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緊急避妊薬 医師処方箋なし試験的販売 どんな薬局で?開始時期は

  • 2023年11月29日

「緊急避妊薬」は意図しない妊娠を防ぐための薬で、国内では医師の処方箋が必要となります。厚生労働省の検討会が医師の処方がなくても適正に販売できるか、一部の薬局で試験的に販売する調査研究を行うことを決め、日本薬剤師会は全国145の薬局で試験的に販売を始めました。販売する薬局や対象、値段などについて情報をまとめました。【更新:11月29日】

緊急避妊薬 薬局で試験的に販売

「緊急避妊薬」は、避妊の失敗や、性暴力などによる意図しない妊娠を防ぐための薬で性行為から72時間以内に服用すれば、妊娠を一定程度防ぐことができます。

厚生労働省は6月26日に開かれた専門家の検討会で、一定の要件を満たす薬局で試験的に販売を行いながら、医師の処方箋がなくても適正に販売できるかを検証する調査研究を始める方針を示しました。

販売を行うことができるのは緊急避妊薬の調剤実績がある薬局を中心に、研修を修了した薬剤師が販売することなどの条件を満たす薬局を地域ごとに選定し公表することにしています。
そのうえで販売時の説明などについての薬局に対する調査や、購入した人に対するアンケート調査を行うとしています。

試験販売を開始 薬局・対象・値段は

「緊急避妊薬」について日本薬剤師会は11月28日から全国145の薬局で試験的に販売を始めました。
購入できるのは、調査研究への参加に同意した16歳以上の人で、16歳以上18歳未満の人は保護者の同意が必要になります。
また16歳未満の人に対しては薬局が産婦人科医などを紹介するということです。

販売価格は7000円から9000円程度を想定しているということです。

試験販売を行っている薬局の情報は、日本薬剤師会のホームページなどからアクセスできる専用サイトで確認できます。

薬局は、研修を受けた薬剤師がいて、夜間や土日、祝日なども対応が可能、近隣の産婦人科と服薬後に連携できて、個室があるなどプライバシーを確保できる、などの条件を満たした店舗が選定されているということです。
【追記:11月29日】

緊急避妊薬試験販売のサイトはこちらから
https://pharmacy-ec-trial.jp
*NHKサイトを離れます

医師処方箋なし 適正販売できるか

緊急避妊薬を一定の要件を満たす薬局で試験的に販売する調査研究は、医師の処方箋がなくても適正に販売することができるのかを検証することを目的に行われます。

調査は、薬局、購入者、産婦人科の3者を対象に行われ、薬局にはすべての販売事例を対象に、購入者に薬の説明や指導ができたかなど販売状況を調べる予定です。
購入者には、同意が得られた場合のみ避妊の結果や妊娠検査実施の有無などを調べるほか、産婦人科へは、購入者のフォローアップの状況などを調べる予定です。

厚生労働省は早ければ夏にも販売を開始し、2024年3月にかけて調査を行う方針です。
処方箋が必要な医薬品の一般販売に先立ってこうした調査研究を行うのは初めてだということで、厚生労働省は今後調査の結果などを踏まえ一般販売について可能な限り早期に検討するとしています。

薬局販売を求める団体

厚生労働省が緊急避妊薬の試験的な販売を行う調査研究を始める方針を示したことについて「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」の染矢明日香共同代表は次のように話しています。

〇試験的な販売について
今後、試験的販売や厚生労働省での検討が行われるとなると、全面的な薬局での販売が実現するのには2年以上かかるという意見もあり、緊急避妊薬へのアクセス自体が阻まれていると感じている。

〇早急に全面的な薬局販売を
試験的な販売を実施するならできるだけ多くの薬局で取り扱ってほしいし、どこの薬局で入手可能なのかを知ってもらう機会がないと混乱しそうだと思う。また、調査研究で協力するときにプライバシーが守られるのか心配して服用をためらう人もいると思うので、当事者に負担がかからないような形で実施してほしい。いつ妊娠するかは人生を左右する大きな問題なので、国には全面的な薬局での販売を早急に実現してほしい。

日本産婦人科医会 常務理事

厚生労働省の方針について、日本産婦人科医会の種部恭子常務理事に聞きました。

〇複雑な背景がある人も多い
薬局で試験的販売をすることで緊急避妊薬を入手するハードルは下がるかもしれないが、当事者は未成年だったり性暴力を受けていたりするなど複雑な背景がある人も多い。薬剤師がこうした事情を聞き取って必要な場合にどれだけ産科医につなげられるかデータを取っていく必要がある。

〇求められる対応
緊急避妊薬を受け取りに来た時点ですでに妊娠しているというケースもある。こうした人たちがきちんと医療にアクセスできるようにしていかないといけない。
避妊を男性に任せず自分で自分のことを決めるためのジェンダー教育や、避妊用の低用量ピルを無料にするなど、社会的な環境の整備も必要だ。

現在は医師による処方が必要

緊急避妊薬は避妊ができなかったり性暴力を受けたりしたあとで意図しない妊娠を防ぐための薬です。「レボノルゲストレル」というホルモン剤を成分とする錠剤の薬で、排卵を遅らせる作用などがあり、性行為から72時間以内に1回服用することで、80%以上の確率で妊娠を防げるとされています。
副作用は子宮からの出血や頭痛などが報告されていますが、重大なものはないとされています。

悪用や乱用されるおそれがあるなどとして、日本国内では医師による処方が必要で薬局では購入できないため、支援団体は、夜間や休日ですぐに受診できなかったり、性被害に遭って受診をためらったりしているうちに妊娠し、中絶手術を余儀なくされる人も少なくないとして、薬局での販売解禁を求めていました。

医師処方箋なしで薬局購入 海外では

厚生労働省の専門家の検討会で示された資料によりますと、海外ではおよそ90の国や地域で、医師の処方箋がなくても薬局などから購入できるということです。

また、購入にかかる費用はイギリスやアメリカなど7か国のデータでは、日本円でおよそ6000円以下ですが、日本では平均でおよそ1万5000円となっています。

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