急事態宣言」法案
成立するとどうなる?

法案が成立し施行されれば、新型インフルエンザ対策の特別措置法の対象に「新型コロナウイルス感染症」が追加されます。

対象とする期間は「最長2年間」となっていますが、担当の西村経済再生担当大臣は、今のところは1年間を想定しているとしています。

そして、総理大臣が「緊急事態宣言」を行うことが可能になりますが、宣言を出す際には、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合と、全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合の、2つの要件をいずれも満たす必要があると定められています。

さらに、感染症の専門家でつくる「諮問委員会」に意見を聞くなどの手続きも必要です。

こうした手続きを経て「緊急事態宣言」が必要だと判断した場合、総理大臣は、緊急的な措置を取る期間や区域を指定し、宣言を出します。

これを受けて、対象地域の都道府県知事は、住民に対し、生活の維持に必要な場合を除いて、外出の自粛をはじめ、感染の防止に必要な協力を要請できるようになります。

また、学校の休校や百貨店や映画館など多くの人が集まる施設の使用制限などの要請や指示を行えるほか、特に必要がある場合は、臨時の医療施設を整備するために、土地や建物を所有者の同意を得ずに使用できるようになります。

さらに、緊急の場合、運送事業者に対し医薬品や医療機器の配送の要請や指示ができるほか、必要な場合は、医薬品などの収用を行えます。

このように、「緊急事態宣言」が出された際には、行政機関に強い権限が与えられるため、与野党の協議や国会審議などでは、慎重な判断を求める意見や国会への事前の報告や承認を求める意見が出されていました。

専門家会議メンバー「直ちに宣言出す必要ない 法整備に意味」

国の専門家会議のメンバーで日本感染症学会の舘田一博理事長は「感染拡大を防ぐ対策として、最も効果的なのは人の動きを抑えることで、中国は強い権限で人々が家から出ないようにして封じ込めに成功しつつある。しかし、日本は中国よりも緩やかな方法で、経済へのダメージを可能なかぎりおさえながら、対策を行うことが可能な段階であり、直ちに緊急事態宣言を出して行うような措置は必要ないと思う」と指摘しています。

そのうえで「日本でも、特定の地域で、中国やイタリアのように爆発的に感染が拡大した場合には、医療体制の崩壊を防ぐ目的で、移動を一時的に制限する必要が出る可能性はある。法律を整備しておくことは意味のあることだと思う」と話しています。

憲法学の専門家「強力でありながら対象があいまい」

憲法学が専門で人権問題に詳しい専修大学の山田健太教授は、「強力でありながら、対象があいまいというのが特徴だと思う。移動や集会の自由が制約され、『外出しないように』ではなく、『外出してはいけません』となってしまうと、ペナルティーがつく可能性がある。集会とは何を指すのかについても、非常にあいまいだ。また、どういう状況になると、緊急事態宣言が発せられるかも審議が不十分で危険だ。この法律を適用するならば、大前提として、政府が情報提供や説明責任をきちんと実行していく必要がある」と指摘しています。