「声帯のケアで健康を保つ!」③ ~声帯の老化は全身に影響~

24/04/03まで

健康ライフ

放送日:2023/11/29

#医療・健康#カラダのハナシ

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24/04/03まで

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【出演者】
角田:角田晃一さん(国立病院機構東京医療センター 人工臓器・機器開発研究部長)
聞き手:福島佑理 キャスター

高齢者は特に注意が必要

角田:
「声帯」がどの辺りにあるか、知らない人が多いと思います。ちょうど「のどぼとけ」、のどの真ん中辺りにあります。やわらかく伸縮にとんだ粘膜と筋肉から構成されています。左右にぶつかり合って振動します。

――今回は、「声帯の老化は全身に影響」です。前回までのお話で、声帯は声を出すことだけではなく、食べ物や飲み物を飲み込むことと密接なつながりがあり、声帯が老化すると飲み込む機能がうまく働かなくなる、ということでした。飲み込むことがうまくできなくなると、どのような影響が出てくるんでしょうか。

角田:
食べ物や飲み物をゴックンと飲み込む、そして、のどから食道に送る一連の動作を「えん下」といいます。
加齢や病気などで声帯の筋肉が衰えてしまうと、うまく飲み込むことができなくなることがあります。これを「えん下障害」といいます。
食べ物が誤って鼻に回ったり、空気の通り道の気管や、肺のほうに入ってしまいます。「誤えん」といいます。

――誤えんを起こしてしまうと、どのようになってしまうんですか。

角田:
水や食べ物や唾(つば)は、肺に入ってはいけない“異物”です。水や異物が気管から肺に入ってしまうと、肺では対応できませんから炎症を起こします。この炎症を起こすと「誤えん性肺炎」となります。
誤えん性肺炎の症状として、発熱、せき、たんが出て、呼吸も苦しくなります。何となく元気がないとか食欲がない、唾がたまったようなこもった声、呼吸に伴い首の辺りがゴロゴロ鳴る、などの症状も、誤えん性肺炎になりやすい特徴です。
厚生労働省の人口動態統計によると、2022年、令和4年に誤えん性肺炎で亡くなられた方は5万6,000人強で、死因の中で6番目に多い病気です。特に、高齢者の方には気をつけていただきたい病気です。

――特に、高齢者の方に注意が必要、ということなんですね。

角田:
高齢者の方が誤えん性肺炎になると、寝たきりになって、筋肉の低下などで日常生活がどんどん不可能になっていきます。筋力が落ちればさらに誤えんもしやすくなり、悪循環に陥っていきます。そうならないように、早くその誤えんの兆候を見つけて肺炎を予防することや、治療回復後も誤えんを起こさないように、えん下のリハビリなどが必要になります。

飲み込む動作の確認方法

――飲み込む動作がきちんと行われている確認方法はありますか。

角田:
はい。のどに手を当てて、のどを動かす筋肉がきちんと動いているかを確認できます。男性ならのどぼとけの辺り、女性なら首の真ん中辺りに軽く手を当ててみてください。

――はい。真ん中辺りに今手を当てました。

角田:
じゃあ、唾をゴックンと飲み込んでみてください。

――唾を飲み込んでみます。
あっ、はっきりと上下に動くのが分かります。

角田:
そうですね。持ち上がるんですね、飲み込む瞬間にね。これが大事なんです。
食べ物は食道へ、空気は気管へと。このときに大事な役割をしてくれているのが、全体にふたをする「喉頭蓋(こうとうがい)」です。

――上下に動くのが分かりますね。

角田:
持ち上がるんですね。飲み込む瞬間にね。これで、喉頭蓋がしっかりふたをして、誤えんを防いでくれるわけです。

――うまく飲み込むことができなくなった場合は、どうしたらいいんでしょうか。

角田:
あごを引いて飲み込むことで、のどを口に近づけられますので、飲み込みやすくなります。飲み込みにくくなったら、ストローを使うことをおすすめします。
また、えん下の動作全体が加齢で遅れますので、食事に“とろみ”をつけて流れを緩やかにすることで飲み込みやすくなります。
さらに、薬をゼリーに包んで飲み込むのも、誤えん防止にいいでしょう。

――声帯が衰えることで、ほかにはどのようなリスクがあるんでしょう。

角田:
会話をしなくなると、認知症のリスクも高まります。会話には耳や目、脳も使いますので、会話によるコミュニケーションの低下は認知症のリスクを高める、とも考えられます。また、声が出にくいと話さなくなり、さらに声が出しにくくなっている、という悪循環を招きます。日頃から声を出すこと、これを心がけてほしいです。

若くても声帯が衰えることが

――若い方でも、声帯が衰えることはあるんでしょうか。

角田:
はい。「声帯萎縮(せいたいいしゅく)」、これが若い人でも起きます。「声帯溝症(せいたいみぞしょう)」といって、声帯そのものが痩せて、声を出すときに声帯がピタッと閉じないことによって、空気が漏れてかすれ声になってしまう病気があります。
難病情報センターが、声帯溝症患者で30歳未満の若い人、500人を調査したところ、極端に声がかすれるために、本人に原因がなくても、社会的にマイナスのイメージを受けていることが明らかになりました。ですから周囲の方々の、病気への理解が大切でございます。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

角田:
声帯を鍛えて、病気のリスクを遠ざけよう。健康な声帯は、病気のリスクを下げます。


【放送】
2023/11/29 「マイあさ!」

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