【出演者】
栗山:栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
聞き手:星川幸 キャスター
なかなか眠れないときにはどうしたら?
――私もなかなか寝つけないことがあるんですけれども、どうしたらいいんでしょうか。
栗山: | 不眠に悩んでいる人は、“眠れない”、“眠らなくては”という不安にとらわれがちです。不安が強くなると、“毎晩ぐっすり眠って、朝すっきり起きなければいけない”、“早くから眠れないといけない”など思い込みが膨らみ、よけい眠れなくなってしまいます。 |
---|
――眠れない不安が強くなりすぎているんですね。なかなか眠れないとき、具体的にはどうしたらいいんですか。
栗山: | まず、眠気がまだ来ていないのに、寝床に入るということはやめてください。眠いと感じていないまま寝床に入ると、体が眠る態勢ができていないために、寝つきが悪くなります。悩みごと・考えごとなどで、脳が活発に活動を続けている状態も、目が覚めて寝つけない原因です。 加えて、早く眠りにつくために寝床に早く入るとか、朝も寝床にとどまることで、まだ眠れるのではと期待するなど、寝床に長くいる習慣がついてしまうと、それらが一層眠れない時間を増やして、不眠症状を悪化させます。 また、途中で目が覚めたり、眠りが浅く感じるケースの多くは、眠ろうとして、寝床で長く横になって過ごすことによって生じます。床の中で長く過ごすと、起きている時間が短くなり、睡眠物質が十分にたまらないので、深い眠りが得られず、途中で目が覚めたり眠りが浅くなったりもします。 「眠くなるまで寝床に入らないようにする」「実際に眠くなってから寝床に入る」、これらをおすすめします。最初は慣れなくてつらいかもしれませんが、寝床から出てリラックスして、眠くなったら寝床に入る、ということを試してみてください。 |
---|
――寝床から出たり、そしてまた寝床に入ったり、ということを繰り返してみると。どうしてそんなことをするんですか。
栗山: | 眠る前に、リラックスするための「移行期」が必要だからです。睡眠の調節に関わるのが「自律神経」です。自律神経には、体が活動しているときや緊張したときに優位になる「交感神経」と、体を休めるとき・リラックスしているときに優位になる「副交感神経」があります。 眠気を感じるころから、副交感神経が優位の状態に切り替わり、リラックスして血圧・脈拍数が低下し、呼吸も穏やかになって、自然に眠りにつきやすくなります。一方で、眠ろうとするときに、緊張や不安、興奮などがあると、交感神経優位の状態が続いてしまい、体がリラックスした状態にうまく切り替わらないために、なかなか寝つくことができない状態が続きます。これらを防ぐためには、眠る前に、体がリラックスした副交感神経優位の状態に向かうための移行期を作る工夫が必要になります。 |
---|
副交感神経を優位にするためには
――副交感神経を優位にするために、どんな工夫をするといいんでしょうか。
栗山: | 「適温で入浴」するのが有効です。38℃から41℃程度の、ぬるめの湯に長くつかることによって、副交感神経が優位になります。42℃以上のあまり熱いお湯だと、かえって交感神経が優位になってしまいます。熱いお湯での入浴が好きな人は、入浴後に寝つきが悪くなるのを避けるために、寝床につく2時間ほど前までに入浴を済ませるとよいと思います。 |
---|
――入浴以外には、どんな方法があるでしょうか。
栗山: | 適切な、リラックスするような方法を用いるのがよいと思います。例えば、ゆったりとした音楽を聴く。静かに読書をする。アロマをたいてリラックスする。こういった時間を持つことも、緊張をほぐすために有効です。 |
---|
――いろいろと対策を教えていただきましたが、やることがたくさんあって、ちょっと大変そうですね。
栗山: | 寝つきの悪さを改善する方法を、いっぺんにやろうと意気込むと、かえってストレスになり、逆効果になることもあります。眠りに問題が生じたときには、ゆったりと構えてひとつひとつ試してみる、そのような程度でよいと思います。 また、日によっては、きょうは眠たくない、眠れない、という晩があっても、それは自然なことです。眠れないことに恐れすぎて、かえって眠れなくなること、これを避けることが重要ですので、過剰に心配しすぎず、むしろ、眠れない夜は眠れない夜の時間を楽しんでいただく、そのぐらいの気持ちがいいと思います。 各自ができる範囲で、寝つきの悪さを改善する方法を続けても不眠が改善しない場合、このような場合はかかりつけ医、もしくは、睡眠を専門とするような医療機関にご相談ください。 |
---|
【放送】
2022/11/24 マイあさ! 「健康ライフ」 栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
この記事をシェアする