ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. ちばWEB特集
  3. エアージャパン就航 路線・価格・サービスは?LCCとの違いは? 航空業界新戦略

エアージャパン就航 路線・価格・サービスは?LCCとの違いは? 航空業界新戦略

  • 2024年02月09日

2月9日、ANAホールディングスの子会社「エアージャパン」の成田とタイ・バンコクを結ぶ路線が就航した。航空会社は主に、全日空や日本航空のような「フルサービスキャリア」と、低価格が支持されるLCC=格安航空会社に分かれるが、この会社はそれぞれの強みを取り入れた“第3ブランド”だという。今、航空業界ではこの“ハイブリッド化”の動きが相次いでいる。航空会社の狙いを取材した。

エアージャパンは“第3ブランド”

エアージャパンの機体

「フルサービスキャリアでもLCCでもない。我々は“第3ブランド”です」。2月6日、成田空港の格納庫で「エアージャパン」の機体が公開された。ANAグループのエアージャパンは、中距離の国際線を展開する低価格の新ブランド。2月9日から成田とタイ・バンコクを結ぶ路線が就航した。

2月6日の初号機初公開イベント

コロナ禍以降、航空業界では、フルサービスキャリアを支えていたビジネス需要が激減。また、短距離路線を中心としたLCCも飽和状態の中、各社苦戦を強いられた。そこで、より観光需要に特化しつつ、LCCとのサービスの差別化を図ろうというのが「エアージャパン」だ。運賃は、フルサービスと比べると割安になる一方、LCCよりは高めの設定になるという。

ターゲット層は、東南アジアのインバウンド。東南アジアから日本を訪れる観光客は増加傾向にあり、特に今回の就航先であるタイは、コロナ前の2019年の日本への観光客数が120万人を超えている。この需要を取り込もうと、こだわったのは「和」のイメージを打ち出した機内だ。

会社によると、機内の座席はすべてエコノミークラスだが、前後の間隔は32インチと、フルサービスの会社と同程度の広さとなっている。

客室乗務員の制服

客室乗務員の制服は、和服の雰囲気を取り入れたデザイン。腰の部分の「結び」や「重ね」がポイントだという。

機内食

機内食も和食をベースとしたものとなっている。手前のものはチキン南蛮弁当。このほか、おむすび弁当や親子丼など、近年人気が高まっている日本食を取り入れている。一番人気は親子丼だという。こうした「和」のイメージにこだわり、会社では将来的に利用客の7割を外国人にしたいとしている。今月22日にはソウル線、4月にはシンガポール線に就航する予定だ。

峯口秀喜
社長

「新たな価値を創造し、日本らしさにこだわってブランド作りをしてきた。中距離路線なので、快適に過ごせる機内が強みだと考えている。東南アジアの方々にとって、日本に行くならエアージャパン、というブランドにしていきたい。徹底的に日本にこだわって、エッジを立てて進めていきたい」

JALグループも“新戦略”

一方、日本航空グループも、すでに新たな戦略の航空会社を立ち上げている。2020年に就航した「ジップエア」だ。

ジップエアの機体

会社によると、それまで、グループの中では東南アジアや北米といった中・長距離の路線は日本航空が担い、LCCは中国や韓国などの短距離の路線が中心だった。「ジップエア」は新たに低価格の中・長距離路線という分野を開拓する狙いで、現在、東南アジアと北米を中心に9路線を展開している。

ジップエアのフルフラットシート

長時間の移動の快適性を上げるため、やはり座席の間隔を広めに取っているほか、180度倒すことができるフルフラットシートも設けている。この座席も、価格はフルサービスの同等の座席の半分以下に抑えているといい、路線によってはこの座席から先に予約が埋まることもあるという。また、小さな子どもがいる家族連れの旅行の需要を取り込もうと、6歳以下の子どもは低額で乗れるような運賃を設定した。

西田真吾
社長

「運賃を安くすませて品質を犠牲にするか、その逆かではなく、『ちょうどいいもの』を作るというのが我々のコンセプト。従来のLCCを超えて違うモデルを作っていると思っている」

専門家“さらに競争激化も”

航空業界に詳しい桜美林大学の戸崎肇教授は、こうしたフルサービスとLCCの中間的な位置づけとなる航空会社の登場を「ハイブリッド化」と表現する。

戸崎肇 教授

「座席が狭く安い価格でたくさんの客を乗せる従来型のLCCモデルだと、移動が体の負担になる。それなら多少高くても高い品質のサービスを受けられる航空会社を選びたいという需要を取り込もうとしている」

「経済発展を続けている東南アジアはいわばドル箱で、訪日客も増えているので、インバウンド需要を狙うのは当然だ。東南アジアでは従来型のLCCが一般的で、同じような業態では新規開拓は難しい。日本の航空会社はサービスの品質も評判が高く、その点で差別化していくことが大切だ」

そして今後の航空業界については。

戸崎肇 教授

「コロナ禍以降、従来型のLCCは、かなり苦戦を強いられた。一方でフルサービスの会社も、今後はコストダウンを避けられない。そうなると、両方のビジネスモデルで差別化を図る動きが見られるようになり、結果的に『ハイブリッド』のサービスを提供する会社になっていく可能性もあり、さらなる競争の激化が予想される」

  • 武田智成

    千葉放送局成田支局記者

    武田智成

    2023年8月に成田支局に異動。現在は成田空港でエアラインなどを担当。

ページトップに戻る