G7宣言 ワクチン支援
中国の海洋進出に深刻な懸念

G7サミット=主要7か国首脳会議は首脳宣言を発表し、来年までに新型コロナウイルスの感染を終息させるため、途上国などにワクチン10億回分に相当する支援を行うとしています。また中国の海洋進出などに深刻な懸念を表明し、台湾海峡の平和と安定の重要性に初めて言及したほか、東京オリンピック・パラリンピック開催への支持が盛り込まれました。

イギリス南西部のコーンウォールで3日間開催されたG7サミットは13日、一連の日程を終え、討議の成果を取りまとめた首脳宣言を発表しました。

前文では、国際協力や多国間主義、そして、開かれて強じんな国際秩序に基づいて行動し、こうした秩序こそが、市民の安全と繁栄を保証するものだと強調しています。

新型コロナウイルス

そして新型コロナウイルスについて、来年・2022年までの感染終息という目標を掲げ、途上国などにワクチン10億回分に相当する支援を行うとしています。

そのうえで、ワクチンの世界的な開発を加速化させるとともに、新型コロナ対策や将来の健康危機への備えを強化するとしています。

気候変動と環境

気候変動と環境をめぐっては、遅くとも2050年までのカーボンニュートラルと、それに沿って各国が引き上げた2030年の目標に触れたうえで、2030年代にG7各国の国内の電力システムを最大限脱炭素化するとしています。

また、温室効果ガスの排出を抑える対策がとられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な支援を年内に終了させることに関与すると明記しています。

このほか、国内の状況に応じて、2030年までにG7各国の陸地や海洋の少なくとも30%を保全または保護することや、海洋プラスチックごみへの取り組みを強化することを盛り込んでいます。

また、安全保障上、重要性を増している半導体などの先端技術や希少資源などの供給網=サプライチェーンの強じん化に向けて「リスクに対処する仕組みを検討する」としています。

中国

そして中国をめぐって、気候変動や生物多様性をはじめとした共通の地球規模課題に対しては協力する一方、新疆ウイグル自治区の人権問題や香港情勢などで、人権や基本的自由を尊重するよう中国に求めるとしています。

また、農業や衣類部門などでのあらゆる形態の強制労働に懸念を示し、各国の貿易大臣に対し、根絶に向けて協力の在り方を見いだすよう指示しています。

さらに、中国が進出を強める東シナ海や南シナ海の状況を引き続き深刻に懸念し、現状を変え、緊張を高めるあらゆる一方的な試みに強く反対するとしているほか、台湾海峡の平和と安定の重要性にG7サミットの首脳宣言で初めて言及しています。

中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への対抗を念頭に、途上国のインフラ整備に向けた具体的な支援の方策を検討するため、タスクフォースを設立し、ことしの秋に報告を求めるとしています。

北朝鮮・ミャンマー・ロシア

このほか、北朝鮮の非核化に向けて、すべての大量破壊兵器や弾道ミサイルの検証可能で不可逆的な廃棄を求めるとともに、拉致問題については北朝鮮に対し即時解決するよう求めるとしています。

また、ミャンマーをめぐって人道状況に深い懸念を示したうえで、クーデターと治安部隊による暴力を最も強いことばで非難しているほか、ロシアについては、不安定化を招く行動や悪意のある活動をやめ、国際的な人権に関するみずからの義務を果たすよう改めて求めるとしています。

東京五輪・パラ

そして、最後に、新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催することを改めて支持すると表明しています。

「国際課税のルール作り」合意への期待感も

G7サミットの首脳宣言には、およそ140の国や地域が進めている「国際課税のルール作り」が合意に達することへの期待感も盛り込まれました。

OECD=経済協力開発機構の加盟国を中心に、およそ140の国や地域でつくるグループが議論を進めている「国際課税のルール作り」には2つの柱があります。

このうちの1つは各国共通の法人税の最低税率を導入しようという議論です。

これは、企業が税率の低い国や地域に利益を移して課税を逃れる動きや、各国が企業を誘致するために競うように法人税を引き下げる流れに歯止めをかけるねらいがあります。

今月5日までイギリスで開かれたG7の財務大臣会合では、最低税率を15%以上とする方針などで一致しました。

今回の首脳宣言では「G7の歴史的なコミットメント=確約を承認する」としたうえで、「7月のG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議での合意を期待する」としています。

G7各国の結束がさらに強く示されたことは、今月末から行われるグループの交渉会合や、7月のG20での合意に向けた後押しになるものとみられます。

ただ、議論に参加している国や地域の中には、低い税率で企業を呼び込んできたところもあり、G7各国が目指す「15%以上」という水準で合意に至るどうかはなお予断を許しません。

「国際課税のルール作り」のもう1つの柱は、グローバル企業に対する課税強化です。

対象とする企業は業種は問わず、一定規模以上の売り上げがあり、さらに売り上げに占める利益の割合=利益率が高い100社程度に絞る方向で議論が進められています。

菅首相 議論を宣言に反映と評価 五輪開催「全首脳が支持」

G7サミット=主要7か国首脳会議の一連の討議を終えたあと、菅総理大臣は記者団に対し議論の内容を首脳宣言に反映できたと評価し、新型コロナウイルス対策や権威主義との競争などでG7が国際秩序を主導していく考えを示しました。
また、東京オリンピック・パラリンピックの開催に全首脳から力強い支持を得たことを明らかにしました。

この中で菅総理大臣は、G7サミットについて「対面では初めての参加だったが、率直に意見交換できた。議論の成果をしっかりと首脳宣言に反映することができたと思っている」と述べました。

そのうえで「新型コロナ、気候変動、さらには経済回復、権威主義との競争に、国際社会が直面する中で、普遍的価値を共有するG7として、これからの国際秩序をリードしていきたい。そして、さまざまな政策について、経済社会のよりよい回復を目指すと同時に、自由で開かれた国際秩序の確立に努めていきたいということを、全体として方向付けをした」と述べました。

また、東京オリンピック・パラリンピックについて「感染対策の徹底と安全安心の大会について、私から説明をさせていただき、全首脳から大変力強い支持をいただいた。私自身、改めて主催国の総理大臣として、こうした支持を心強く思うとともに、東京大会を何としても成功させなければならないという思いで、しっかりと開会し、成功させなければならないという決意を新たにした」と述べました。

米バイデン大統領 東京五輪開催「支持する」

イギリスを訪れている菅総理大臣は、アメリカのバイデン大統領と協議し、東京オリンピック・パラリンピックについて「感染対策を万全にし、安全・安心な大会を実現する」と述べ、開催に向けた決意を示したのに対し、バイデン大統領は、菅総理大臣を支持すると述べました。

菅総理大臣は、日本時間の12日夜、G7サミットの会場で、アメリカのバイデン大統領と、断続的におよそ10分間協議を行いました。

この中で菅総理大臣は、東京オリンピック・パラリンピックについて「感染対策を万全にし、安全・安心な大会を実現する」と述べ、開催に向けた決意を示したのに対し、バイデン大統領は「もちろん、あなたを支持する」と述べました。

また、菅総理大臣は「G7首脳コミュニケをとりまとめるにあたり、先の日米首脳会談などの成果も踏まえ、力強いメッセージを発出すべきであり、日米両首脳の間で、緊密に連携していきたい」と述べました。

これに対し、バイデン大統領は「完全に同じ立場であり、菅総理大臣とともに、議論をリードしていきたい」と応じました。

さらに、菅総理大臣は「自由で開かれたインド太平洋」とASEAN=東南アジア諸国連合の役割の重要性を強調したのに対し、バイデン大統領も、同感だとして、日米が協働して取り組んでいきたいと述べました。

アメリカのホワイトハウスは12日、バイデン大統領がイギリスで日本の菅総理大臣と会談した際、「選手やスタッフ、観客を守るために必要な公衆衛生上のあらゆる対策をとりながら、東京オリンピックを前に進めることへの支持を表明した」と発表しました。

これまでバイデン政権は、東京大会の開催に関して、ことし4月に日米首脳会談を行った際に共同声明で言及した「開催するための菅総理大臣の努力を支持する」という立場を一貫してとってきました。

今回の発表では、公衆衛生上の対策を徹底することを条件に、東京大会の開催に向けて前進することを支持するとしていて、政権として、開催を後押ししていく姿勢を一段と強く示した形です。

英ジョンソン首相 東京五輪「成功を確信している」

菅総理大臣は、日本時間の11日夜8時前から、G7サミットの議長国・イギリスのジョンソン首相と、30分余り会談しました。

この中で菅総理大臣は「2年ぶりに対面でのG7サミットを実現させたジョンソン首相のリーダーシップに敬意を表する」と述べたうえで、新型コロナウイルス対策や気候変動などの課題に立ち向かう国際秩序の形成で連携したいという考えを伝え、ジョンソン首相は、同意する考えを示しました。

また、菅総理大臣は、イギリスの最新鋭の空母などのインド太平洋地域への派遣や日本への寄港を歓迎する考えを示し、両首脳は、両国や多国間での共同訓練の実施に向けた調整を加速することで一致しました。

一方、菅総理大臣は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定をめぐり、イギリスの加入に向けた手続きの開始が決まったことを歓迎し、ジョンソン首相は、協定の議長国を務める日本の役割に謝意を示しました。

さらに、菅総理大臣は、東日本大震災の発生からことしで10年となったことに触れたうえで、日本産食品の輸入規制を撤廃するよう求め、ジョンソン首相は「真剣に検討したい」と応じました。

一方、両首脳は、インド太平洋をはじめとした法の支配に基づく国際秩序の実現で一致したほか、中国を含む東アジア情勢について率直な意見交換を行い、拉致問題を含む北朝鮮への対応で引き続き協力していくことで一致しました。

そして、ジョンソン首相は、2012年のロンドンオリンピックの際に務めていたロンドン市長としての経験を紹介しながら「東京オリンピック・パラリンピックの成功を確信している」と述べ、開催への支持を表明しました。

また、2025年の大阪・関西万博への参加も表明しました。

仏マクロン大統領 東京五輪「開会式への出席楽しみ」

菅総理大臣は、G7サミットの2日目の一連の討議のあと、フランスのマクロン大統領と、およそ30分間会談しました。

この中で、菅総理大臣は、東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、マクロン大統領が、来月の開会式に出席する意向を示していることを歓迎したうえで、東京大会と、3年後のパリ大会の双方の成功に向け、連携したいという考えを示しました。

これに対し、マクロン大統領は、東京大会の開催を支持したうえで「開会式への出席を楽しみにしている」と述べました。

また、菅総理大臣は、フランスが、艦船の派遣を含め、インド太平洋地域への関与を強化していることを歓迎し、協力を強化したいという考えを伝えたのに対し、マクロン大統領は、インド太平洋地域で引き続き日本と緊密に連携したいと応じました。

さらに、両首脳は、グリーン分野を含む先端技術などでの協力を推進することで一致したほか、北朝鮮を含む地域情勢について、引き続き協力していくことを確認しました。

独メルケル首相「安全保障 協力強化を」

菅総理大臣は、G7サミットの2日目の討議を前に、ドイツのメルケル首相と、日本時間の夕方、20分余り会談しました。

この中で、菅総理大臣は、新型コロナウイルス対策や気候変動などの課題に立ち向かうための国際秩序の形成に向け、連携していきたいという考えを伝えました。

また、安全保障をめぐり、ことし夏にインド太平洋地域にドイツ軍のフリゲート艦が派遣されることを踏まえ、菅総理大臣は「ドイツによるインド太平洋へのコミットメントを歓迎する」と述べたのに対し、メルケル首相は「インド太平洋地域はドイツにとっても重要な地域だ」と応じ両首脳は、安全保障分野などでの協力を強化していくことを確認しました。

さらに、両首脳は中国を含む東アジア情勢やロシアなどへの対応についても意見を交わしました。

そして、菅総理大臣は、東日本大震災の発生からことしで10年となったことに触れ、EU=ヨーロッパ連合による日本産食品への輸入規制の撤廃に向け、ドイツの協力を求めました。

豪モリソン首相 脱炭素化へ パートナーシップ立ち上げで一致

菅総理大臣は、サミットに招待されているオーストラリアのモリソン首相とおよそ1時間会談しました。

この中で両首脳は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、幅広い分野で協力を深めていくとともに、引き続きアメリカとインドを含めた4か国をはじめ、ASEAN=東南アジア諸国連合やヨーロッパとの協力を進めていくことを確認しました。

また、両首脳は、脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーなど最新技術の開発や商業化を可能なかぎり加速することなどを盛り込んだパートナーシップを立ち上げることで一致しました。

一方、両首脳は、中国がオーストラリア産の農産物の輸入制限措置を取っていることなどを念頭に、経済的威圧や力による一方的な現状変更の試みの継続・強化に強く反対していくことを確認しました。

さらに、モリソン首相は東京オリンピック・パラリンピックの開催支持を表明しました。

カナダ トルドー首相「ワクチン公平確保で連携」

このあと、菅総理大臣はカナダのトルドー首相とも会談し、新型コロナウイルスのワクチンへの公平なアクセスを確保することなどで連携していくことを確認しました。

また、東京大会をめぐり、トルドー首相が「選手団を派遣し、多くのメダルを獲得するのを楽しみにしている」と述べたのに対し、菅総理大臣は、安全・安心の大会に選手団を迎えられるよう全力を尽くす考えを伝えました。

日韓首脳ことば交わす

韓国大統領府の発表によりますと、イギリスで開かれているG7サミット=主要7か国首脳会議に招待されたムン・ジェイン(文在寅)大統領は、12日、韓国などが加わって行われた討議が始まる前に、菅総理大臣とことばを交わしたということです。

この中で両首脳は、偶然に対面し、会えてうれしいとあいさつしたとしています。

ムン大統領は、去年9月に就任したばかりの菅総理大臣と電話会談を行いましたが、対面で会ったのはこれが初めてです。

慰安婦問題や太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題などで日韓関係が冷え込んでいる中、韓国では、G7サミットに合わせて日韓首脳が非公式な形でもことばを交わすのかどうかが注目されていました。

岡田官房副長官「簡単なあいさつ交わした」

イギリスを訪問している菅総理大臣に同行している岡田官房副長官は、記者団に対し「韓国のムン・ジェイン大統領が、菅総理大臣に歩み寄って、ごく短時間、簡単なあいさつを交わしたと聞いている」と述べました。