足してない人いること
事実」慰安婦問題で勧告

スイスのジュネーブで開かれた人種差別撤廃条約の委員会は、慰安婦問題をめぐって複数の市民団体から、3年前の日韓合意を含む日本政府の対応が不十分だという声が出ているとして、被害者の立場に立って解決を図るよう、日本政府に勧告しました。

人種差別撤廃条約の加盟国から選ばれた18人の専門家でつくる委員会は30日、4年ぶりに行った日本の人権状況に関する審査結果を公表しました。

この中で、慰安婦問題も取り上げられ、2015年の日韓合意を含む日本政府の対応をめぐって、複数の市民団体から「被害者中心の解決になっていない」という声が出ていることに対して、「委員会として懸念している」としました。

そのうえで、日本政府に対し、人権を侵害した責任を認め、被害者の立場に立って永続的な解決を図るよう勧告しました。

勧告には法的な拘束力はありませんが、委員会は、定期的に行っている次の審査にあわせて、日本政府に取り組みの内容を報告するよう求めています。

責任者を務めたベルギーのボシュイト委員は記者会見で「日韓合意など日本政府のこれまでの取り組みは評価するが、まだ満足していない人がいることも事実だ」と述べました。

一方、ジュネーブ国際機関日本政府代表部は「日本政府の説明が十分に踏まえられなかったのは遺憾だ」として、委員会に抗議したことを明らかにしました。

韓国外務省 抗議の日本政府を批判

人種差別撤廃条約の委員会が、慰安婦問題をめぐって日本政府に対し、被害者の立場に立って解決を図るよう勧告したことについて、韓国外務省はコメントを発表し、「人種差別撤廃条約の委員会を含む、国連の人権に関する取り組みを評価する」としています。

そのうえで、勧告を出した委員会に抗議した日本政府に対して、「勧告に耳を傾けることを望む」と批判しています。

また、「韓国政府は被害者を中心に据えて、被害者の名誉と尊厳を回復する。慰安婦問題を歴史の教訓として残すために継続して努力する」として、改めて慰安婦問題に取り組んでいく姿勢を示しました。

官房長官「慰安婦問題は条約の適用対象外」

菅官房長官は、31日の閣議のあとの記者会見で「慰安婦問題はそもそも人種差別撤廃条約の適用対象外であり、審査で取り上げるのは適切ではないことを指摘し、事実関係や日本政府の取り組みを説明してきた」と述べました。

そのうえで「今般の勧告は、日本政府の説明内容を十分踏まえておらず、極めて遺憾であり、ジュネーブ国際機関日本政府代表部の岡庭大使から、国連人権高等弁務官事務所の担当幹部に申し入れを行った」と述べました。

また、沖縄のアメリカ軍基地問題をめぐって、人種差別撤廃条約の委員会が、軍の関係者による女性への暴行事件などがあとを絶たないことに懸念を示し、日本政府に対応を求めたことについて「従来より住民の安全確保を最優先の課題として、アメリカ側に申し入れをし取り組んでいる」と述べました。

河野外相「日韓合意を両国が履行することに尽きる」

河野外務大臣は閣議のあとの記者会見で、「慰安婦問題は、日韓合意を両国がしっかり履行することに尽きる」と述べました。

そのうえで、「慰安婦問題は、国連の委員会で取り上げるべきものではないし、繰り返し取り上げられるということは、委員会の存在意義に関わってくる。現在、国連の事務総長らが、国連改革や再活性化に盛んに言及しているが、委員会が与えられた議題の範囲で集中して議論するような改革が必要だ」と述べました。

「ヘイトスピーチに対応を」

人種差別撤廃条約の委員会はこのほか、ヘイトスピーチと呼ばれる差別的な言動や、沖縄でアメリカ軍の関係者による女性への暴行事件や軍用機による事故があとを絶たないことに懸念を示し、日本政府に対応を求めています。

このうちヘイトスピーチについては、日本が差別的な言動の解消を目指したいわゆる「ヘイトスピーチ解消法」を2年前に施行したことを評価しながらも、対策はまだ不十分だと指摘したうえで、さらに法整備を進めるよう勧告しています。

また、沖縄のアメリカ軍基地問題については、軍の関係者による女性への暴行事件や軍用機による事故があとを絶たないことに懸念を示したうえで、日本政府に対し、沖縄の人々の安全を確保するよう求めています。