「退職代行」本人に代わって企業側に退職の意思を伝えるサービスです。最近では、自分で辞めることを言わず、お金を払って代わりに伝えてもらうケースが増えているといいます。入社前に聞いていた条件と違う、ストレスや疲れ…新卒で就職した人の利用もあるということです。代行サービスを行う会社の現場と、利用の背景について取材しました。
辞めたい
入社前と話が違う
新卒カード捨てた
ことし4月に入社した新入社員のものとみられるつぶやきです。新年度が始まって2週間あまりですが、いま、SNSに多くみられています。
厚生労働省の調査では、4年前の2020年3月に大学を卒業した人のうち、就職後3年以内に離職した人の割合は32.3%と、前の年に比べて0.8ポイント増えました。こうした「就職後3年以内の離職率」はこの10年以上、3割を超える水準で、「10人就職したら3人以上は離職する」という状況が続いています。
また、3年前の2021年3月に大学を卒業した人のうち、2年以内に退職した人は24.5%と、ここ10年で最も高くなっているのが現状です。
「依頼を受けまして退職希望のむねとそれに伴い今後、出勤ができないのでこちらをご本人さまにかわりお伝えをしたくご連絡しました」
東京・大田区で2年前から退職代行のサービスを行う会社では、弁護士の監修のもと、本人の代わりに企業に退職の意思を伝える業務を行っています。
依頼してきた人の退職理由で多いのは、入社前に聞いていた条件と違っていたというケースで、このほかにもストレスや疲れで、体調を崩したという人も少なくないということです。
このうち、4月1日に新卒で製造業の会社に入社したという20代の男性は、仕事の内容が当初の希望と違い、心身に不調をきたすようになったということです。出勤前から吐き気がとまらず、勤務中も息が苦しくなるなどしてきのうから出社できなくなったということで、この会社に依頼してきました。
男性の依頼を受けて16日午前中に退職代行サービスの担当者が電話で男性の会社に退職の意思を伝え、退職届の郵送など必要な手続きについて確認していました。
この会社では4月1日から4月15日までに678件の依頼があり、このうち、16%あまりにあたる110人が新入社員でした。去年は、4月の1か月間で50人ほどだったということで、大幅に増えています。
「プライベートの時間が少なく、研修が時間通りに終わらず残業代が出なかった」「業務内容が能力的に辛くストレスで寝られない」など入社前に聞いていた条件と違っていたという声が多いということです。
谷本慎二社長
「いわゆるZ世代は自分の考えを言うのが苦手な人も増えている上、コロナ禍でコミュニケーション力が下がっている印象がある。自分で退職できるのならそのほうが良いし、時には我慢も大切だと思うが、それで体調を崩してしまう人もいるので、どうしても無理な場合には、退職代行が一つの手段にはなると思う」
「退職代行」を利用する背景について若者の就職事情に詳しいリクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員は、労力や時間をかけずに効率的に辞めたいという意識があるのではないかと指摘しています。
リクルートワークス研究所 古屋星斗主任研究員
「今は大手企業も含めて中途採用が多く、辞めてもすぐに仕事が見つかるので、決断が早い。企業にとっても若者にとっても納得感のあるマッチングをするためには採用前にインターンなどで仕事内容を知ってもらったり、育成の専門職を置いて社員一人ひとりにあった育成方法を検討したりしていく必要がある」