1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. もっとニュース
  4. 能登半島地震1か月 道路や水道 支援などの状況は?~被災地のいま~

能登半島地震1か月 道路や水道 支援などの状況は?~被災地のいま~

  • 2024年2月1日

能登半島地震の発生からきょう、2月1日で1か月です。

能登半島では、山間地を結ぶ道路が各地で寸断されたため、当初は支援が思うように進まず、多くの人が水道や電気などのインフラが止まったまま、冬の寒さの中での避難を余儀なくされました。

被災地では、ライフラインの復旧が徐々に進み、2次避難や仮設住宅の建設など支援の動きが加速しています。現在の状況をまとめました。

能登半島地震から1か月 各地の様子

午前5時すぎ…石川県七尾市 1か月遅れて初競り

能登半島地震で被害を受けた石川県七尾市にある公設地方卸売市場は、建物が仮復旧したことなどからけさ(1日朝)、およそ1か月遅れで初競りが行われました。

けさ5時半すぎ、七尾市の公設地方卸売市場では、ことし(R6)の初競りが行われ、競り人たちのかけ声が飛び交う中、県内で水揚げされたブリやなまこなどが次々と競り落とされていました。

七尾市の公設地方卸売市場は能登半島で唯一の公設の卸売市場で、初競りを1月4日に行う予定でしたが地震によって休業を余儀なくされていました。

市場では、地震の揺れや液状化現象で建物の入り口に段差ができたり、駐車場に亀裂が入ったりして車の通行が難しくなったほか、魚を洗うための海水が通る配水管が壊れるなどの被害が出ました。

その後、被害が出た場所を応急的に補修し、建物が仮復旧したことなどから、きょうから市場を再開できたということです。

競りに参加した業者
「市場が再開してよかったし魚も鮮度がいい状態だ。ただ、断水で魚がさばけないことで魚を買いに来ている人も半分くらいになっているようだ」

「七尾魚市場」営業第一部の細口守部長
「なんとか1か月で再開できたことはうれしく思っています。もっともっと水揚げを増やして魚を供給していきたい」

石川県輪島市 “長いようで短い1か月”

火災で大きな被害を受けた石川県輪島市の「朝市通り」では、風が強く吹く冷え込んだ朝を迎えました。

地震と火災の直後からほとんど様子は変わっておらず、鉄骨がむき出しになった建物などは、そのままになっていますが、亡くなった人を悼む白い花束が手向けられていました。

近くにある自宅が壊れ、金沢市の避難先と往復して暮らしているという67歳の男性は、次のように話していました。

67歳の男性
「これからどうやっていくか必死に考えている状況で、先のことをゆっくり考える余裕はありませんでした。町並みがこのような状態になってとても悲しく、どうやって復興していくのかが課題です」

近くに住む65歳の男性
「長いようで短い1か月でした。歩いていても今までと街の景色が変わっていてさみしいです。生活再建の見通しもたたず不安ですが、毎日を生きていくしかないです」

石川県珠洲市 発生時刻で止まった…

能登半島地震から1か月となったけさの石川県珠洲市では、地震があった時刻の午後4時10分すぎで止まってしまったとみられる時計がありました。

周辺は壊れた家屋などのがれきが散乱したままの状態となっています。

石川県珠洲市にある飯田港の近くでは、地震の発生から1か月となったけさ、車が乗り上げたり、家が大きく崩れたりしている様子が見られました。

犬の散歩をしていた68歳の女性
「地震が起きた時も海の近くで犬の散歩をしていて無我夢中で近くの高校まで避難しました。地震の発生以来、時間の感覚が分からなくなっていて、きょうまであっという間だったという気持ちと長かったなという気持ちがあります。自宅の1階は無事でしたが、2階は物が散乱して片づける気にもなれず、これからどうやって生きていこうか悩んでいます。町の面影がなくなり、近所の人も2次避難でいなくなって、悲しいような、むなしいような、何とも言えない気持ちです」

被災地の停電 断水の状況

~停電~
きのう(1月31日)午後2時の石川県のまとめによりますと、停電は、およそ9割で復旧したということですが、輪島市や珠洲市などおよそ2500戸で今も停電が続いています。

~断水~
水道は、およそ4万890戸で断水が続いています。
岐阜大学工学部の能島暢呂教授のまとめでは、地震発生から1か月後の水道の復旧状況は、東日本大震災や阪神・淡路大震災では8割あまり、熊本地震ではほぼ完了していました。
今回は、特に断水が長期化し、トイレや洗濯、入浴が制限されるなど厳しい環境での避難生活が続いています。

道路 本格復旧には数年かかるところも

~道路の復旧状況~
国土交通省のまとめによりますと、能登半島の主要な幹線道路では、緊急車両などの通行や救援ルートを確保するための緊急復旧が9割で終わりました。

一方で、沿岸部を走る国道249号線や県道38号線は斜面の崩壊やトンネルの崩落など大規模な被害が出ていて、内陸から沿岸部にくしの歯状にルートを設ける作業が続けられています。

今後の本格的な復旧には、数年かかるところもある見込みです。

支援物資届き始める

今回の地震で国は、被災した自治体からの要請を待たない「プッシュ型」による物資支援を行いましたが、道路が各地で寸断されたために十分に届けられない事態となりました。

内閣府によりますと、道路の復旧が進むなどしたことで、現在は支援物資が届けられるようになりました。

支援物資は当初、食料や水、毛布、簡易トイレといった生活必需品を中心に金沢市にある拠点に運ばれました。

最近では、現地のニーズに合わせて支援物資も変化していて、▽マスクや消毒液といった感染症対策となる物資のほか、▽子育て用のミルク、▽段ボールベッドなどを支援しているということです。

ボランティア 一般の受け入れ始まる

被災した人たちを支援するボランティアは、これまで団体による活動に限られていましたが、地震から1か月近くたって一般のボランティアの受け入れが一部の自治体でようやく始まりました。

内閣府によりますと、能登半島地震の被災地では、この1か月で100を超える専門のボランティア団体が発災直後から石川県内を中心に活動にあたり、支援物資の運搬や災害廃棄物の撤去、避難所の運営などを支援してきたということです。

一方、個人のボランティア活動は1月27日から七尾市、志賀町、穴水町で始まり、石川県は珠洲市と中能登町でもあさって3日から活動を始めると発表しました。

輪島市や能登町では募集は始まっていません。

仮設住宅 建設進むも供給わずか

被災地では仮設住宅の建設も進んでいます。
内閣府によりますと、石川県内では地震から1週間あまりたった1月12日に輪島市と珠洲市で最初に着工され、きのう(1月31日)、輪島市で最初の仮設住宅が完成しました。

ただ、きのうの時点で能登地方を中心に4万6000棟を超える住宅が被害を受け、いまも1万4000人を超える人が避難所に身を寄せていて、仮設住宅などへすぐに入居できる人は限られるとみられます。

り災証明書の発行 自治体に差

被災した人が公的な支援を受けるために必要な「り災証明書」の発行の状況について、内閣府は「被害が甚大なため、り災証明書の発行が進んでいる自治体とそうでない自治体の間で差がある」としています。

その理由として自治体によっては、被災した建物が多く被害程度の判断に時間がかかるうえ、応援職員を派遣しようにも宿泊先の確保が難しいことなどがあるということです。

今回の地震では、被災した人が広域的に避難している状況をふまえ、国は1月13日に避難先の役所や役場でも手続きが出来るよう、全国の都道府県に協力を求める通知を出しました。

この中では、被害認定の手続きの省力化に向けてドローンで撮影した映像や被災者自身が撮影した写真を活用できるとしていて、東京都は都庁会議室にいながら住宅の被害の状況をリモートで判断する作業を始めています。

新潟市 り災証明書の交付…申請の7%ほど

新潟県では、きのう(1月31日)までに確認された住宅被害はあわせて1万3086棟にのぼり、液状化による被害が各地で確認されています。

特に新潟市西区では被害が深刻で、自宅に住めなくなった人に市営住宅へ入居してもらうといった対応を進めているものの、きのうの時点で2か所の避難所に16人が避難しています。

また、新潟市では、支援を受けるために必要な「り災証明書」の交付に向けた調査を当初1月いっぱいで終える予定でしたが今月(2月)までずれ込みました。

きのう時点で、1万1364件の申請に対し、1万756件の調査が終わっています。

一方、「り災証明書」の交付は792件と申請の7%ほどにとどまっています。
このため、市は、きょう(1日)から交付する窓口を増やすなどして対応を急ぐことにしてます。

専門家“復興へギアを上げて”

災害時の応急対応に詳しい防災科学技術研究所の宇田川真之特別研究員は、これまでの対応について、半島という地理的な特性をあげたうえで、次のように話していました。

防災科学技術研究所 宇田川真之 特別研究員
「道路の被害が大きかったことから、人員や物資を送るという点で非常に難航した部分があり、これまでの災害に比べて応援活動などの対応が難しかったと思う。一方、各地の自治体から派遣された応援職員がなかなか被災地に入れない中で、被災家屋の写真などを外の地域に送ってもらい、被害認定調査を行うというこれまでに無かった取り組みも実施された」

また、地震発生から1か月が過ぎたあとの復旧や復興については「人命救助や避難所の環境改善などといった対応から、生活や地域の再建へとギアをチェンジしたり同時並行で対応する必要がある。住宅やなりわい、教育、福祉サービスなど必要な対応は一人一人異なるが、誰がどこでどんな暮らしをしているかをフォローして、個々のニーズに応えていくための準備を進めるべきだ」と話していました。

その上で、宇田川特別研究員は、次のように指摘しています。

宇田川特別研究員
「自治体によって被害の大きさや復興に取り組むスピード感は異なるが、将来に向けたロードマップを住民に示す、つまり“見える化”して自分たちの暮らしをどう再建していけばいいのか、イメージしやすくしていくことがとても重要だ」

ページトップに戻る