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千葉・松戸の劇団こぐま座 コロナ禍、盗難 窮地を救ったのは

  • 2022年03月28日

ことし1月、千葉県松戸市にある人形劇団「劇団こぐま座」からトラックが盗まれる事件が起きました。コロナ禍で厳しい状況が続く劇団を襲った悲劇。ピンチを救うきっかけとなったのは劇団が発信した1件のツイートでした。(千葉局 大溝浩カメラマン)

コロナ禍で公演が激減!

劇団こぐま座

松戸市に本部を置く、ぬいぐるみ人形劇団「劇団こぐま座」。創立から52年の長い歴史を誇っています。全国各地の幼稚園や保育園などをまわり、多い年には年間200か所以上で公演を行ってきました。しかし、この2年間はコロナ禍で公演の依頼が激減。例年の2割ほどに落ち込み、厳しい経営が続いています。

 

次々キャンセルになった公演
山本重男 代表

震災のときにも一時、仕事が激減しましたけど、あのときは2、3か月で元に戻りました。こんなに長い間、公演がなくなるのは初めてです。だんだんキャンセルが増えるにつれて気持ち的に悲壮感が漂ってきて、これは大丈夫なのか?と。

さらに追い打ちをかけた「あの事件」

年が明けても事態は好転せずに迎えた今年1月のある日、劇団をさらなる悲劇が襲います。外出から戻った代表の山本さんが駐車場を見ると、確かにそこに止めていたはずの公演用トラックが、ない!不在中に何者かによって盗まれていたのです。劇団所有のトラックは1台だけ。しかも荷台には舞台で使う道具や衣装を満載していました。あのトラックが無ければ公演ができないと、山本さんは目の前が真っ暗になったそうです。

劇団を救ったのは1件のツイート

「拡散希望」と書かれた1件のツイート。山本さんの息子が、わらにもすがる思いで発信しました。すると事態は大きく動きます。劇団のツイッターをフォローしていたファンが事件を知って、さらにリツイートしてくれたのです。特徴あるトラックの写真は、瞬く間に全国へと広がりました。

トラック発見!しかし・・・

茨城県鉾田市で見つかったトラック
スプレーで消されたこぐま座のマーク

そして2日後。ツイートやニュースで事件を知った人が、隣の茨城県内で似たトラックを見かけたと警察に通報。その結果、容疑者が逮捕されてトラックも見つかりました。幸い、積んであった荷物は無傷で見つかりましたが・・・。肝心のトラックはエンジンが壊されて走行できない状態でした。側面に描かれていた劇団の人気キャラクター「コロちゃん」マークも無残な姿に・・・。それを見た劇団員はショックのあまり言葉にならなかったと言います。

広がる温かい支援の輪

「もはやこれまでか」。失意に沈んでいた劇団に、窮状を知った全国の人たちから応援のメッセージ、そして支援金が次々に寄せられました。支援金は約700件、650万円にも。また、走れなくなったトラックを松戸市まで無償でレッカー移動してくれる会社も現れました。大きく広がった温かな支援の輪に、山本さんは決意を新たにしました。

埼玉の会社が無償でトラックを松戸まで運んでくれた
寄せられた応援のメッセージ
山本重男 代表

「子どもたちのためにこれからも頑張って下さい」というメッセージが非常に多かったです。一時は心が折れかけていたんですけども、皆さんから頂いた応援メッセージで、なんとかやれるんじゃないかと

さらにうれしい申し出が

左:引っ越し会社 文字放想社長
右:劇団こぐま座 山本重男代表
 

ただ、代わりとなるトラックを準備できる見込みはありませんでした。そこにうれしい知らせが届きます。複数の会社が、中古でよければトラックを寄贈したいと声をかけてくれたのです。山本さんは最初に連絡をくれた大手引っ越し会社の申し出を、ありがたく受けることにしました。

文字放想(もんじ・ゆきお)社長

僕もトラックを盗まれた事があるので気持ちがわかるというか、悲しい気持ちになって。売却予定のトラックがあったので差し上げようと

はじける子どもたちの笑顔

3月、埼玉県蓮田市の幼稚園から待望の公演依頼が届きました。休演が続いていた劇団にとって久しぶりの依頼です。長引くコロナ禍で我慢を強いられていた子どもたちも楽しみでたまりません。当日、園内の会場にはマスク姿の園児がたくさん集まりました。

この日の公演は「コロちゃんのピクニック」。こぐま座が創立当初から演じ続けてきた大切な演目です。道で迷ったコロちゃんのお友達ピッピちゃんを悪いオオカミが狙います。そのピンチに、コロちゃんと見ている子どもたちが協力してオオカミをやっつけるというストーリー。コロナ前は子どもたちが木の実を投げたりするシーンがありましたが、現在は静かに座って応援を送ります。それでも、コミカルなぬいぐるみの演技に子どもたちは大喜び。会場いっぱいに笑顔が広がりました。

山本重男 代表

公演が終わった後に子どもたちの笑顔を見て、これは続けていこうと。厳しい状態が何年も続いていますが、子どもたちに生の舞台を見てもらえるような活動ができるよう、これからも頑張りたいと思います

まだまだ終わりの見えないコロナ禍ですが、これからも子どもたちに笑顔を届けたい。ぬいぐるみ人形劇団「こぐま座」、復活を決意した春です。

取材後記

コロナ禍で様々な行動が制限されている状況で、演劇活動を維持していく難しさを改めて感じました。SNSがきっかけとなって支援の輪が大きくひろがり、今後の活動を続けていく支えになったことは本当に素敵なことだと思います。これからも「劇団こぐま座」の公演を見た子どもたちに、みんなで笑いあった楽しい思い出が残って欲しいと思いました。

  • 大溝浩

    千葉放送局カメラマン

    大溝浩

    千葉放送局には6年前から勤務しています。梨とこぐま座のごんちゃんが好き。

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