【出演者】
角田:角田晃一さん(国立病院機構東京医療センター 人工臓器・機器開発研究部長)
聞き手:福島佑理 キャスター
声帯は老化する?
角田:
「声帯」がどの辺りにあるか、知らない人が多いと思います。ちょうど「のどぼとけ」、のどの真ん中辺りにあります。やわらかく伸縮にとんだ粘膜と筋肉から構成されています。左右にぶつかり合って振動します。
――前回のお話では、声帯は物を飲み込む力と大きく関わっていて、「誤えん性肺炎」や「えん下障害」にも関係する気管でもあるというお話でした。
職業柄、声の衰えや不調には関心があるんですけれども、声帯には「老化」はあまりないと聞いたことがあるんですが。
角田:
もちろん声帯にも「老化」はあります。
――あっ、そうですか。
角田:
ゴムのパッキンが劣化することと同様ですね。左右の声帯が閉じても、隙間ができてしまいます。そうすると「声がれ」や「息漏れ」が起きてしまうんです。また、声帯の老化が進んでしまうと、誤えん性肺炎やえん下障害にもつながります。
声帯の機能チェック
――自分自身で声帯の老化を確認することはできるんでしょうか。
角田:
はい。ご自身で簡単にできる、声帯の機能のチェックをしてみましょう。
――では、そのチェック方法、教えてください。
角田:
「最大発声持続時間」といって、私がおすすめしているのが、
● 思いっきり息を吸って、「あーーー」と声を出して、一息で何秒続くか
この時間を計ることで、声帯の衰えを確認できます。
「あーーー」と声を出すときは、普段の会話くらいの大きさで出しましょう。
男性で15秒以上、女性で12秒以上が正常なんですけれども、声が高くなったり、あるいは震えちゃったり、変な声になっちゃったりしたら注意が必要になりますね。
――声が震えたり、高くなったり低くなったり、不安定なときは要注意、ということなんですね。
角田:
声帯だけの問題ではなく、心臓や肺の機能の低下や、脳神経の病気、肺がんや食道のがんなど、重い病気が隠れている場合がございます。
――このほかにも、声帯の衰えをチェックする方法はありますか。
角田:
✓ 人から「声が変わった」と言われた
✓ 歌い慣れた歌が、歌いにくくなった
――どうして、このような症状が出るんでしょうか。
角田:
声帯や、声帯を動かす周囲の筋肉が弱くなることで声帯の衰えにつながりますし、男性・女性でも違いが出てくるんですね。
――男性・女性の違いとはどのようなものですか。
角田:
本来、女性は細くて高い声を出すために声帯が細くなって、男性の声帯は太く大きくなっていきますが、年を重ねると、声の高さに変化が出てきます。
女性は更年期以降、女性ホルモンの分泌量が減るので、声帯がむくんで太くなって、音域が下がります。更年期を迎えた女性が、最近、声が低くなったな、と感じるのはこのためです。
男性の場合、徐々に体力が落ちてきて、男性ホルモンが減ってきますから、声帯の筋肉が萎縮して硬くなって、声が甲高くなるような傾向にございます。
加齢以外の、声帯が衰える原因
――加齢以外に、声帯が衰えてしまう原因はありますか。
角田:
声をあまり使わないことです。仕事やプライベートで人と話す機会が減ってきますと、筋肉が衰えて声の萎縮が進みます。
それから、姿勢も重要です。猫背の方やうつむいて話す方は、肺から上がって来る空気を遮ってしまうので、声の響きに影響を与え、こもった声になります。
また、余分に胃酸が出やすい食生活を送っていることも、原因の1つとなります。アルコールをとり過ぎて、胃酸が食道に逆流して「のどやけ」を起こして声帯を痛めてしまいますし、タバコも声帯にとってはよくないです。
何科に受診?
――このような症状に気付いたら、何科を受診したらいいんでしょうか。
角田:
耳鼻咽喉科です。大きな病院では、声の問題を専門に扱う耳鼻咽喉科の音声外来や喉頭の専門外来もありますので、耳鼻咽喉科にまず受診されることをおすすめいたします。
声帯を衰えさせないために
――では、声帯を衰えさせないためには、どのようにしたらいいでしょうか。
角田:
声帯は筋肉で、その上振動しやすくするため、寒天のような粘膜が筋肉を覆っている仕組みです。筋肉に関しては、適度に使うことで鍛えることができます。
――どのように鍛えたらいいんでしょうか。
角田:
電話やオンライン通話でも会話はできますが、毎日通話の相手を見つけるのも難しいので、1人でもできることとして、本や新聞を声に出して音読することです。
また、テレビ番組に参加しているつもりで「あ~、そうそう」などと言ってみたり、クイズ番組なら声を出して答えるのもいいと思います。
――まずは声を出す、ということが大事なんですね。
角田:
そうです。カラオケや詩吟などもおすすめします。ご自分の気分が楽しくなるような、好きな歌や好きなことを歌っていただくのが一番よいと思います。
――では最後に、きょうのポイントをお願いします。
角田:
健康長寿は会話から。積極的に声を使って、コミュニケーションをとりましょう。
【放送】
2023/11/28 「マイあさ!」
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