。

これは見たことがある!

「避難ハッチ」や「ハッチ式避難はしご」とも呼ばれ、マンションやアパートのベランダに設置されることが多い避難器具です。

案内されたこの部屋、実は様々なタイプの避難器具が設置されている体験用の施設でした。
ですから、避難はしごが“部屋の中”に備え付けられていたのです。

限られた時間で私にできることは、使い方を読んで手順に従うこと…

まずは…

(1)「チャイルドロック」を外す。
(2)フタを開けると、カチッと音が。フタが勝手に閉じないように固定されました。
 

(3)そして、はしごのロックを足で踏んで外すと…

「シャーーー!」

みるみる折りたたまれていたはしごが伸びて、下の階まで届きました。

(4)足元に注意しながらゆっくりとはしごを降り、避難!
フタの裏についていた「チャイルドロック」を外すのに少し戸惑いましたが、思った以上に間単に避難できました。

事前に知っておけば、よりスムーズに避難できそうです。

工学院大学 村上正浩 教授
「やっぱり開けたことがないと戸惑いますよね。一度経験しておくことが重要です。年に2回の消防点検の際に横で見るとよいと思います。自分の部屋にない人は訓練などでやってみるとよいですよ」

「ハッチの上に物を置かない、というのも当たり前ですが大事ですよね」

このハッチは、自分のためだけのものではないからです。
マンションやアパートなど、一定の高さがある建物で、避難に使える階段が2つ以上ない場合は、避難器具の取り付けが義務付けられています。
ハッチ式避難はしごは各階に1つというケースもあり、自分の部屋にないという方は、隣の部屋のベランダなどに設置されているかもしれません。
つまり、同じマンションやアパートに住む人たちにとっても、大切な避難路になるのです。

ベランダに四角く見えているのが「避難ハッチ式はしご」

村上教授
「避難ハッチなどの避難器具の場所は必ず知っておくのが大前提ですよね。
必ずどこかに表示してあるはずなので、知っておいてください」

避難器具 その(2) 「緩降機(かんこうき)」

今回の体験は意外とイケるかも!と思った原を、真のハラハラ・ドキドキが待っていました。

こちらも避難器具なんですが、気が付きました?

なんでしょう、この「私の部屋にある、使われていないフィットネスバイクのようなもの」は。

見慣れないかもしれませんが、こちらは『カンコウキ』と呼ばれる避難器具です。
“緩”やかに “降”りる“ 機”械で『緩降機』

意識しないと気付きませんが、都内では約3万2千棟に設置されているそう。(総務省消防庁による)。飲食店などが入る商業用ビルやホテルなどに多く設置されているそうです。
街を探してみると…カラオケボックスのこれ、居酒屋のこれ、ホテルのこれも…実は緩降機です。

では原さんも、この緩降機を体験してみましょう。隣のビルで。

この2階建ての施設からではないの!?
そして、連れていかれたのは、一瞬想像したけれど信じたくなかった、ビルの屋上…

原アナ

え、ここ…ビルの4階の高さから降りるんですか?

はじめて緩降機を使う私。
高いところは大丈夫だと思っていましたが、それは柵がある場所での話。

まずは…
(1)留め具をはずして緩降機のカバーを取り外す

(2)カチッというまで上にアームを引き上げ。

(3)「調速機」を取り出してフックを緩降機のアームにかける。

(4)フックについているロックを締め。
(5)下に人が居ないことを確認し。
(6)リールを下に投げます。 

(7)ベルトを装着して後ろに下がります。

(8)するとベルトが締まって準備完了です。

避難ハッチに比べると手順が多く、初めての私はやや手間取りました。
それよりなにより…

 

いや、高いですよ! これ本当に大丈夫なんですよね!?

むき出しの高さが目の前に広がり、さすがに足がすくみます。
そこは「#防災やってみた」。この機会を作ってくれた、ディレクター役を務める井田香菜子アナウンサーの顔を思い浮かべてやるしかありません。

(9)2本のロープを持って、へりに腰をかけて。 
(10)体を壁に向けロープを離していく。
(11)壁に手を軽く触れながら、壁にぶつからないよう下へ降りる。

降りていく原

えい! あーーーーー あ!(気づき)あぁーーーー!

(12)着地したら次の人が降りられるようベルトを外して安全な場所へ。
身を乗り出すときこそ勇気がいりましたが、降り始めてしまえばなすがまま。

「調速機」という器具のおかげで、ゆっくりと降りることが可能になっています。
自分の重さでゆっくりと下がっていき、無事に地面に足を付けることができました。
緩降機は最大10階から一気に避難できるものだそうです。

「どのように降りていくのか」というのが自分で想像できるようになった今、次に使うときのハードルは格段に低くなったように感じます。

特に緩降機は避難器具の中でも、使う時の恐怖感が強いです。こういった器具を一度、防災訓練などで使っておくと、いざというときに落ち着いて避難できます。

こうした避難器具の使い方は、各メーカーなどがインターネット上で公開していて、見ておくだけで安心につながると思います。

避難器具 その(3)「救助袋」

今回上がったビルの屋上。
実はもう1つ、とても重要な避難器具がありました。

それがこの、「垂直式救助袋」。
学校や図書館といった公共施設や病院など、たくさんの人が集まる施設に多い避難器具です。
ベランダなどに、大きな四角い箱に入って収納されています。

こちらは一度組み立ててしまえば、ケガをしている人でも周りの人の補助で降ろすことができます。もし病院などで避難の必要がある時に、1人でも使い方を知っていれば、命が助かるかもしれません。

多くの人が避難するのに適した、救助袋の使い方を教えていただきました。
(1)ケースの留め金を外し、フタを開ける。

(2)袋を締めているバンドを引いて外し、ロープを垂らす。

(3)袋全体をゆっくり下ろす。

(4)入り口金具を回転させ、持ち上げて袋を広げ。

(5)箱の中の足場を組み立てる。
(6)足から奥に入っていき。

(7)穴の手前から紐を握り。
(8)身体を入れる。

(9)そして、ゆっくりと手を離して、滑り降りていきます。

袋の中がぐるぐるとらせん状になっていて、滑り台のように回転しながら降りていきます。
スピードは袋の適度な摩擦により、ほどよくゆっくり。布版のスライダーとでも言いましょうか。

 

これは怖くない。でも、外が見えないから、今どの辺にいるんだろ…

なんて思っているうちに地上に到着。その時、頭上から村上教授の声が。

どうやら原さん以外にも避難しなければいけない人たちがいるようですよ。
下で補助と声かけをしてあげてください。

村上教授に言われるがまま、袋が揺れないように出口付近の取っ手を握ります。
そして、降りる人がいまどの辺の高さにいるのか「あと5メートル、あと2メートル」などと声をかけていきます。

また、

・呼べそうであれば、降りたらすぐ助けを求める。
・脱出できた人たちは、なるべく早く安全なところへ避難させる。
・1人が出たら上に声かけをする

のがポイントだと教わりました。

降りる順番に迷った時はまず、自力で救助袋に入れない方を優先して降ろすとよいとのことです。
そうこうしているうちに、無事、体験者全員が避難することができました。
それにしても、避難器具には様々なものがあり、それぞれ特徴があることを知りました。

工学院大学 村上正浩 教授
「避難する時の基本は階段などで逃げることですが、そういった出口が塞がれている時に、逃げるための避難器具などが必ず用意されています。できれば事前に体験できるのが望ましいですが、まずは自分が住んでいるところ・職場など、よく利用する施設にどんな避難の方法があるのか知っておくのが大切です

使い方を知ることが、あなたの命を救う

4階の高さから身ひとつで降りる…もう一度したいとは思いませんが、いざというときには冷静に避難できそう、という自信がついたのは事実です。
今回体験したのは、あくまでも1つの避難経路が塞がれてしまった場合の「代替手段」。
階段などでの避難ができない時の、いわば最後の手段です。
使う可能性は非常に低いと思いますが、火災の時に避難できる方法が目の前にあるのに、知らないがために使えない。
そんな状況にならないためにも、まずは使い方を知っておくことが大切だと感じました。
では、もう一度聞きますね。
あなたの近くにある「避難○○」の使い方、知っていますか?

企画した 井田香菜子アナ

この企画の制作陣での呼称は、「どうする大策!?ハラハラ(原原)ドキドキ」でした。ロケでは、この名前のとおりドキドキしつつも、冷静に説明文を読んで課題をクリアしていく原さんの姿が印象的でした。
避難器具は、説明文を読んで手順通りに進めれば、誰でも使えるようになっています。
ただ、いざ火災や災害に巻き込まれて冷静でいられない状況を想像すると、点検や避難訓練などの機会に、触れてみることをオススメします。メーカーが公開している動画を見るだけでもかなり違うと思います。

私自身、取材のあと、街中や建物内の避難器具が目に入りやすくなりました。住まいや会社はもちろん、初めて訪れるような場所でも、避難経路・器具の確認を、意識づけていきたいと思います。
 

  • 原 大策

    アナウンサー

    原 大策

    2004年入局  20年から「首都圏ネットワーク」で現場リポーターを担当 4月からは沖縄放送局で「おきなわHOTeye」のメインキャスターを務める。

  • 井田 香菜子

    アナウンサー

    井田 香菜子

    2013年入局。長野局、大阪局を経て、2022年より、首都圏局で防災企画を担当。

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