中止の"すずめ踊り"合成動画作りました

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カメラマン 名須川 可帆

宮城県に対する緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの影響でさまざまなイベントやお祭りが中止となり、いまだ先が見通せない状況が続いています。
毎年5月に行われ、90万人が訪れる仙台市の一大イベント、「仙台青葉まつり」も
ことしの開催を断念しました。

色鮮やかな扇子とそろいのはっぴで中心部を踊り歩く「仙台すずめ踊り」の華やかな姿を見ることが出来ず、寂しく感じた人も多かったと思います。

◇きっかけは“おうちですずめ踊り”の募集

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そんな中、祭りの事務局があるユニークな取り組みを行いました。“おうちですずめ踊り”と題して自宅で踊る様子を撮影した動画をSNSに投稿してもらうよう呼びかけたのです。

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「一生懸命練習してきた踊りを披露する場をなんとか作りたい。
そして、踊ることでみんなが元気になってほしい」。
取材に伺った事務局の人たちからはすずめ踊りへのなみなみならぬ熱い思いを感じました。

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◇NHKも協力 みんなで一緒に踊る動画を

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自粛生活が続く中で、せめてネットの世界ににぎやかな場所を作りたい。
そんな事務局の思いに触れるうち、私たちも何か協力したいと思うようになりました。
そこで考えたのは、1人1人が踊っている映像を通りの映像と合成し、本来、開催されていれば
見られるはずだった活気あふれる祭りの様子を動画で作り出すことでした。
事務局に寄せられた動画は予想を上回る200本近く。その中から20人ほどに合成しやすいよう無地の背景を使った撮影をお願いしました。

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送られてきたのは精いっぱいに踊る姿や軽快にお囃子を演奏する姿。なによりその力強さが印象的な映像でした。
活気あふれた声や左右に飛び跳ねるステップ、扇子を使った羽ばたくような振り付け。大勢で踊っている姿しか見たことがなかった私たちは、一人一人がこんなに細かく全身を大きく使う動きをしているのかと驚きました。
みんなを通りに並べたら何倍のパワーになるのだろうとわくわくしながら作業を進めること数日。動画が完成しました。
お囃子の音色に合わせてみんなが一緒に踊る様子は圧巻で見ているだけで元気が出ます。
でも、そんな中で、ぜひ1人1人の踊りやお囃子にも注目して見てもらいたいと思います。
作業をしながら気づいたのですが、実は、みんなの踊りに一つとして同じ踊りはなく、それぞれが違う舞を踊っているのです。
先頭のきょうだいやその後ろの女の子もそれぞれ踊り方に個性が出ています。
子どもたちが大きな声で「それ、それ」と言いながらクルクル回りながら舞う様子は思わず笑みがこぼれます。
後半に出てくる女性陣はさすがベテランの風格です。

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この個性豊かな踊りのバランスを考え、合成動画では、まずは子どもたちの元気な舞いから始まり、中盤はしっかりとした大人たちの舞いを見せ、そして最後は、バラバラにしか踊れない今だからこそ、全員が集まり大人数で踊る楽しさを伝えられるようにしました。

 

◇“来年は青葉のもとで”の願いを込めて・・・。

全体の迫力とそれぞれの個性。今回制作した合成動画は、本来の“すずめ踊り”が持つ魅力を少しは楽しんでもらえたはずです。しかし、本物の祭りの迫力にはやはりかないません。

ことしはみんなで踊ることができませんでしたが、来年はこの映像のように定禅寺通りの青葉の下で大好きなすずめ踊りを踊る姿が見られることを楽しみにしています。