都会の中にぽっかりと空いた四角い水辺。習志野市の谷津干潟です。渡り鳥の中継地として、湿地の保全に関する「ラムサール条約」に登録されてから、今年で30年を迎えました。どうして都会の真ん中に干潟が残されたのか。どのような自然が残っているのか。歴史を振り返りながらご紹介します。
(千葉放送局 千葉美穂・岡本基良)
谷津干潟は、広さ約40ヘクタールの天然の干潟で、都会にありながら、シギ類やチドリ類といった渡り鳥の飛来地であることなどから、1993年、国内の干潟として初めて「ラムサール条約」に登録されました。6月10日、登録30周年を迎え、2日間にわたってイベントが開かれました。
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千葉 NEWS WEB「谷津干潟 ラムサール条約登録30年で記念式典」
自然観察センターでは、6月10日と11日の2日間にわたって、ジュニアレンジャーによる干潟の生きもの案内や、干潟に親しむ展示、工作体験など、さまざまなイベントが開かれ、子どもたちをはじめ、たくさんの人でにぎわいました。
淡水池では、カルガモが子育ての真っ最中。ときどき、ヨシの陰からヒナがかわいらしい姿を見せてくれました!センターの中から観察することができ、子どもたちから歓声があがっていました。
谷津干潟があるのは、習志野市の南部。
南側にはJR京葉線と東関東自動車道が走り、東側には県立津田沼高校、西側には船橋競馬場、北側には住宅地や公園、商店街などが広がっています。
いかにも人工的に区切られた四角い水辺ですが、実はここは天然の干潟なんです。
かつての千葉県の東京湾沿岸は、アサリやハマグリがとれる干潟が広がっていたといいます。
しかし、高度経済成長期に県の主導で東京湾沿岸の各地で埋め立ての計画が進み、習志野市の海辺も埋め立て工事が一気に進みます。その中で、現在の谷津干潟のエリアは大蔵省(当時)の管轄だったことなどから、埋め立てを免れたとされています。
その後、2本の水路だけで1キロほど離れた海とつながる珍しい干潟となりました。
その後、渡り鳥の飛来地であることなどから、1993年に北海道釧路市で開かれた湿地の保全に関する「ラムサール条約」の締約国会議で、国内の干潟として初めて登録され、現在に至ります。
谷津干潟の周辺で、1年間に確認される野鳥の種類は110種以上にのぼり、四季を通してさまざまな鳥に出会うことができます。また、世界の北と南を行き来するシギ・チドリ類にとって、谷津干潟は、長い渡りの途中に羽を休め、虫などを食べてエネルギーを補給するために、なくてはならない貴重な「中継地」です。
メダイチドリ
つぶらな瞳が愛らしい。5月 繁殖に向け羽の色が濃いオレンジ色になっている様子。
セイタカシギ
その名のごとく、足がスラリとのび背が高く見えるのが特徴。1本足で立ってお休み中。
キアシシギ
谷津干潟には、去年まで、同じ個体が12年連続で飛来し観察記録を更新中。しかも2羽も!確認されているのは毎年7~8月、今年もやって来てくれるでしょうか。(2011年 調査のために付けられた標識が目印)
カワセミ
瑠璃色に輝く美しい羽が特徴。タイミングが合えば、水にダイブして魚をとらえる様子が観察できるかも。写真は幼鳥。
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