花山の宝「フサスグリ」

栗原市花山地区で育てられている「フサスグリ」という果実があります。収穫の時期は6月下旬から7月上旬のわずか2週間ほどです。地元ではジャムやお菓子の加工品などとして親しまれています。昔から地元の特産ですが、今では高齢化などを理由に生産者は数人となりました。希少なフサスグリを守ろうと大切に育てている女性を取材しました。

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噂のフサスグリが育てられているのは栗原市の西端、栗駒山の麓に位置する花山地区。美しい自然が広がる山間地域です。

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生産者の一人、千葉和子さん(75)は15年ほど前からこの場所で栽培を行っています。

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こちらがフサスグリです。ヨーロッパ原産の果実で、日本では青森や北海道で多く生産されています。真っ赤でつやつやと透き通る美しさに感動しました。千葉さんは早朝から収穫を行うことが多く、朝露で濡れて光が当たるととてもきれいだそうです。宝石のように輝く姿から「花山ルビィ」とも言われるほどです。

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収穫体験もさせてもらいました。丁寧に手作業で実をとっていきます。はじめは上手にとれたのですが…。慣れてきたころに力を入れすぎ実をつぶしてしまいました。
千葉さんはこの時期1日に2時間かけて5キロを収穫。柔らかい実が傷つかないように気を付けながら収穫しています。すべて手で摘み取る地道な作業です。

千葉和子さん
「木1本分の収穫をし終えて後ろを振り返るとまだ赤い実がたくさん!果てしない作業です。」

 

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千葉さんが大切に育ててきたフサスグリ、気になるお味は…。口に入れた瞬間、思わず出てきた言葉は「すっぱい!!!」。頬がきゅっとなるほどの酸味があり、すっきりとする甘さもありました。

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じめじめとした暑さが続く収穫の時期。千葉さんもフサスグリの実を時々口にしながら収穫をするそうです。「おいしい」とはじける笑顔の千葉さんの表情が印象的でした。

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花山地区では地域おこしの一環として昭和50年ころからフサスグリの栽培が始まり、生産者が100人ほどいた時期もあったといいます。しかし、収穫の時期が1年のうちでわずか2週間と短いことや、収穫の手間がかかること、そして高齢化も影響し今は数人となりました。千葉さんは、昔フサスグリのジャムを食べたときのおいしさを忘れられず、多くの人が生産から離れると聞き、苗を受けついで栽培を始めました。「今までやってきたのにもったいない。他にはないものであって花山のブランドにしたい」と考えました。

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千葉さんは収穫したフサスグリを自ら加工して地元の道の駅などで販売しています。特にこだわって作ってきたのは「ジャム」です。火加減など研究を重ねて、フサスグリ本来のきれいな色をそのまま残した理想のジャムにたどり着きました。

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フサスグリジャムは、パンに塗ったりヨーグルトにのせて食べるのもいいですが、千葉さんのイチオシが、「フサスグリジャムの牛乳割」です。お好みの量のジャムに冷やした牛乳を入れるだけで完成です。(はちみつを入れると、さらに良いとのことです。)すっきりとして特に夏の時期にはぴったりです。

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取材の日、別な畑に収穫を手伝いに来ている人がいました。高齢の畑の持ち主に変わって収穫していたのは栗原市内の菓子店の鈴木政行さんです。「せっかく花山の人たちが育てているのでお菓子にして町おこしにしたい」とお菓子の材料にしています。

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フサスグリのきれいな色とさわやかな酸味を生かしたお菓子を作っています。フサスグリは酸味の中にちょっとした苦みもあるとのことで、砂糖を加えると味にさらに広がりが生まれ、どんなお菓子にも合わせやすいのだそうです。

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出来上がったのは、フサスグリのペーストを挟んだ焼き菓子と、マシュマロです。栗原市築館にあるお店と、花山の道の駅でも購入することができます。

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「お菓子を通じて花山のフサスグリをたくさんの方に食べていただきたい」と鈴木さんも話していました。

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千葉和子さん
「フサスグリと言ったら花山と思ってもらえるように頑張りたい。」

花山地区の希少なフサスグリは地元の人々の手によって輝きを放っていました。

【取材・キャスター:佐々木成美】

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