「あなたの着ているその服が、野菜を作る肥料になります」?
大量に生産され、廃棄されてしまう衣服。実は、新しい資源としてリサイクルする動きが進んでいます。服から「紙」や「燃料」、さらには「肥料」にも。ファッションと環境について学べる新しい施設を取材しました。
(千葉放送局記者 渡辺佑捺)
(※2024年2月1日に一部の表現を修正しました。)
木更津市にあるアウトレットモールのそばに6月8日にオープンした「KISARAZU CONCEPT STORE」。大手の不動産会社が、衣服の新たなサイクルを生み出そうと手がけたものです。
ここで取り扱う衣服や雑貨は、長期間売れ残った商品や、小さな傷や形の違いで流通されにくい規格外品などです。開設した不動産会社が、廃棄される前に買い取って定価よりも安く販売しています。
商品はブランド別ではなくテーマや色などで分けて陳列し、訪れた人がふだんは手に取らないようなブランドにも触れられるように工夫されています。
ファッション業界の社会課題として、余剰在庫の問題などがありますが、そういった課題に対して新しい服のサイクルをつくりたいと思い、この施設を企画しました。
この施設がつくられた背景には、大量の衣服が生産され、廃棄されてしまうという世界的な課題があります。
こちらは、廃棄された衣服の山。南米チリの砂漠には、世界中の使われなくなった衣服が捨てられている場所があります。
環境省によりますと、国内では年間およそ50万トンの衣服がごみとして廃棄されているといいます。
この施設では、衣服のリサイクルの取り組みを紹介する「FACTORY LAB」というスペースも設けています。
ここでは、衣服をつくるときに出る生地のくずなどを紙に再生させる企業の取り組みが紹介されています。
また、服飾を学ぶ学生が使ったあとの布などを原料に燃料をつくる大学の研究も紹介されています。
また、東京・港区にあるアパレル企業では衣服を回収して肥料を作っています。回収した衣服を細かい繊維状にし、もみ殻などの有機物を混ぜて発酵させると肥料になるのです。
作られた肥料は現在、京都にある契約農家で使われています。要らなくなった衣服をこの施設に持ってきて回収してもらうとクーポン券となり、作られた野菜と交換できる取り組みも行っています。
また、実際に肥料を作る過程の一部を体験できるコーナーも。細かい繊維状になった衣服ともみ殻や米ぬかなどの有機物を混ぜる作業ができるよう、用意されています。
ただ衣類を回収するだけではなく、「食」につなげていくという新しいファッションサイクルや、大量廃棄される衣類から新しい資源を作ることが環境問題の解決につながっていることを身近に感じていただけたらと思います。
この施設は、入場料が大人は1人300円、中学生以下は無料。入場料のすべてと服を販売した収益の一部が、施設内で紹介している企業や大学に協賛金として渡されるということです。
楽しい買い物体験をしていただきたいというのが一番の思いですが、買い物を通じてファッション業界が抱える課題に目を向けていただきたいと思います。
「誰にも袖を通してもらえなかった衣服が、もう1度手に取ってもらえる場所にしたい」。この施設を企画した担当者の言葉です。このコンセプトに興味を持って取材をしましたが、そうした余剰在庫の問題だけでなく、どうしても売れなかったり着られなくなったりして捨てられる衣服についても学べる施設でした。衣服から肥料を作っている企業の社長はもともと大手アパレル企業に勤めていて、そのころから大量に処分される衣服について問題意識を持っていたそうです。これまで当たり前だったサイクルを見直し、捨てられてしまう衣服に光を当て、新しい資源に生まれ変わらせる取り組みに触れ、ワクワクしました。