NHK静岡 三上弥アナ 最近の光景が「歴史」に 熱海 伊豆
- 2022年12月21日
三上 弥 NHK「現場のことば」第35回
185系 特急「踊り子」
NHK発! 鉄道150年 WEB特集
鉄道関連の映像は、
各時代を克明に記録しています。
最近の光景が、いわば「歴史」になる事例です。
185系特急「踊り子」
定期列車最終運行日
特急「踊り子」は、
伊豆半島の観光や生活に欠かせない列車です。
1年余り前の令和3年3月12日、
国鉄時代から40年近く走行した185系(ひゃくはちじゅうごけい)の特急「踊り子」、定期列車最終運行日の様子を熱海駅で取材しました。
熱海駅の改札付近には185系に感謝を示す黒板アート、
改札内の通路には、姿を消す185系『踊り子』のポスターが掲示されていました。
熱海駅ホーム午後1時20分、
下り最終の185系の特急となった「踊り子13号」が
到着しました。
熱海駅といえば、185系の切り離しや連結作業も、
名物の光景でした。
東京・神奈川県から伊豆半島に向かう下りは、
▼伊豆急下田に向かう編成と
▼修善寺に向かう編成に分割されたあと、
ふた手に分かれて終着駅に向かいます。
伊東経由の伊豆急下田行きが出発したあと、
丹那(たんな)トンネルを通る修善寺行きが
ホームを離れました。
沿線では、下りだけでなく、
上り最終の185系特急「踊り子16号」を見送る人たちの姿もありました。
185系とは
185系は、老朽化した急行・普通電車用の車両「153系(ひゃくごじゅうさんけい)」の後継として、
国鉄時代の昭和56年に営業運転を始め、
▼特急「踊り子」や「湘南ライナー」のほか、
▼東北・上越新幹線が東京都内に乗り入れる前に上野・大宮間を結んだ「新幹線リレー号」や、
▼都内と埼玉・栃木・群馬県などを結ぶ特急電車などに投入されました。
このうち、特急「踊り子」では、
昭和56年10月から39年半にわたって使用されました。
老朽化やダイヤ改正を機に、
185系は、令和3年3月12日の運用を最後に、
JRのすべての路線で定期列車から引退しました。
昭和・国鉄の「設計思想」
取材・交渉を進める過程で、
185系「引退」を前に、
伊豆箱根鉄道駿豆(すんず)線の修善寺(しゅぜんじ)駅で車内を撮影する許可が特別に出ました。
185系には、昭和の国鉄の「設計思想」が表れています。
特急のほか、通勤電車にも使える車両で、
窓は開け閉めできます。
車体には、デビューした昭和56年の銘板が取り付けられていました。
「伊豆の踊子(おどりこ)」をイメージしたヘッドマークともお別れです。
「踊り子」という名称は、公募で決まりました。
ノーベル文学賞を受賞した川端康成の名作「伊豆の踊子」の影響を受けているのは、言うまでもありません。
185系が姿を消したことで、
このヘッドマークともお別れになりました。
特急「踊り子」は、現在、後継車両のE257系で(イー・にーごーななけい)運行されています。
NHK発! 鉄道150年
「その時」が「歴史」に
今回紹介した画像は、
令和3年3月12日の放送から引用しました。
「NHK発 鉄道150年」の一環として、
令和4年10月21日にも、静岡県向けに放送した内容です。
「185系踊り子」定期運用最終日、
NHKは下りの最終列車を上空からも撮影して、
中継のように「NHK NEWS WEB」で同時配信しました。
熱海駅到着直前の映像を見ると、
画像の下部にわずかではあるものの、
熱海市の伊豆山地区が映っています。
185系特急「踊り子」13号は、
伊豆山トンネルなどを抜けて熱海駅に到着するため、
偶然、この画角の空撮が残っていたのです。
熱海市では、
「185系の特急『踊り子』」が姿を消してからおよそ3か月半後の令和3年7月3日に、
伊豆山地区で土石流が発生しました。
つまり、記録されていたのは、
「熱海土石流」が発生する少し前の様子ということになります。
「最近」のように感じる時期の映像でも、
「歴史」になる瞬間を記録していることもあるという事例です。
令和3年
3月12日(金) 「185系踊り子」定期運用最終日
7月 3日(土) 熱海市伊豆山地区で 土石流発生
新型コロナ感染拡大期の
貴重な記録
令和3年3月前半といいますと、
「密集」などによる新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、報道各社や鉄道愛好家が一斉に撮影する機会はほとんど設けられなかった時期です。
このため、40年近く伊豆半島で営業運転していた車両や光景を記録に残すことが実現したのは、結果として、貴重な機会となりました。
長期間「現役」だった車両なので、鉄道愛好家だけでなく、旅行・通勤・通学・出張などで利用した人はかなりの数にのぼります。
東北・上越新幹線が都内まで開業していない時期には
「新幹線リレー号(上野-大宮)」にも投入されたので、おおむね40代より上の世代ではなじみのある人も少なくありません。
185系の塗装は、昭和57年に開業した東北・上越新幹線の初代「団子鼻」の200系と同じ色を使っているといえば、活躍した時期の長さが想起できると思います。
185系 昭和56年営業運転開始
▼昭和56年10月から令和3年3月12日まで
特急「踊り子」定期運用
▼東北新幹線 昭和57年6月23日開業 大宮発着
▼上越新幹線 昭和57年11月15日開業 大宮発着
185系は「新幹線リレー号(上野-大宮)」としても活躍
185系 引退後 の 特急「踊り子」
特急「踊り子」の後継車両は、
E-257(イー・にーごーなな)系です。
「踊り子」の定期列車に投入されたのは
令和2年3月14日でした。
令和3年3月12日までのほぼ1年間、
185系と257系が同時に運用されていたということです。
現在、東京・横浜と静岡県の伊豆半島を結ぶ特急「踊り子」は、E257系で運行しています。
令和5年1月 静岡 熱海
静岡県熱海市では、
冷え込みの厳しい日がある一方、
春を感じることのできる花を観賞することができます。
柑橘(かんきつ)も鮮やかです。
熱海市の「初島(はつ\しま)」を望むことができました。
心が落ち着く光景です。
最近の光景が「歴史」に
最近の光景が「歴史」に。
今回は、「鉄道150年」にちなんで、
放送に続いてWEB特集でも改めて取り上げました。
読者の方々に感謝申し上げます。
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