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アルツハイマー病 新薬「レカネマブ」早ければ年内にも使用へ~早期診断と価格が課題~

  • 2023年8月24日

認知症の原因となる病気の1つアルツハイマー病。
発症した人の脳では、「アミロイドβ」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまっていて、これにより神経細胞が壊れ、脳が萎縮し、その結果、脳の働きが低下すると考えられています。

こうした中、日本とアメリカの製薬会社が共同で開発したアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新しい治療薬、「レカネマブ」について、厚生労働省の専門家部会は21日、使用を認めることを了承しました。

近く厚生労働省が正式に承認する見通しで、早ければ年内にも患者に使われるものとみられます。

※9月25日 厚生労働省が正式に承認しました。

アルツハイマー病とは

アルツハイマー病は、認知症の原因となる病気の1つで日本では認知症と診断された高齢者の6割以上を占めています。アルツハイマー病を発症した人の脳では、「アミロイドβ」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまっていて、これにより神経細胞が壊れ、脳が萎縮し、その結果、脳の働きが低下すると考えられています。

典型的な症状として初期にもの忘れが目立ち、経過とともに、理解や判断の力が衰えたり、身体的な機能も低下して動きが不自由になったりするなど様々な症状が徐々に出てくるようになります。

厚生労働省によりますと、日本では認知症の人は3年前(2020年)の時点で600万人と推計されていてさらに団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる2025年にはおよそ700万人にのぼると予測されています。

新しい治療薬「レカネマブ」了承 早ければ年内使用も

こうした中、日本とアメリカの製薬会社が共同で開発したアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新薬について、厚生労働省の専門家部会は21日、使用を認めることを了承しました。

了承されたのは、日本の製薬大手「エーザイ」がアメリカの「バイオジェン」と共同で開発した、認知症の原因の1つアルツハイマー病の新しい治療薬、「レカネマブ」です。アルツハイマー病の患者の脳にたまる「アミロイドβ」という異常なたんぱく質を取り除くことができ、症状の進行を抑えることが期待されています。

エーザイが厚生労働省に承認申請を行い、21日開かれた厚生労働省の専門家部会は、有効性が確認でき、安全性にも重大な懸念はないとして、使用を認めることを了承しました。

薬を開発した「エーザイ」は、近く公的医療保険の適用を求める申請を行う見通しで、承認から遅くとも90日以内に中医協=中央社会保険医療協議会で、保険適用と価格について結論が出され、早ければ年内にも患者に使われるものとみられます。

〇「レカネマブ」を正式承認
「レカネマブ」について厚生労働省は、8月開かれた専門家部会で使用が了承されたことを受けて、9月25日、正式に承認しました。アルツハイマー病の原因物質に直接働きかけ取り除くための薬が国内で承認されるのは初めてです。
薬が使われる対象は、認知症を発症する前の「軽度認知障害」の人や、アルツハイマー病の発症後、早い段階の人となっています。(追記 9月25日)

 

早期診断と価格が課題

「レカネマブ」が国内で承認されても、アルツハイマー病の患者すべてが使えるようになるわけではありません。

この薬の効果が期待できるとされるのは、症状が比較的軽く、脳に「アミロイドβ」がたまっていることが確認できた早期のアルツハイマー病の患者で、症状が進行した患者などは薬の対象にならない見通しです。

また、早期のアルツハイマー病の患者を正確に見つけ出すことも課題です。

脳の中の「アミロイドβ」は、画像にして写し出すPETと呼ばれる装置か、腰に針を刺して採取する脳脊髄液で調べていますが、実施できる施設が限られていたり、体への負担が大きかったりと手軽に行える検査ではないほか、アルツハイマー病の診断には公的な保険が適用されないため、費用が高額になります。

より簡単で患者に負担が少ない診断技術として、わずかな血液から脳の「アミロイドβ」の量を推定する技術が開発されていますが、診断を確定させる技術としては実用化に至っていません。

さらに、薬自体の価格も課題です。日本での価格はまだ決まっていませんが、すでに承認されているアメリカでは、日本円に換算しておよそ385万円と設定されています。

日本では、承認から遅くとも90日以内に、中医協=中央社会保険医療協議会で、公的な医療保険の適用と価格について結論が出ることになっていて、議論の行方が注目されます。

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