大相撲の琴ノ若の大関昇進が決まりました。伝達式での口上、祖父で元横綱琴櫻のしこ名はどうするのか。地元の千葉県松戸市の人たちや、山形県に住む佐渡ヶ嶽親方の両親である祖父母の喜びの声とともにお伝えします。
琴ノ若の大関昇進は、きょう(1月31日)開かれた日本相撲協会の臨時理事会で決まり、その後協会の使者2人が千葉県松戸市の佐渡ヶ嶽部屋に赴き、琴ノ若と師匠の佐渡ヶ嶽親方に伝達式で昇進を伝えました。琴ノ若は口上でこう述べました。
「大関の名に恥じぬよう、感謝の気持ちを持って相撲道に精進して参ります」
琴ノ若の祖父は「猛牛」と呼ばれたほどの激しい出足と当たりで横綱に上り詰めた琴櫻、父は師匠である元関脇・琴ノ若の佐渡ヶ嶽親方と3代続けての幕内力士です。
埼玉栄高校を卒業後、佐渡ヶ嶽部屋に入門し、平成27年の九州場所で初土俵を踏みました。
恵まれた体格を生かした四つ相撲を持ち味に令和元年の名古屋場所で新十両に昇進して、師匠の父からしこ名を譲り受け、次の年には新入幕を果たしました。
そして、去年の初場所、新三役となる小結に昇進し、秋場所では関脇に番付を上げて、父の最高位に並びました。三役昇進後の去年1年間はすべて勝ち越すなど安定感が増し、迎えた初場所では得意の右四つに加えて祖父の相撲の映像を見て磨いた押し相撲でも力を発揮し、初優勝こそ逃したものの、13勝2敗の好成績を収めました。
伝達式のあと、琴ノ若は師匠とともに記者会見に臨みました。
琴ノ若
「緊張はきのうからあって、伝達式の最初に一瞬、ことばが飛んで長く感じた。目の前で部屋の兄弟子の大関昇進を見てきたが、それを自分でできたことはありがたい。(口上に込めた思いは)難しく考えず、自分が思ったことを素直に言おうと思った。感謝の気持ちというのは先代の佐渡ヶ嶽親方にも中学、高校の先生にもずっと教えていただいたことでこの気持ちが一番大事だと思った」
その上で、しこ名については「琴ノ若」のまま3月の春場所に臨み、その後、琴櫻のしこ名を継ぐ考えを示しました。
「琴ノ若で新大関の場所を取らせていただこうかなと思っている。師匠と話して、この名前を大関に上げたかったので1場所しっかり取って、そこから頂いた条件は達成できたので、そこから継がせていただこうかなと思っている。月曜日(29日)にはある程度固まっていたが、きのうしっかり師匠と30分ぐらいお話しさせていただいた。この名前で上がるのが大事なのか、この名前で大関と呼ばれて土俵に上がるのが大事なのかと考えさせてもらって、自分自身も1場所でもこの名前で土俵に上がりたい気持ちがあったので、それを伝えさせてもらって、1場所しっかり取って、もう1回相談して継がせて頂く予定ではある」
また、祖父への思いについては。
「『しこ名をここだったら継いでいいぞ』と言ってもらえる番付までこられてよかった。そういう風に報告したいけど、相撲に関しては厳しいので、『ここで満足するな』と言われると思うので、今度は先代に追いつけるようにやっていきます」
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「幕下、若い衆時代の方がそういうのは考えていたと思う。上がっていくにつれて考えてもしかたないというところがあったので、伸び伸びやろうと思ってあまり考えなくなった。こういう経験も入らなきゃいけないし、上がらなきゃできないので、感謝の気持ちを持ってこういう状況、形にも感謝してこれからもやっていけたらいいかなと思う」
父で師匠である佐渡ヶ嶽親方はこのように話しました。
佐渡ヶ嶽親方
「私が関脇で引退したので、そのしこ名を大関まで上げてくれたというのは親としても師匠としても感謝している。先代の『琴櫻』を名乗ってもいいという話をしたが、本人の『琴ノ若』のしこ名で恩返しをしたい気持ちが強かった」
千葉県出身力士としての新大関は、昭和30年の秋場所後に昇進した松登(いまの松戸市出身)以来、69年ぶり。松戸市役所の館内には、縦およそ80センチ、横およそ4メートルの琴ノ若の昇進を祝う横断幕が掲げられました。市役所を訪れた人からも祝福の声がきかれました。
佐渡ヶ嶽親方の両親で琴ノ若の祖父の今野芳夫さんと祖母のとき子さんは、山形県尾花沢市の自宅で伝達式の様子をライブ配信で見守り、涙を流しながら拍手を送っていました。
祖父の今野芳夫さん
「大関に昇進して立派に育ってくれてうれしい。今のまま技を磨いていけば近いうちに横綱になるチャンスが来ると思うのでこれからも頑張ってほしいです」
祖母のとき子さん
「子どもの時に、相撲をして負けると悔しくていつも泣いていました。今の気持ちを大事にして稽古をしていけば強くなれると思います。上を目指して頑張ってほしいです」
日本相撲協会の八角理事長は、大きな期待を寄せるコメントを発表しました。
日本相撲協会 八角理事長
「大きな期待とたくさんの重圧がある中、安定感のある落ち着いた相撲を見せてくれた。堂々として立派だった。これからは、大関という地位の誇りを持ち、責任感や緊張感を忘れずに、全力士の模範となってくれる事を期待している。今の相撲にもっと磨きをかけて、またさらに上の番付を目指して、これからも一生懸命、稽古に精進してもらいたい」
きょうの記者会見で、琴ノ若と師匠は、大関のその先を見据えた言葉を紡ぎました。
佐渡ヶ嶽親方
「伝達式を終えて少しずつ本当に大関に上がったという実感がわいている。父親としても師匠としても最高にうれしい。琴ノ若にはもう1つ上の番付があるから大関は通過点だと思って稽古に精進するよう伝えた。(初場所での)横綱戦、確かに善戦はしましたけどあと一歩、横綱に勝っていかないと自分が上にいくということが難しいと思うので、もっともっと稽古積んで横綱を倒せる力をつけていってくれると思う。もっともっと強い琴ノ若、そして琴櫻になってほしいと思います」
琴ノ若
「まだもう1個上があるので、上を目指して気を引き締めていかないといけない。その景色を師匠と一緒に見られるように稽古場からしっかり精進していく。上を目指して気を引き締めてやっていかないといけない。強い気持ちや責任感を持って土俵に上がっていきたい。この世界に入ったからには最後までそこ(横綱)を目指してやっていかないといけないと思っていますし、その気持ちで相撲界に入ったので、これからしっかりやっていかないといけないと思っています」