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NHK「マイあさ!」では、愛好家だけではなく、通勤・通学・旅行・出張といった「ふだん使い」に役立つ視点で、日本の高速鉄道の歴史「高速鉄道史」についてお伝えしています。
今回のテーマは、令和6年春のダイヤ改正による「変化」。
高速鉄道史を取材している三上弥(みかみ・わたる)アナウンサーの報告です。

  • 掲載内容は、「マイあさ!」で放送した令和6年3月14日(木)時点の情報です。

【解説】
三上:三上 弥(ニュース・報道番組編集責任者|アナウンサー)


――令和6年3月16日・土曜日、北陸新幹線・金沢駅から先の延伸区間が開業します。まず、ポイントをおさらいしてください。

三上:
新たに開業するのは、石川県の金沢駅と福井県の敦賀(つるが)駅の間です。能登半島地震による開業日の変更はありません。
高速鉄道史の視点では、元日(がんじつ)に発生した最大震度7の地震の翌日・1月2日(火)には、北陸新幹線と上越新幹線が全線で運転を再開したことが大事です。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震、東日本大震災と比べると、路線そのものが受けた被害の規模・程度の違いがあるとはいえ、被災地支援に当たる人たちの行き来にも役立つ、迅速な対応となっています。

――石川県の金沢駅から先、福井県までの開業日が近づいた最近は、各時間帯のニュースでも、関連の動きを伝えていますね。

三上:
新幹線が新たに停車する駅は、▼石川県の小松と加賀温泉、▼福井県の芦原(あわら)温泉、県庁所在地にある福井、越前たけふ、敦賀です。旅で北陸を元気にしようという「北陸応援割」の活用で観光客を呼び込もうとする動きや、各地の歓迎行事や延伸・開業にちなんだ催しなどに、期待感があらわれています。
JR西日本の長谷川社長は、きのう(3月13日)の記者会見で、開業後は「北陸応援割」などと合わせ、観光需要を喚起して、能登半島地震からの復興につなげていきたいという考えを示しました。
「北陸応援割」の詳しいことは、観光庁のウェブサイトに掲載中です[=放送日時点の情報]。

――鉄道関連のニュースを伝えていると、最近は、昼夜を問わず何としても鉄道を動かすというよりも、計画的に対応する事例が増えてきていますね。

三上:
高速鉄道も例外ではありません。
象徴する動きのひとつが、上越新幹線下りの最終列車の時刻繰り上げ、つまり、早めるという動きです。
▼東京発新潟行きの最終列車「とき」ですと、現在の東京駅午後9時40分発が、3月16日(土)からは9時20分になります。
▼東京発高崎行きの最終列車「たにがわ」は、東京駅午後11時発が20分早まって、10時40分に変更されます。

――20分早まるのですか。新潟県や群馬県から仕事や旅行、プライベートで東京に来た人が帰るとき、この情報を知らないと、乗り遅れて都内に足止めとなる人も出そうですね。

三上:
下り最終の「とき」や「たにがわ」に乗れば当日中に在来線に乗り継げるダイヤになっていると発表しているとはいえ、利用者の立場では、20分繰り上げた分、夜の駅で初めて気づいて困ったり、東京の滞在時間が短くなったという受け止めになったりするでしょう。
一方、安全運行を図る鉄道会社の立場もあります。東京発・下りの「とき」・「たにがわ」の最終列車の時刻を早める理由について、鉄道会社は「大規模な地震に備えた強化対策や、設備の計画的な老朽対策工事を着実に実施するため」と発表しています。工事の担い手不足が厳しさを増しているという背景もあって、夜間に十分な工事時間を確保することで、作業員の働き方改革にもつなげたいということです。

――令和6年3月16日(土)のダイヤ改正では、これまで広く利用されてきた制度もなくなりますね。

三上:
在来線の特急と新幹線を乗り継ぐ場合などに適用されていた「乗継割引制度」が廃止されます。在来線の特急料金などが半額になる制度です。国鉄だった昭和40年代以降、「乗継割引制度」は広く利用されてきました。新幹線網がいまほど発達していなかった時代に登場した制度です。
この制度は、すでに、JR四国と九州ではありません。3月16日(土)のダイヤ改正では、JR北海道・東日本・東海・西日本でも廃止されるので、新幹線と在来線の特急を乗り継ぐときには、在来線の特急料金を「割引なしの定額」で支払うことになります。

――北陸新幹線延伸で乗換駅になる敦賀駅で、特急の「サンダーバード」や「しらさぎ」と乗り継ぐ場合にも当てはまりますか。

三上:
当てはまります。敦賀駅で新幹線と「サンダーバード」や「しらさぎ」を乗り継ぐ際、特急料金の割引はありません。このほか、新函館北斗や新青森、米原、新潟、金沢、長野、静岡、名古屋など、これまで「乗継割引」が適用されていた駅でも同様に、在来線の特急料金の割引がなくなります。

――利用者にとっては「負担増」、鉄道会社にとっては「増収」につながる動きです。当たり前だったことがなくなるといいますと、たばこを吸う人・喫煙者(きつえんしゃ)にとっては気になる動き、一方、吸わない人にとっては助かる動きもありますね。

三上:
東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線の「喫煙(きつえん)ルーム」がなくなります。

――新幹線の座席では、いまもたばこを吸えませんから、車内は全面禁煙(きんえん)になるということですね。

三上:
「のぞみ」・「みずほ」・「ひかり」・「こだま」・「さくら」の車内では、喫煙(きつえん)を許されるスペースがなくなります。▼健康志向の高まりで受動喫煙(きつえん)を防ぐことや、▼以前と比べて喫煙者(きつえんしゃ)が減少傾向にあることが背景です。一方、東北新幹線などを運行するJR東日本は、すでに平成19年(2007年)、すべての新幹線を全面禁煙(きんえん)にしています。


三上:
今回お伝えした内容は、鉄道各社や行政機関などが公開している資料を丁寧に読み解いたものです。
ダイヤ改正では、便利になる事柄がある一方で、逆の動きや、それまでの常識が変わるということも珍しくありません。わたしたちの「ふだん使い」にどう役立つかという視点で、今後も「高速鉄道史」をお伝えします。


三上 弥[みかみ・わたる]

三上 弥|ニュース・報道番組編集責任者|アナウンサー
▼NHKニュース・国会中継をはじめ、入局以来、報道分野の業務を中心に担当。
▼<災害>「熱海土石流」初動のニュース対応に当たったほか、「令和6年能登半島地震」の緊急報道では、元日の発生直後から、特設ニュースの編集責任者チームの一員として初動対応に当たった。
▼<交通>日本の高速鉄道の歴史・利便性について、取材や公開資料の分析を行ってきた。「新幹線開業50年」関連の報道や、寝台特急「富士・はやぶさ」東京駅出発下り最終列車の中継、特急「白鳥」最終列車や特急「踊り子」185系定期運用最終日の取材・報告なども担当した。

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【放送】
2024/03/14 「マイあさ!」

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