日本大震災追悼式
中止の方向 受け止めは…

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、政府は11日に予定していた東日本大震災の追悼式を取りやめる方向で最終調整を進めています。被災地や各党の反応です。

塩釜市長「残念だが苦渋の決断だろう」

塩釜市の佐藤光樹市長は定例の記者会見で「大変残念だが、遅かれ早かれこういう決断になるのは想定していた。集団で集まることは避けてほしいと民間にも自粛をお願いしている中で、追悼式の中止を判断されたのだと思う。苦渋の決断だったのではないか」と述べ、理解を示しました。

また市が主催する追悼式を取りやめ、市内にあるモニュメントの前に献花所を設置する方式に変更したことについて、「追悼式は中止だが、震災が発生した午後2時46分にそれぞれの思いの中で黙とうしてもらえれば、それが1つの表現方法になるのではないか。震災で犠牲になった人や、被災者の皆様に一日も早い復興を誓いたい」と述べました。

家族4人亡くした男性「当日は寺で供養」

東日本大震災で、妻と長男夫婦、それに孫娘の家族4人を亡くした遺族で、政府の追悼式に出席する予定だった岩手県釜石市の鈴木堅一さん(76)は「けさ追悼式についての新聞記事を見て驚きましたが、これだけいろいろな行事が中止になっているので、『やはりな』と思いました。初めて政府の追悼式に参加するので、自分の中でも大きな節目として臨もうと思っていました。安倍総理大臣が震災後に釜石に視察に訪れたときに直接面会していて、また会えると思っていたので残念ですが、しかたないと思います。当日は近所のお寺で家族を供養します」と話していました。

「残念…」「しかたない…」

仙台市では「中止は残念だ」といった声や「感染を防ぐためにはしかたがない」などという声が聞かれました。

このうち80代の女性は「中止になって残念です。遺族にとって追悼式は法事と同じなのでとてもつらいと思います。なんでもかんでも中止にするのはおかしいです」と話していました。

70代の男性は「残念だけどしかたないと思います。地域によっては献花だけを行うというところもありますが、感染が心配されている今は、こうしたやり方でいいと思います」と話していました。

また、19歳の女性は「感染を防ぐためにどうしようもないのは理解できますが少し残念です。風化が進む中で1人1人が震災の記憶をつなぎとめようと努力する必要があると思います」と話していました。

官房長官「感染拡大防止の観点から最終調整」

菅官房長官は、4日午前の記者会見で「東日本大震災の追悼式は、政府がイベントなどの開催の必要性について再検討を要請していることも踏まえて、感染拡大防止の観点から、現在、最終調整を行っているところだ。できるだけ早く判断したい」と述べました。

立民 安住氏「代わりの弔意方法 検討を」

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「被災地では式典の規模縮小など哀悼の気持ちをどう伝えるか真剣に議論している。政府は真剣に議論している節がなく、頭ごなしに追悼式をやめるのであれば被災地選出の議員としては納得できない」と述べました。

そのうえで「大勢の人でというのは自粛すべきだと思うが哀悼の気持ちをどう伝えるかは真面目に議論してほしい」と述べ、追悼式に代わる弔意の表し方を真摯(しんし)に検討するよう求めました。

国民 玉木氏「新しい取り組みを」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「追悼式の中止はやむを得ないと思うが、被災の記憶と記録を風化させるようなことにつながってはならない。亡くなった方を悼み、われわれの経験をのちの世代にきちんと伝えるため新しい取り組みを行ってはどうか」と述べました。

公明 石田氏「忘れてはならない」

公明党の石田政務調査会長は記者会見で「追悼の形がどうあれ、忘れてはならない。被災者に自分たちのことは忘れられていないと思ってもらえるような対応が必要だ」と述べました。

共産 穀田氏「決意示す方法いろいろある」

共産党の穀田国会対策委員長は記者会見で「政府主催の式典なのでとやかく言うつもりはないが、大事なのは未曽有の震災を風化させないことや復旧・復興の途中だと確認すること、それに哀悼の意を表すことだ。こうした取り組みを続ける決意を示す方法はいろいろあるのではないか」と述べました。

社民 福島氏「取り組むやり方いろいろ」

社民党の福島党首は記者会見で「追悼式は東日本大震災の被害や原子力発電所の問題点について心に刻む重要な日だ。中止になるのであればとても残念だが、3月11日に起きたことを忘れずに取り組むやり方はいろいろあると思う」と述べました。