NHK 高速鉄道史 令和6年を見据えて

マイあさ!

放送日:2024/01/04

#インタビュー#鉄道#能登半島地震

NHK「マイあさ!」では、愛好家だけではなく、通勤・通学・旅行・出張といった「ふだん使い」に役立つ視点で、日本の高速鉄道の歴史についてお伝えしています。
今回のテーマは、「ことし・令和6年を見据えて」。
高速鉄道史を取材している三上 弥(みかみ・わたる)アナウンサーの報告です。

  • 掲載内容は、NHK「マイあさ!」で放送した令和6年1月4日(木)時点の情報です。

【解説】
三上:三上 弥(ニュース・報道番組編集責任者|アナウンサー)

新幹線

――まず、今回の「能登半島地震」で運休した北陸新幹線・上越新幹線について、最新の情報を伝えてください。

三上:
元日(がんじつ)に最大震度7を観測した「令和6年能登半島地震」で運休していた区間は、地震発生翌日の1月2日(火)に全線で運転を再開しました。被災地支援に入る人たちの行き来にも役立つ、迅速な対応です。
阪神・淡路大震災や新潟県中越地震、東日本大震災では、新幹線の路盤に甚大な被害を受けたため、発生からしばらくの間、被災地や県庁所在地に向かうこと自体が大変でした。
しかし、今回の能登半島地震では、東京から北陸新幹線の駅までは新幹線で行き来できるので、支援に向かう人や、被災した所から移動する人にとっては有効な交通手段になります。最大震度7の地震の翌日には、北陸新幹線と上越新幹線が全線で復旧したことがポイントです。元日の地震から4日目なので被害の程度はまだ分からないとはいえ、過去の巨大地震に比べると、迅速な復旧だといえます。

――その北陸新幹線は、再来月(令和6年3月)に延伸されますね。

三上:
3月16日・土曜日に、石川県の金沢駅と福井県の敦賀(つるが)駅の間が開業します。現時点(1月4日)で、能登半島地震による影響で開業日が変わるという発表はありません。
ダイヤはすでに発表され、鉄道各社のウェブサイトに掲載されました。東京駅と敦賀駅を結ぶ新幹線は、1日14往復です。内訳は、停車駅の少ない「かがやき」が9往復、「はくたか」が5往復となっています。新幹線が新たに停車する駅は、▼福井県では、敦賀のほか、越前たけふ、県庁所在地にある福井、芦原(あわら)温泉、▼石川県の加賀温泉、小松です。

――所要時間、つまり、どのくらいの時間がかかるのでしょうか?

三上:
最も速い「かがやき」は、東京・敦賀間を3時間8分、東京・福井間を2時間51分で結びます。東京・福井間では、金沢駅で乗り継ぐ現在のダイヤと比べて36分の短縮です。上野駅を発着する寝台列車が走っていた時代[寝台特急「北陸」や寝台急行「能登」・「越前」など]とは、全く異なるスピード感です。

――名古屋を中心とする東海地方や、関西をはじめとした西日本の人たちにとっては、北陸地方との行き来がどうなるのかも気になります。特急の「しらさぎ」や「サンダーバード」が、福井駅や石川県内までは行かずに敦賀駅発着・折り返しに変更されるということは聞いたことがあります。3月16日からはどうなるのでしょうか?

三上:
特急「しらさぎ」・「サンダーバード」と北陸新幹線は、いま(放送した1月4日時点のダイヤ)は金沢駅で乗り換えているものの、3月16日からは敦賀駅で乗り換えることになります。
北陸新幹線は、▼東京と結ぶ「かがやき」・「はくたか」に加え、▼福井・石川・富山の北陸各県を行き来する「つるぎ」を1日に25往復運転します。鉄道会社は、新幹線開業による速達効果と、敦賀駅のスムーズな乗り換えで所要時間を短縮する効果をうたっています。

――北陸新幹線の敦賀・福井延伸に関連して、どんな動きがありますか?

三上:
今後、沿線の各地で関連行事が行われるほか、大宮駅があるさいたま市は、先月(令和5年12月25日)、福井県と協定を結び、観光などの分野で連携することになりました。さいたま市大宮区にある鉄道博物館で行われた協定式では、福井県知事とさいたま市長が協定書に署名しました。
協定では、∇地域の魅力を発信するアンテナショップを開くことや、∇英語教育に力を入れているという共通点から、お互いのカリキュラムなどを共有して、充実を図ることなどが盛り込まれています。

――北陸新幹線延伸をきっかけに、さまざまな交流が生まれそうですね?

三上:
一方、各地で新幹線が開業・延伸すると常に生じる懸念として、並行する在来線を利用する人たちの利便性・使い勝手についても配慮することが欠かせません。地元の通勤・通学など日常生活に欠かせない路線だからです。

リニア中央新幹線

――ここまでお伝えした北陸新幹線のほか、高速鉄道と言えば、NHK「マイあさ!」で継続的にお伝えしているリニア中央新幹線に関して、先月(令和5年12月)、新たな動きがありましたね。

三上:
リニア中央新幹線・品川-名古屋間の開業時期について、JR東海は、先月(令和5年12月)14日に開いた取締役会で、これまでの「2027年」を「2027年以降」と変更することを決定して、国に申請しました。国土交通省は、この計画を先月(令和5年12月)28日付けで認可したところです。

――ことし令和6年・2024年を基準にすると2027年はもう3年後。品川-名古屋間の開業時期として、その2027年に「以降」が加わったということですね。

三上:
静岡県が着工を認めず、鉄道会社は、これまでも「2027年開業は難しい」としてきました。この見解を、国に提出した計画にも「正式に」反映させ、国が認可した状況です。
さらに、リニア中央新幹線・名古屋-大阪間については、先月(令和5年12月)18日、奈良・大阪・三重の3府県の知事や経済界のトップが奈良市に集まって、早期の開業を求める大会が開かれました。高速鉄道をめぐることしの動きとしては、リニア中央新幹線の建設がどのようになっていくのかも重要な論点と言えます。

「押さえておきたい」令和6年の動き

――このほか、「押さえておきたい」ことし・令和6年の高速鉄道の動きを教えてください。

三上:
▼九州新幹線西九州ルートで整備方針が決まっていない佐賀県の新鳥栖(しんとす)・武雄温泉(たけおおんせん)間について、先月(令和5年12月)28日、国土交通省と佐賀県との協議が行われました。佐賀県の南里(なんり)副知事は、「地元で議論して合意形成をはかる必要があると申し上げた」と述べ、根本的な議論が必要だとする考えを国に伝えました。
▼春のダイヤ改正が行われる3月16日・土曜日からは、山形新幹線に新型車両の「E8(イー・はち)系」が導入されます。最高時速300キロと、いまの「E3系」に比べて25キロのスピードアップです。
▼北海道新幹線では、∇新函館北斗から札幌までの延伸や、∇函館駅乗り入れをめぐる動きもあります。
いずれも、令和6年の高速鉄道史を見据えるうえで欠かせない視点です。


三上 弥[みかみ・わたる]

三上 弥|ニュース・報道番組編集責任者|アナウンサー
▼NHKニュース・国会中継をはじめ、入局以来、報道分野の業務を中心に担当。
▼<災害>「熱海土石流」初動のニュース対応に当たったほか、「令和6年能登半島地震」の緊急報道では、元日の発生直後から、特設ニュースの編集責任者チームの一員として初動対応に当たった。
▼<交通>日本の高速鉄道の歴史・利便性について、取材や公開資料の分析を行ってきた。「新幹線開業50年」関連の報道や、寝台特急「富士・はやぶさ」東京駅出発下り最終列車の中継、特急「白鳥」最終列車や特急「踊り子」185系定期運用最終日の取材・報告なども担当した。

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【放送】
2024/01/04 「マイあさ!」

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