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トルコ・シリア大地震から1年 被災地の現在 “子どもたちのことを忘れないで”

  • 2024年2月6日

5万9000人以上が死亡したトルコ・シリア大地震から2月6日で1年。

トルコの被災地では、一部で公営住宅の引き渡しが始まる一方、今も多くの人たちがコンテナの仮設住宅での生活を余儀なくされていて、人口の流出など復興に向けた課題が山積しています。

一方、内戦下のシリアでは、1年たったいまも多くの人がテントでの生活を余儀なくされています。

シリアの被災地で活動を続けるユニセフ=国連児童基金のシリア事務所の副代表が報告会を行い「まだ復興の途上にあり、シリアの子どもたちのことを忘れないでほしい」と訴えました。

トルコ・シリア大地震から1年たった被災地の現在についてです。

トルコ・シリア大地震1年

大地震の爪痕が残るトルコ南部アンタキヤ中心部

去年(2023年)2月6日にトルコ南部で発生した大地震では、トルコで5万3537人、隣国シリアでおよそ6000人のあわせて5万9000人以上が死亡しました。

トルコ南部ヌルダーのコンテナ式の仮設住宅が並ぶ場所で遊ぶ子どもたち

トルコの被災地では今も70万人近い人たちがコンテナの仮設住宅での生活を余儀なくされていて、地震から1年となるなか、ようやく一部の公営住宅が完成し、およそ5万世帯が近く入居する予定です。

このうち、甚大な被害が出た南部ハタイ県のイスケンデルンでは、120世帯分の部屋が引き渡されることになり、4日、抽せんで選ばれた入居予定者が続々と訪れ、モデルルームを見学していました。

45歳の男性
「テントやコンテナでは夏は暑く、冬は寒くて暮らせたものではなかったので当選を知ったときは叫んで喜びました」

 一方、地震の際に左ひざに大けがを負ったという67歳の男性は、経済的な不安を語っていました。

67歳の男性
「これまで親戚の家を転々として惨めな思いをした。当選はしたが、年金生活で住宅の購入費用を支払えるか分からず、複雑な気分だ」

ガジアンテプ県ヌルダーにあるコンテナの仮設住宅で暮らす20歳の女性は、次のように話していました。

20歳の女性
「この1年間、地震の記憶を忘れたくても忘れられなかった。もしもの時のことを考えてしまい、片ときも家族の元を離れられなくなった」

また、自宅は被害を免れたものの精神的な不調に苦しめられたという35歳の女性は、次のように話していました。

35歳の女性
「寒さは大地震の日を思い出させる。子どもも大人もあの日の記憶を乗り越えて暮らそうとしている」

ただ、被災地が広範囲に及び、いまも壊れた建物の解体などが進む中、公営住宅の完成は、計画の6分の1程度にとどまっていて、人口の流出や産業の空洞化も大きな課題となっています。

シリア テントで生活 “学業諦める子どもも”

一方、内戦下のシリアでは、1年たったいまも多くの人がテントでの生活を余儀なくされています。

このうち、トルコとの国境に近い北西部ジャンデレスは、反政府勢力の支配地域で、国際的な支援が限られる中、地区で唯一の学校が被災し、子どもたちは、テントなどで授業を受けてきました。

こうした中、けが人の救助活動を続けるボランティアの団体「ホワイト・ヘルメット」が子どもたち4000人を収容できる大規模な学校の再建を始め、ことし9月の開校を目指しています。

ただ、シリアでは、内戦下の厳しい経済状況で子どもたちが学業を諦めざるをえないケースが相次いでいます。

地震で家を失い、テントで母と幼いきょうだいの4人で暮らすムラド・ハッサンさん(14)は、学校に通うのを断念し、家族を支えるためまきを集めて配達する仕事をしています。

5年前に父親を病気で失い、母親も地震で勤め先の工場が倒壊して失業し、ムラドさんの収入が頼りですが、1日の稼ぎは日本円にして100円に満たない日もあり、厳しい生活が続いています。

現地のジャーナリストによりますと、被災地にはWFP=世界食糧計画の支援が入る一方、地元の団体による支援物資の横流しなどが横行していて、食料が行き届いていないということで、ムラドさんの一家も3か月にわたって支援物資を受け取れていないということです。

ムラドさん
「雨の日はテントが流されないよう、眠らずに用心しないといけない。友だちと遊んだり、学校に行ったりする日がまた来ることを願っている」

国連 “シリアの子ども忘れないで”

シリアの首都ダマスカスにあるユニセフ・シリア事務所の根本巳欧副代表は、地震から1年となるのを前に今月(2月)2日、オンラインで報告会を行いました。

根本さんは、被害を受けたシリア北部の地域を8回訪れていて、このうちアレッポでは、まもなく水道の復旧工事が終わる現場もあり、復興の歩みが見られるということです。

また、被災地では、学校が避難所として使われ、授業ができない状態となっていましたが、多くの学校で授業が再開されたということです。

ただ、10年以上続く内戦でもともと学校に通えていなかった子どもも多く、シリア全土では250万人以上の学齢期の子どもが学校に通えない状況が続いているということです。

根本さんは、被災地では、地震をきっかけに支援が届き、数年ぶりに学校に戻ることができた子どもたちもいるとしたうえで、心のケアや経済状況の改善といった中長期的な支援が求められていると訴えました。

根本さん
「シリアへの関心がどんどん薄れていると危惧する声が上がっています。シリアもまだまだ復興の途上にあり、子どもたちのことを忘れないでいただけたらと思います」

トルコ・シリア大地震の追悼式で被災地を流れる川に花を投じるようとしている女性

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