「睡眠の悩み」①~最新研究『睡眠休養感』~

23/04/03まで

健康ライフ

放送日:2022/11/21

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
栗山:栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
聞き手:星川幸 キャスター

「睡眠休養感」とは何?

――「睡眠休養感」というのは初めて聞く言葉なんですが、睡眠休養感とは何ですか。

栗山: 睡眠休養感とは、「睡眠の質を測る指標の1つ」で、「朝起きたときに、睡眠によってどれだけ体が休まったと感じたか、を評価したもの」です。

これは必ずしも、“朝すっきりした感覚”や、“体に力がみなぎっているような感覚”だけを反映するものではなく、「睡眠時間の長短にかかわらず、これから活動する体の準備が、整ったと感じた主観を評価したもの」になります。

――どんな調査を行ったんでしょうか。

栗山: 「睡眠時間」、そして、床(とこ)の上で過ごす時間の長さである「床上時間(しょうじょうじかん)」、そして、朝の目覚めのときに得られる、休まった感覚である「睡眠休養感」、これらと「死亡リスク」の関係を調べました。

「床上時間」と「睡眠時間」の違いは?

――寝床(ねどこ)で過ごす床上時間、というのは、睡眠時間とは違うんですね。

栗山: はい。床上時間の一部は、実際には眠っていない、目が覚めた状態も含めています。多くの場合、皆さん、寝つくまでにはある程度時間がかかりますし、朝目覚めるまでに、目が覚める時間帯というのが複数回現れることが分かっています。ですので、睡眠時間=床上時間ではないんです。

そこで、実際の睡眠時間と床上時間を区別して評価するために、眠っている時間というのを脳波計で測定して、厳密に「睡眠時間」というふうに評価して、「床上時間」は、それとは別に床の上で過ごしている時間を評価しました。

睡眠休養感の評価としては、実際には睡眠時間の長さに関係なく、よく眠れた感覚、体が休まった感覚によって、5段階で自己評価してもらいました。ですので、場合によっては、1時間しか寝てなくても睡眠休養感が高い、という場合もあると思いますし、逆に、10時間寝たとしても休養感がない、こういった場合もあると思います。

調査結果 働き盛り世代の場合

――実際の調査の結果はどうなったんでしょうか。

栗山: 「働き盛り世代(40歳以上65歳未満)」の方と、「高齢世代(65歳以上)」の方に分けて調べました。その結果、働き盛り世代に関しましては、床上時間と死亡リスクとの関連は見られませんでした。他方で、睡眠時間が短く、かつ、睡眠休養感が低い方々、この方々に関しては死亡リスクが高まる、ということが分かりました。

――働き盛りの世代では、睡眠時間が短く、睡眠休養感が低いと健康に良くない、ということですね。なぜでしょうか。

栗山: 生活習慣病をはじめとした慢性疾患のリスクになりますし、かつ、うつ病をはじめとした精神疾患のリスクにもなるということが分かっています。こういったことが反映されて、睡眠時間の短さ、そして睡眠休養感の低さが死亡リスクにつながっている、と考えられます。

調査結果 高齢世代の場合

――高齢者についてはどうでしょうか。

栗山: 高齢者では、睡眠時間自体は、死亡リスクとの関連はありませんでした。他方、床の上で過ごす時間の長さである床上時間が長いほど、死亡リスクが高まることがわかりました。特に、睡眠休養感が低く、かつ、床上時間が8時間以上と長い人たちは、7時間以下の方々に比べて、死亡リスクはおよそ1.6倍高まるということが分かりました。

睡眠休養感が低いと健康に悪影響、なぜ?

――睡眠休養感が低下すると健康に悪影響を与える、というのはなぜなんでしょうか。

栗山: それにはいくつか理由が考えられます。まずは、床の中で長く過ごすことによって、相対的に日中の活動量が低下する、ということが考えられます。さらに、ぐっすり眠れた感覚がない、睡眠休養感が低いと、昼間ボーッとしたり、疲労感が残ってしまって、活動量がさらに低下する傾向が出てきます。これによって、心身ともに衰える「フレイル」といった状態に関連しやすくなります。

健康によい睡眠は、世代によって違う

――世代によって、健康にいい睡眠というのはかなり違うんですね。

栗山: はい。働き盛り世代の方々は、睡眠休養感に注目するとともに、仕事や家庭などいろいろ忙しいことが多いと思いますが、しっかり睡眠時間を確保することが重要です。他方で、高齢者の方々は、あまり長く布団の中に居過ぎることには注意が必要です。無理に睡眠時間を長くするのではなく、睡眠の質、睡眠休養感を高める方向を重視するといいと思います。

――睡眠の質を高める方法は、次回以降詳しくお伝えします。では、最後にきょうのポイントをお願いします。

栗山: 睡眠時間、そして、床の中で過ごす時間である床上時間とともに、睡眠休養感にも注目しましょう。

【放送】
2022/11/21 マイあさ! 「健康ライフ」 栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)

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