東京大学の上田泰己教授などのグループは小学生から高校生までの子どもたちに腕時計型のウェアラブル端末を1週間、着けてもらい睡眠時間や睡眠のリズムなどを詳しく調べるプロジェクトを進めています。グループは中間報告を公表し、小学生から高校生までのすべての学年で睡眠時間が不足する傾向があることが分かりました。その内容をまとめました。
プロジェクトは睡眠時間や睡眠のリズムなどを詳しく調べるもので、およそ2万人分のデータを集めることを目標としています。グループは、中間報告としてこれまでに集まった全国およそ7700人分の結果をまとめました。
プロジェクトに協力している滋賀県の彦根市立西中学校では、1年生と2年生の生徒のうち希望した85人が睡眠時間を計る腕時計型の端末を身につけて生活しています。
サッカーのパフォーマンスアップにつなげたいと思い参加しました。端末をつける前は午前0時ごろ寝ていましたが今は午後10時に寝るようにしています。朝はすっきり起きられるしこれまで眠くなっていた4時間目の授業に集中できて生活が変わってきました。
今までは午前1時に寝ていたので睡眠時間が短いと感じて参加しました。午前0時までに寝られるようスマホを使う時間を削るようになりました。毎日違う時間に寝ていたり昼寝をしていたりしたことにも気がついたので今後、時間の使い方を工夫していきたいです。
今回のプロジェクトの前にこの学校が独自に行った調査では生徒の半数以上は寝る時間や起きる時間が定まっておらず、睡眠時間も推奨されている8時間から10時間を確保できていなかったということです。
厚生労働省の「睡眠ガイド」では睡眠時間は、小学生は9時間から12時間、中学生・高校生は8時間から10時間が推奨されていますが、プロジェクトの中間報告では、すべての学年でこれを下回っていました。
平均の睡眠時間は、小学生では、小学1年生が8.6時間で、小学6年生では7.9時間でした。また、中学生では、中学1年生が7.5時間で中学3年生では7.1時間、高校生では、高校1年生が6.6時間、高校3年生では6.5時間でした。
学年が上がるにつれて眠りにつく時間が遅くなり、睡眠時間が短くなっていたということです。
さらに、平日と休日で寝る時間帯がずれて睡眠のリズムが乱れる「社会的時差ぼけ」と呼ばれる状態の子どもも学年が上がるほど増える傾向があり、中学3年生から高校3年生の20%近くで2時間以上ずれていたということです。
グループによりますと「社会的時差ぼけ」が大きくなると、授業中に眠くなったり、集中力が欠けたりするなど生活や健康に影響がでるおそれがあるということです。
東京大学 上田泰己教授
「睡眠不足は健康や学習に悪い影響を及ぼすリスクがあるので、夜のスマートフォンの利用を控えるなどして、睡眠時間を確保してほしい」
子どもたちの睡眠不足が問題となる中、より良い睡眠のあり方を考えてもらう取り組みを進めている小学校があります。
さいたま市北区にある「さとえ学園小学校」では、2023年10月から大手通信会社の協力を受け、4年生の児童78人が睡眠を計測する機器を使って、自分の睡眠時間や眠りの深さの変化など睡眠について調べる総合的な学習を行っています。データは子どもたち自身が分析し、どうすれば睡眠が改善するかを考えてきました。
学校などによりますと、子どもたちが睡眠の重要性を認識することにつながっているということで、取り組みを始めてから毎月の平均の睡眠時間は徐々に増え、1月は当初に比べて40分以上長くなっていたということです。
子どもたちからは、リラックスできるよう寝室に花の香りを漂わせたり、壁紙を淡い色にしたりするなどの睡眠の質を高めるさまざまなアイデアが出され、3月は子どもたちからの提案で校内にあるプラネタリウムの施設で部屋を暗くして昼休みに仮眠できるようにする取り組みが実現し、これまでに3回行われたということです。
さとえ学園小学校 小野田正範校長
「子どもたちが自分で睡眠の課題を見つけて、解決の方法を考えたことが成果だと思っています。それぞれに合った睡眠のあり方を自分自身で探れるようになってほしい」