「尿路結石」⑤~積極的な治療とは~

23/03/10まで

健康ライフ

放送日:2022/11/04

#医療・健康#カラダのハナシ

放送を聴く
23/03/10まで

放送を聴く
23/03/10まで

【出演者】
荒川:荒川孝さん(新百合ヶ丘総合病院 センター長)
聞き手:大久保彰絵 キャスター

対外衝撃波結石破砕術とは

――尿路結石の治療の第一歩は生活改善で、石が小さい人の場合、そのほとんどが自然に排出されるということでしたね。

荒川: はい。尿路結石で、石の大きさは5㎜以下の場合、70%以上の人が自然に排出されるといわれております。基本的には水分摂取2リットルを目指して水を飲み、適度な運動を心がけるということになります。そして補助的に、鎮痛剤や、尿管を拡張するお薬などを使うこともよくあります。

――では、石が5㎜以上の場合は、どういう治療になるんでしょうか。

荒川: まず最初に我々が検討しますのは、「体外衝撃波結石破砕術(たいがいしょうげきはけっせきはさいじゅつ)」です。体の外から結石に向かって、音波の一種である「衝撃波」を照射し、結石をゆっくりと砕く治療法です。患者さんはあおむけに寝ていただいて、衝撃波を照射する装置を密着させて、そのまま大体1時間程度、寝た状態で治療を受けていただきます。

――衝撃波っていうのはどのようなものなんですか。

荒川: 例えばですね、ジェット機が飛んでいるときに、窓にビリビリッとした、ビリビリ音がある。これが衝撃波です。また最近では、トンガの海底火山の、放射状に広がる衝撃波の画像を記憶されている方もいるのではないかと思います。この衝撃波は、体の中を素通りして、人の骨や筋肉、血管、ほかの臓器には影響を与えず、結石を砕くように調整されております。これが、実際に衝撃波で粉々にした結石の実物です。

――はい。こちらお持ちいただきました。ああ。(粉々になった結石が入った入れ物を振りながら)確かに、粉々になって何かこう、砂のようですね。これ、きれいな瓶に入っててお土産にもらったりする、そんな砂にも見えますけれど、結石がこんなふうになっちゃうんですね。

荒川: そうなんですね。1分間に大体60発から120発、1時間で3000発から5000発程度の衝撃波を結石に向かって発射いたします。最後には粉々になって、尿と一緒に排出されるわけです。

――そうなんですか。この治療、痛くはないんでしょうか。

荒川: 全く痛みを感じない人もいますが、多くの方は多少チクチクすると訴える程度です。強く痛みを感じる方には、痛み止めを使って治療したりします。日帰り、もしくは1日の入院で済むことが多いです。

――そうですか。この治療は誰でも受けることができますか。

荒川: 妊婦さん、130kg以上の肥満の方、それから腹部大動脈りゅうのある方などには、難しいです。そして、「抗血小板薬」などの血液サラサラの薬をのんでいる方は、衝撃波の治療を受けることはできません。また、結石が大きい場合や硬い場合、そして、尿管にはまり込んだ結石は、衝撃波では砕けないことがあるので、別の方法を検討いたします。

内視鏡を使った治療とは

――その、別の治療法というのは、どのようなものなんでしょうか。

荒川: これはですね、「内視鏡を使った治療」ということになります。内視鏡を、尿道からぼうこうを経て、尿管や腎臓の中まで入れていき、結石をレーザーなどで細かく砕く治療法。体の外から衝撃波を照射する治療法に比べて、より確実に結石を砕くことができて、より硬くて大きな石も壊せることがメリットとなっています。一方で、麻酔が必要で、入院も短い施設で3泊、長い所で1週間程度の入院が必要となってきます。内視鏡とレーザー装置の普及は最近増えておりまして、この治療件数は、先ほどの衝撃波に迫る、ないしは衝撃波の治療より多くなってきております。そして、その安全性も高くなってきてます。

――そうですか。衝撃波ですとか内視鏡、さまざまな治療法があるわけですね。

荒川: はい。薬剤投与や運動で自然に結石を出す方法以外に、今申し上げましたような石を砕く治療法のことを「積極的な治療法」といいます。四十数年前はですね、おなかを切るしかなかったんですね。ほんの数㎜の結石を取り出すために、おなかを何十㎝も切開して手術しなければならなかった時代があったわけです。現在、体の負担が少なく治療期間も短くなったこの治療法は、患者さんにとってメリットが大きいと思われます。前にも申し上げましたけれども、尿路結石というものは再発が大変多い病気です。生活改善とともに食事の見直しも行って、再発防止に取り組んでほしいと思います。

――荒川さん、最後にきょうのポイントをお願いします。

荒川: 積極的な治療には、衝撃波や内視鏡など、負担が少ない治療の選択肢があります。

【放送】
2022/11/04 マイあさ! 「健康ライフ」 荒川孝さん(新百合ヶ丘総合病院 センター長)

放送を聴く
23/03/10まで

放送を聴く
23/03/10まで

この記事をシェアする

※別ウィンドウで開きます