【出演者】
栗山:栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
聞き手:星川幸 キャスター
シニア世代に多い、睡眠の悩みとは
――睡眠の悩みは、シニア世代に多いんでしょうか。
栗山: | シニアの場合は、健康な人であっても寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、途中で目覚める回数が増える、そういった方が増えます。実際、60歳以上の方では3人に1人が睡眠に関する問題で悩んでいるといわれています。年齢とともに体力が落ち、老眼になり、白髪が増える。それと同じように、睡眠にも変化が生じるのは、自然な加齢性の変化といわれています。ですので、日中元気で過ごすことができていれば、特に心配はありません。ただし、日中の体調不良が長く続くようであれば、治療が必要になるケースもあります。 |
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――シニア世代では、どんな睡眠の悩みを抱えているんですか。
栗山: | シニア世代で多いのは、 ✓ 眠り方 ✓ ほかの病気との関係 ✓ 睡眠薬 これらに関する悩みが多くあります。 |
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「眠り方」の悩み
――では順番に伺います。まず「眠り方」。これについてはどんな悩みがあるんでしょうか。
栗山: | これは、“年を取ってからよく眠れなくなってしまった、何か原因はあるのか”というような悩みです。原因の1つに、加齢に伴って生じる、体内時計の機能変化があります。 高齢になると眠りが浅くなって、60歳以降の人の半数近くが、夜中に1~2回、多くは何度も、目を覚ますというふうにいわれています。そして、日常生活にゆとりができて、睡眠のことに関心が向きがちになり、ご自身の睡眠の状態、特に不眠症状が気になりだす、ということもあります。 注意していただきたいのは、シニアになって、若いときよりも著しく寝床にいる時間が長くなることです。寝床にいる時間が長いほど、死亡リスクが高くなることが、最近の研究で明らかになりました。これは、必要な睡眠時間は加齢とともに短くなっていくのに対し、必要以上に寝床で過ごす時間が長くなるということです。 65歳になると大体、必要な睡眠時間は6時間ぐらい、というふうにいわれています。若いころの感覚で、もっと眠らなくてはと考え、長く寝床にとどまってしまう人がかなり増え、相談もよく受けています。これが睡眠の質が下がり、むしろ健康に悪影響になっている可能性があります。 |
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――シニアの方は、長く布団の中にいることには注意が必要なんですね。
栗山: | 若いときに忙しくバリバリと働いていた人ほど、定年後はそれを取り返そうと長く眠ろうとする傾向もありますが、それはかえって睡眠の質を低下させる可能性があります。無理に睡眠時間を長くしようとするのではなく、睡眠の質を高めることにも意識を向けてみてください。 |
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――睡眠の質を高めるには、日中は活動的に過ごすことが大切、ということでしたね。
栗山: | はい。日中はウォーキングやラジオ体操などの軽い運動や、趣味の活動を行うなど、できるだけ活動的に過ごし、長い昼寝をとるのは避けるようにしましょう。また、退職後、もしくは子育て終了後に時間に余裕ができると、つい早い時刻から寝床に入ってしまう人がいますが、ウトウトするだけで、深い睡眠は得られません。眠気を強く感じるようになってから、寝床に入るようにしてください。 |
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「ほかの病気との関係」の悩み
――「ほかの病気との関係」、これによる睡眠の悩みとはどんなものですか。
栗山: | “ほかの疾患・病気の薬が影響することはあるのか”というような悩みです。高血圧の治療に使われる一部の降圧薬など、ほかの病気に対する薬によって、不眠症状が強まることはありえます。高齢になると、どうしても処方薬の種類が増えがちです。持病の治療のため薬を使用していて、不眠症状で悩んでいる場合には、一度、かかりつけの先生に相談してみてください。その際、参考のため「お薬手帳」を持参していただくと、よりよいと思います。 |
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「睡眠薬」の悩み
――「睡眠薬」については、どんな悩みがあるんでしょうか。
栗山: | よくある悩みは、“睡眠薬をのみ続けて大丈夫なのか”というような悩みです。長く睡眠薬を服用されている場合、使用している睡眠薬が、以前からあるお薬の場合「筋弛緩作用(きんしかんさよう)」という、筋肉の緊張をほぐす作用を含んでいるお薬の場合があります。この場合、加齢に伴い、筋肉の緊張が緩みやすくなってしまうせいで、夜中お手洗いに行かれた際に転んだりしやすくなる可能性があります。服用されているお薬がこういうような危険性がないかどうか、主治医の先生にご相談いただくのがよいかと思います。 |
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【放送】
2022/11/25 マイあさ! 「健康ライフ」 栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
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