【出演者】
栗山:栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
聞き手:星川幸 キャスター
睡眠の悩みで病院に行く前に、自分でできることは?
――睡眠の悩みで病院に行く前に、自分でできることはあるんでしょうか。
栗山: | はい。主なポイントは3つです。 ✓ 日光に注目 ✓ 日中は活動的に ✓ 昼寝は30分以内 |
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日光に注目
――ポイントの1つ目は「日光に注目」ですね。
栗山: | はい。不眠の基本的な対策として、生活リズムを整えることは非常に重要です。そのためには、朝の光を浴びること、これが重要になります。 朝に目が覚めて、夜に眠くなるという生活リズムを調整するのは「体内時計」です。体内時計は、主に光によって調節されています。体内時計を乱さないためには、朝起きたときに、まず日光を浴びることが大切です。朝起きたらすぐにカーテンを開けたり、朝の散歩を習慣にしたりするとよいでしょう。 |
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――ただ、仕事などのために昼と夜の生活が逆転していて、日が出る前に起きているという人もいると思います。その場合は日光が浴びられないんですが、どうしたらいいですか。
栗山: | そういった方の場合は、原則的には、お仕事のリズムに合わせて日光を浴びる時間帯を調整する必要があると思います。恐らく、朝起きて仕事へ出かけられるときにはまだ暗い時間帯だと思いますので、その時間帯は、室内にいるときには室内の人工照明を利用して光を浴びるようにしてください。 お帰りになる時間帯は、日がこうこうと照っている時間帯になると思います。この時間帯はむしろ光を避ける必要があると思いますので、その場合は、サングラス等で光を避ける工夫をしたらよいでしょう。 |
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日中は活動的に
――続いて、ポイントの2つ目は「日中は活動的に」ですね。具体的には、日中どう過ごせばいいでしょうか。
栗山: | 日中は、ウォーキングやラジオ体操などの軽い運動、趣味の活動を行うなど、できるだけ活動的に過ごすことが重要です。 起きていると脳が疲れて眠くなるのは、「睡眠物質」と呼ばれるものがたまるため、と考えられています。睡眠物質は、脳が起きている時間に比例して蓄積していきます。この蓄積が脳を休ませるため、眠気が生じる原因となります。 日中は活動的に過ごすことで睡眠物質が蓄積され、睡眠が安定し、夜中に目が覚めることが減る、などの効果があります。 |
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昼寝は30分以内
――ポイントの3つ目は「昼寝は30分以内」ということですね。
栗山: | 昼間にたくさん寝てしまう、もしくは居眠りをしてしまうと、眠るための睡眠物質の蓄積を浪費することにつながります。日中はできるだけ起きて過ごして、夜はしっかり休む、という、メリハリをつけることが重要です。 昼寝は原則的に、30分以内にしてください。昼寝の前にタイマーなどをセットして、寝すぎないように気をつけてください。昼寝前に、コーヒーなどのカフェインをとることによって、早めに目が覚める効果が期待できます。 また、夕方以降、特に夕食後のうたた寝は、そのあと目が覚めてしまい、夜寝つけなくなるので、避けたほうがよいでしょう。 |
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――夜に眠れなかった分を、昼寝で補うという考え方はよくないんでしょうか。
栗山: | 昼寝の時間帯を1日の睡眠時間に含めて考えること自体は、問題ありません。ただし、夜に眠れない分を昼に取り返そうとすると、覚醒のリズムが乱れて、眠りが薄まってしまい、夜中に目が覚めてしまう、こういったことが増えます。 |
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起床時間が異なると、体内時計が混乱する
――それから、疲れを取るために休日は多めに眠りたいなあと思って、ついついそうしてしまうんですが、起床時間が変わるというのはよくないんでしょうか。
栗山: | 起床時間が異なることによって、体内時計が混乱しますのでよくありません。“お休みの日にたくさん寝たい”という方は、「そもそも平日に睡眠不足の状態である」ということを知っていただく必要があると思います。 体内時計のずれが大きくならないように、平日と休日とで、起きる時間の差を1時間以内にしていただく、ということが原則となります。 |
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――生活の工夫をしても、睡眠の悩みが続くという場合はどうすればいいでしょうか。
栗山: | 睡眠の悩みが長く続く場合、まず「かかりつけの医師・先生」にご相談いただくのがよいと思います。それでも解決しない場合は、「睡眠障害を専門に扱う医療機関」にご相談いただくことをおすすめします。 |
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【放送】
2022/11/23 マイあさ! 「健康ライフ」 栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
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