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はしか(麻しん)症状とは 防ぐには予防接種 未接種の年代も 感染経路や重症化リスクは?

  • 2024年3月12日

東京や大阪をはじめ、全国で相次いで「はしか」の感染者が確認されています。

「はしか」とは、どんな病気なのか。感染から何日後にどんな症状が現れるのか。感染経路はどういったものなのか。感染を防ぐにはどうしたいいのか。詳しくまとめました。

「はしか」どんな病気?

はしかは、ウイルス性の感染症で、感染力が極めて強く、重症化したり死亡したりするケースもあり、警戒が必要です。

《感染経路:簡単に感染する》
はしかは、患者がせきやくしゃみをすることで放出された粒子にウイルスが含まれていて、それを吸い込み感染します。

空気感染のほか、飛まつや接触を通じて広がることもあり、感染力が極めて強いため免疫がない場合、感染者と同じ室内にいただけでほぼ確実に感染するとされています。

まわりの人に免疫がなく、感染対策がとられない場合、患者1人から何人に感染を広げるかを示す「基本再生産数」は「12から18」とされ、「2から3」ほどとされてきた新型コロナウイルスなどより、感染力は格段に強いとされています。

今回は同じ飛行機に搭乗していた人で感染が相次いでいますが、去年には、新幹線で同じ車両に乗っていた人で感染が確認されたほか、2019年には、大阪の商業施設でアルバイト店員の感染が確認され、売り場を訪れていた買い物客らに感染が広がったケースがあります。

重症化や死亡するケースも

症状は:重症や死亡も
はしかに感染したときに出る主な症状は、発熱やせき、発疹、目の充血などです。

感染症に詳しい北里大学の中山哲夫特任教授によりますと、熱は2日ほどでいったん下がったあと再び上がるのが特徴で、40度近くまで上がり、発熱は1週間ほど続くということです。

発疹は、症状が出始めてから数日たたないと出ないため、最初のうちは、はしかと判断しにくいこともあるということです。さらに、感染による合併症として肺炎や脳炎が引き起こされ、重症化するケースもあります。

特に脳炎については、およそ1000人に1人の割合で起き、中には亡くなるケースもあります。

アメリカCDC=疾病対策センターによりますと、はしかに感染した子ども1000人のうち1人から3人は、呼吸器や神経系の合併症で亡くなるとしています。

年月経て「SSPE」という病気も
はしかが治ってから5年ほどたって以降、10万人に1人の割合で「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という病気を発症することがあります。

SSPEは、感染したはしかのウイルスが中枢神経系に潜み、長い潜伏期間を経て発症します。

元気に暮らしていたにもかかわらず、急に日常の行動ができなくなったり、異常な行動が目立つようになったりすることがあり、亡くなることもあります。

国立感染症研究所によりますと、はしかのウイルスに2歳未満で感染し、4年から8年の潜伏期間の後、6歳から10歳ごろに発症することが多いとされていますが、成人でも発症するケースもあるとしています。

感染症に詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は、次のように話しています。

中山特任教授
「はしかの最も重篤な合併症は脳炎で、初期症状は熱や発疹が出ているときに、もうろうとして呼びかけても反応しないような状況が続く。はしかは昔から『命取りの病気』と言われる。特効薬もなく侮ってはいけない病気だと認識してほしい」

そして、感染が疑われる場合は必ず医療機関に連絡したうえで受診してほしいと呼びかけています。

感染を防ぐには

はしかの特効薬はなく、症状に応じた治療をするしかないため、専門家はワクチンで感染を防ぐことが重要だとしています。

《小児の定期接種を確実に》
国内では、はしかのワクチンは、はしかと風疹を予防する「MRワクチン」を、「定期接種」として就学前の子どもが公費で接種できます。

「MRワクチン」は、「定期接種」として、1歳以上2歳未満のときに1回目、小学校入学前の5歳以上7歳未満の時に2回目を接種することになっています。

公費でワクチンを接種するには、決められた期間があり、▽1回目は2歳の誕生日の前日まで、▽2回目は小学校に入学する前の3月末までとなっています。 

厚生労働省によりますと、昨年度(2022年度)のMRワクチンの接種率は、▽1回目では95.4%と過去10年で2番目に低く、▽2回目は92.4%と、過去10年で最も低くなりました。

日本では2007年にワクチンを接種していない0歳から1歳の子どものほか、1回しか接種していない10代や20代を中心に感染が広がったことがあり、ワクチンに詳しい川崎医科大学の中野貴司主任教授は「対象となっている人は、忘れず接種してほしい」と話しています。

ワクチンには副反応も

ワクチンには副反応もあり、国立感染症研究所によりますと、1回目の接種のあと、発熱がおよそ20%から30%、発しんの現れる人がおよそ10%いるということです。

また、まれな副反応として、脳炎や脳症が接種回数100万回から150万回あたり1例程度報告されているということですが、はしかに感染した場合の発症率よりもはるかに低いということです。

感染症に詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は、次のように話しています。

中山特任教授
「接種から7日前後に副反応が出ることが多い。発熱しても1日か2日で下がるケースが多く、あまり心配はいらない。2回目の接種ではほとんど副反応は出ない」

ワクチン2回接種していない人は注意を 

《実は接種していない人も》
中高年でも、感染を経験しておらず、ワクチンを接種していないか1回しか接種していない人では、感染した場合は命にかかわることもあるとして、専門家は注意を呼びかけています。

日本プライマリ・ケア連合学会感染症委員会ワクチンチームによりますと、現在50歳代以上となる1972年(昭和47)年9月30日生まれまでの人は、定期接種が始まっておらず、ワクチンを1度も接種していない可能性があるということです。

それ以降の生まれでも、20代半ば以上となる2000年(平成12)年4月1日生まれまでの人は、定期接種が1回のみだったため、免疫が十分ではない可能性があるということです。

ただ、中山特任教授は、定期接種が始まる前の世代では幼少期に感染していることが多く、ワクチンを接種していなくても抗体が十分あるケースも多いとした上で、感染した記録のない人は抗体の検査をしたり、ワクチンの接種を検討したりしてほしいとしています。

《専門家:接種歴確認を》
中山特任教授は「母子手帳を見て自分の接種歴を確認したり、抗体検査を受けて免疫の状態を確認しておくことが大切だ。学校の先生や保育士など子どもと接する機会の多い人や海外に長期出張に出かける人などは、特に注意してほしい」と話しています。 

《女性は妊娠前に》
妊娠している女性は、特に注意が必要です。妊婦がはしかに感染すると、合併症のリスクが高いとされ、流産や早産の可能性も指摘されています。

ワクチンはウイルスの毒性を弱めた「生ワクチン」で、妊娠中に接種を受けることは適当ではないとされているため、妊娠を希望する人はあらかじめ接種を受けることが重要だということです。

厚労省“必要な場合はワクチンの検討を”

厚生労働省は、母子手帳などで自分がはしかのワクチン接種を2回完了しているかどうかを確認した上で、必要な場合はワクチンの接種を検討してほしいと呼びかけています。

はしかは感染力が非常に強いため、厚生労働省は、熱や咳のほか目の充血や発疹など、はしかを疑う症状がある場合は、公共交通機関の利用を控え、医療機関に事前に相談して指示に従ってほしいとしています。

また、海外から帰国後2週間程度ははしかの発症の可能性を考えて健康状態に注意するよう呼びかけています。

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