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災害関連死どう防ぐ 糖尿病や高血圧など持病薬が不足 能登半島地震の避難所

  • 2024年1月17日

2016年に発生した熊本地震では、地震が直接の原因で死亡した人は50人でしたが、事例集によりますと生活環境の悪化などによって亡くなった、いわゆる「災害関連死」と認定された人はその4倍以上の200人あまりに上ります。

「災害関連死」をどうすれば防げるのか。
能登半島地震の被災地で医療支援にあたった救急医に聞きました。

「災害関連死」リスクが高まることを懸念

日本医科大学付属病院救命救急科の中江竜太医師ら4人の医療チームは能登半島地震で震度6弱を観測した石川県能登町で1月13日までの5日間、医療支援を行いました。

チームが訪れた小木地区の小・中学校には、持病がある高齢者を含むおよそ400人が避難していましたが、医師らの聞き取りに対し、このうち30人あまりが、3日から1週間以内に高血圧や糖尿病などの持病の薬が無くなると答えたということです。

さらに、避難所では断水が続き、トイレの衛生環境が悪化していることから、水分の摂取を控える人が大勢いたということです。

中江医師は、さらに精神的なストレスや運動不足が加わることで心臓や血管など循環器系の病気による「災害関連死」のリスクが高まることを懸念しています。

中江医師たちは、持病の薬が無くなりそうな人への薬の処方のほか、血圧の測定や適切な運動、水分補給の指導など健康管理にも追われたということです。

さらに、中学校の避難所では、新型コロナの感染が相次ぎ、なかには重症化して病院に搬送された高齢者もいたということで、隔離スペースの確保など感染対策も課題になっているということです。

日本医科大学付属病院救命救急科 中江竜太医師
「避難所には高齢者が多く、持病を悪化させる人が増えている。災害関連死や災害に関連する病気は、健康管理や生活指導によってある程度、防げるはずなので、医療チームによる診療や、生活習慣の指導などの支援を継続する必要がある」

災害関連死を防ぐ対策

心臓や血管の病気による災害関連死を防ぐためにとるべき対策について、支援にあたった中江医師は、まず、高血圧や糖尿病などの持病がある人は、持病の薬を飲み続けることが大切だとしています。

持病の薬がなくなった人は、被災地を訪れた医療支援チームなどに申し出て処方を受けてほしいと話しています。

さらに、避難所では、トイレの衛生環境が悪化しているなどの理由で水分や栄養の補給を控える人がいるということですが「食事や水分を十分にとらないと体調を崩し、脳卒中や心筋梗塞を発症するリスクが高まる」として、意識して水分や栄養を摂取することが大事だとしています。

また、避難先で運動不足になったり、じっと同じ姿勢をとったりしていると、足に出来た血栓が肺に到達して血管を詰まらせてしまう「エコノミークラス症候群」になりやすくなるということです。

予防のためには、避難先でも適度な運動を続けることが、重要ですが、寝転がったままでも、足を動かしたり、ふくらはぎをマッサージしたりすることが効果的だということです。

さらに中江医師は、次のように話しています。

中江医師
「手足がしびれ、動かなくなったり、ろれつが回らなくなったりした場合、脳卒中を起こしている可能性があるので、何か体調不良を自覚したら、すぐに医療チームを呼んでほしい」

熊本地震 循環器系の病気が「災害関連死」全体の3割近く

8年前の熊本地震では、心臓や血管などの循環器系の病気が「災害関連死」全体の3割近くを占めていたというデータがあります。

内閣府が3年前の2021年に公表し、去年(2023)5月に改定した「災害関連死事例集」は、過去の災害で、災害関連死として自治体から報告があったケースについてまとめています。

このうち、8年前の2016年に発生した熊本地震では、地震が直接の原因で死亡した人は50人でしたが、事例集によりますと生活環境の悪化などによって亡くなった、いわゆる災害関連死と認定された人はその4倍以上の200人あまりに上ります。

死因として最も多かったのは、肺炎や気管支炎など呼吸器系の病気で63人と全体の28.9%でしたが、心不全やくも膜下出血、それに脳卒中といった、心臓や血管などの循環器系の病気は60人で27.5%と2番目に多くなっています。

また、亡くなった人のおよそ78%が70歳以上の高齢者で、多くは持病があったり、要介護認定を受けたりしていたということです。

災害発生から死亡までの期間では、1週間以内が24.3%、1か月以内が32.6%、さらにその後3か月以内が24.3%と、地震から3か月以内に亡くなった人が8割以上を占めています。

中江医師は、次のように話していました。

中江医師
「今回の地震は元日に発生したため、もともと手持ちの持病の薬が少なかった人が多く、発生から2週間たった今ではもう残り数日分しかないという人もいる。医療支援チームが薬を処方して、継続的に服用してもらうことが、心臓や血管の病気による災害関連死を防ぐために重要だ。また、運動不足が続くことで、足に出来た血栓が肺に到達して血管を詰まらせてしまう『エコノミークラス症候群』の発生にも注意してほしい」

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