防衛費GDP2%の財源 1兆円程度不足 税制措置を検討へ

防衛費の増額をめぐり、5年後の2027年度にGDPの2%に達する予算を措置するためには、歳出削減などを行っても財源が1兆円程度不足すると政府が試算していることがわかりました。

岸田総理大臣は12月8日、与党に税制措置を検討するよう要請することにしています。

防衛費の増額をめぐり、岸田総理大臣は5年後の2027年度に防衛費と関連する経費を合わせてGDP=国内総生産の2%に達する予算措置を講じるよう指示していて、今年度のGDPの見通しをもとに計算すると11兆円規模になる見通しです。

防衛費を増額するための財源について政府が検討した結果、5年後には追加の財源としておよそ4兆円が必要で、歳出削減のほか、年度内に使われなかった「剰余金」を活用しても1兆円程度が不足すると試算していることがわかりました。

また、財源を確保するため、国有資産の売却などによる税金以外の収入を活用する「防衛力強化資金」という新たな枠組みをつくることも検討しています。

自民・公明両党の協議会は7日、歳出削減などを行ったうえでも不足する部分は税制措置を含めて対応する方針を確認していて、岸田総理大臣は8日、与党に税制措置を検討するよう要請することにしています。

防衛力整備“5年で43兆円” 自公了承 財源不足分は税制措置も

防衛力の抜本的な強化に向けて、自民・公明両党の協議会は、来年度から5年間の防衛力整備の水準をおよそ43兆円とする方針を了承しました。また財源について、歳出削減などを行ったうえで、不足する部分は税制措置を含めて対応する方針を確認しました。

自民・公明両党は12月7日夕方、麻生副総裁と北側副代表をトップとする協議会を開き、両党の幹事長や政務調査会長らも出席しました。

この中で、政府は防衛費総額の規模や防衛装備品の調達目標を定めた「中期防」=「中期防衛力整備計画」に代わり、新たに策定する「防衛力整備計画」で来年度から5年間の防衛力整備の水準をおよそ43兆円とする方針を示し、両党はこれを了承しました。

そのうえで必要となる財源について、歳出削減を図るほか、年度内に使われなかった「剰余金」や税金以外の収入を活用するとしたうえで、それでも不足する部分は税制措置を含めて対応する方針を確認しました。

また、来年度は増税を行わない方針で一致しました。

与党内では財源について、将来的な増税も含めた方針を年内に明確にしておく必要があるという意見がある一方、増税の議論は来年以降、時間をかけて丁寧に進めるべきだという声もあり、政府・与党として安定的な財源確保の道筋を、年末までにどこまで具体的に示せるかが焦点となります。

自民 萩生田政調会長「税は最終的な手段」

自民党の萩生田政務調査会長は、記者団に対し「歳出改革や剰余金の活用など国民に直接負担をかけない形でできるかぎりの財源を確保し、税は最終的な手段として考えていく。『お金がないからやらない』ではなく、まずは国民の生命・財産を守るための構えは来年から直ちにスタートする」と述べました。

公明 高木政調会長「本当に足らざる部分 税調で議論」

公明党の高木政務調査会長は、記者団に対し「今後、歳出削減や税外収入の活用などさまざまな努力をしたうえで、本当に足らざる部分について最終的に税制調査会で議論していく。議論が具体的にならないと税目などは出てこないと思うが、個人の負担をどう求めるかや物価高の中、中小企業などに負担やしわ寄せがいかないよう、これから議論が深まっていくと認識している」と述べました。

共産 穀田国対委員長「結局はGDP2%ありき 撤回求めたい」

共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「5年間でおよそ43兆円の防衛費は、結局はGDPの2%ありきかと思う。戦争をしないという憲法を持つ国が軍事力をこれだけ増やして何をする気だということが問われる。平和と暮らしを脅かすもの以外のなにものでもなく、撤回を求めたい」と述べました。

松野官房長官「内容 規模 財源 年末に一体的に決定」

松野官房長官は、記者会見で、来年度から増額される見通しとなった防衛費の内訳について「『スタンド・オフ防衛能力』など、いわゆる7本柱の分野を重視して必要な内容を積み上げ、43兆円とする方針が示されている。引き続き、内容、規模、財源について、年末に一体的に決定すべく、与党とも十分連携しながら調整を図っていく」と述べました。

自民 宮沢税制調査会長「大変短い期間 議論へ 」

自民党の宮沢税制調査会長は7日午前、税制調査会の会合で「岸田総理大臣の方針もあり、大変短い期間になるが、おそらく来週議論することになる」と述べました。

防衛費の財源をめぐって政府・与党は、まずは、歳出削減や剰余金などを活用することを目指し、不足分については増税を含めた歳入の見直しも検討する方向で調整していて、税制調査会では税負担の在り方について議論される見通しです。

また、宮沢氏は来年度の税制改正大綱について、来週15日にも取りまとめる方針を明らかにしました。