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茨城・ひたちなか海浜鉄道 延伸計画 新駅整備へ “早ければ5年後の完成目指す”地方鉄道で延伸は異例

  • 2023年12月4日

鉄道の延伸計画、厳しい経営が続く地方鉄道では極めて珍しい動きになります。茨城県ひたちなか市の第三セクター「ひたちなか海浜鉄道」は、年間200万人前後が訪れる「国営ひたち海浜公園」へのアクセスを高めようと、路線を延ばして公園の南口付近に新駅を整備する方針を固めました。着工してから早ければ5年後の完成を目指しているということです。

コロナ禍で延伸計画は2年連続工事申請延期

ひたちなか海浜鉄道・湊線は、いまの終点の阿字ヶ浦駅から3.1キロを延伸する計画で、2021年1月に国から許可を受けました。
一方、新型コロナによる需要低迷や物価高騰による建設費の増加などを受け、会社では2年連続で国への工事許可申請を延期し、計画自体の見直しを進めていました。

新たな延伸区間は 新駅はどこに

新たな案

関係者によりますと、検討の結果、会社では、工事を2段階に分け、まずは海浜公園の南口付近に新駅を整備し、1.4キロの区間を先行して開業する方針を固めたということです。
海浜公園は、都心部からの利用客も多く、アクセスを高めて来場者をさらに増やすほか、周辺では、茨城県が新たな工業団地の開発を進めるなど通勤需要も取り込みたい考えです。
そして、第2期として、当初の計画にあった大型商業施設が隣接する海浜公園西口付近までの1.7キロの区間も整備する方針です。ひたちなか海浜鉄道は、2023年度中に国に工事の許可を求める申請を出した上で、着工してから早ければ5年後の完成を目指しているということです。

ひたちなか海浜鉄道 利用者は2年連続過去最高も赤字は3年連続

ひたちなか海浜鉄道によりますと、昨年度(2022)湊線を利用した人は111万6000人余りと2021年度と比べて3万人ほど増え、2年連続で過去最高を更新しました。
2021年、沿線に開校した地元の小中一貫校の通学客の利用が進んだほか、「コキア」や「ネモフィラ」などで知られ、年間200万人前後が訪れる「国営ひたち海浜公園」や「那珂湊おさかな市場」への観光客の利用が増加したため、増えたということです。
一方で、昨年度の収支はおよそ1400万円の赤字となりました。赤字となるのは3年連続です。通学客が増えたものの、収入の中心となる観光などの利用客が、新型コロナの感染拡大前の水準に回復しなかったためです。

国営ひたち海浜公園のネモフィラ

延伸実現すれば 地方鉄道としては極めて珍しい

厳しい経営環境が続く地方鉄道で、延伸は極めて珍しい動きとなります。国土交通省が中小の民間鉄道や第三セクターの経営状況をまとめたところ、昨年度は全国の95社のうち85社で、鉄道や軌道事業が赤字になっていて、令和元年度の74社と比べて増加しています。

左:JR芸備線 右:JR留萌線

また、▼JR東日本では、昨年度、利用が特に少ない62区間で赤字が648億円になると発表しているほか、▼JR西日本では広島県と岡山県を結ぶ芸備線の一部区間について、ことし(2023年)に施行された法律に基づき、路線の存続やバスへの転換などを議論する協議会の設置が調整されています。
直近では新型コロナによる需要の落ち込みも大きいものの、少子高齢化や人口減少によって地方の公共交通は苦境に立たされいて、ことし3月には北海道でJR留萌線の一部区間(石狩沼田~留萌)が廃止されたほか、2024年3月にはJR根室線の一部区間(富良野~新得)が廃止されることになっていて、地方路線の廃止が相次いでいます。
こうした中、地方鉄道の延伸は国土交通省に記録の残る平成5年度以降では、路面電車やモノレールなどを除けば例がないと見られます。

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