鎌倉時代に建立された千葉県市川市の中山法華経寺で、現代アートの作品展が開かれています。歴史ある場所に新進気鋭のアーティストによる“攻めた”作品が飾られ、訪れた人たちの人気を集めています。(千葉局/記者 金子ひとみ)
この作品展はアートでまちを盛り上げようと市川市などが初めて企画したもので、鎌倉時代の末期に建立された中山法華経寺が会場となっています。
寺の敷地内には、現代アート作家6人の絵画や立体の作品が3月27日まで展示されています。
参道には、千葉県木更津市出身の大川友希さんが、地域で集めた古着を使って住民と一緒に作った高さおよそ2メートルの「のぼり」108本が飾られ、色あざやかな布が春風になびいていました。ハンドタオルや子ども服、手ぬぐいから変身を遂げたものもありました。
学生時代、古着屋でアルバイトをした際に、買い取りと販売の両方を行ったことで、誰かにとって不要なものが循環することで別の人には価値あるものに変わっていくおもしろさに気づきました。この地域のみなさんが、昔、服とともに過ごした時間を思い出しながら作品づくりを楽しんでくれていたと思います。ポケットやリボンがついているのもありますよ。
茨城県取手市に住む東弘一郎さんが、地域で不要になった5台の自転車を素材にして作った立体作品は、国の重要文化財に指定されている「祖師堂」に向かって空中で自転車をこいでいるような非日常の感覚を味わってほしいと作られたものです。先端にあるペダルを回すと、すべてのタイヤが回る仕組みになっています。
不要な自転車を譲ってもらった先で、「子どもが生まれるのを機に、車を買って、自転車に乗らなくなったけど、捨てるのはもったいないからしばらく置いてました」という話を聞いて、それぞれの自転車にストーリーがあるんだなあと、その過程がおもしろかったです。子どもから高齢の方まで、幅広い年代の方が乗っていってくれます。
山形県に住む大槌秀樹さんは、2021年12月から3か月間、市内の空き店舗となっている場所で寝泊まりして制作活動を行いました。展示会場の中山法華経寺に早朝通い、勤行の様子やろうそくのともしびを融合した映像作品を完成させました。
この地域に滞在し、歩く中で、勤行を取り上げようと考えました。多くの人が寝静まっている間にも活動をしている人たちがいる、祈っている人たちがいる、これを記録したいと定点で撮りました。こういう現代美術を「受け入れがたい」と思う方もいるかもしれませんが、ぜひ気楽にまず見てほしい。
この作品展を訪れた人たちからは、この地域の活性化につながることを期待する声があがっていました。
いつものお寺が全然違う雰囲気になっていて、面白い取り組みだと思う。頼もしい感じもしますね。
このまわり、最近、ちょっと元気がないから、こういうのをきっかけにして、もっともっと活気が出てほしい。
短くない記者人生を送っていますが、現代アートの作家さんたちへの取材は初めてでした。天才的なひらめきから孤独に作品を作るとがった人たちなのだろうかと勝手に想像していましたが、違いました。地道な活動で、地域住民と関わりながら発想を得て、作品を作り上げていました。身近にいそうな人たちで、私の中で現代アートへの敷居が一気に低くなりました。人への直接取材は大事だなあと改めて思いました。