現の自由争点に裁判で
文科省の見解ただす」知事

文化庁が、愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」に交付する予定だった補助金を、全額交付しないことを決めたことを受け、愛知県の大村知事は、「一方的な決定は承服できない」として、裁判で争う考えを示しました。

先月1日から開かれている「あいちトリエンナーレ」では、「表現の不自由」をテーマに、慰安婦問題を象徴する少女像などを展示する企画展が設けられましたが、テロ予告や脅迫ともとれる電話などが相次ぎ、開幕から3日で中止されました。

こうした中、芸術祭を国の補助事業として採択していた文化庁は、愛知県からの事前の申請手続きが不適切だったとして、予定していたおよそ7800万円の補助金を全額交付しないことを決めました。

これを受け、愛知県の大村知事は、26日夕方、記者団に対し、「寝耳に水で大変驚いた。抽象的な事由で一方的に不交付を決定したことは承服できない。今回の決定については、速やかにただしていかなければならず、弁護士と相談して法的措置を講じ、裁判で争いたい」と述べました。

さらに、大村知事は、「合理的な理由がなく、補助金の不交付を決定するのは、憲法21条が保障する表現の自由の重大な侵害だ。こんな風になるとは思わなかったが、表現の自由を最大の争点として、裁判で文部科学省の見解をただしたい」と述べました。

日本ペンクラブ 決定撤回を求める会長談話

脅迫めいた電話が相次ぐなどして一部の展示が中止された愛知県で開かれている国際芸術祭に対し、文化庁が、補助金を全額交付しないと決定したことについて、作家や詩人などでつくる日本ペンクラブは、26日、決定の撤回を求める会長談話を発表しました。

発表された日本ペンクラブの吉岡忍会長の談話では、「展示を脅迫等によって中断に追い込んだ卑劣な行為を追認することになりかねず、行政が不断に担うべき公共性の確保・育成の役割とは明らかに逆行する」と指摘したうえで、文化庁が、今回の決定を撤回するよう求めています。

官房長官「文化庁が適切対応するのは当然」

菅官房長官は、午後の記者会見で、「補助金に関する決定は、文化庁が、必要な事実関係の確認と審査を終えたことから、公表したと聞いている。展覧会を開催するかどうかは、主催者である愛知県の実行委員会が判断したのだろう」と述べました。

そのうえで、記者団が、「展示内容によって補助金を交付したり、しなかったりするのは、表現の自由を保障した憲法の規定に抵触する可能性があるのではないか」と質問したのに対し、菅官房長官は、「国民の税金で賄われている補助金の取り扱いに関することなので、文化庁が、事実関係を確認したうえで、適切に対応するのは当然のことではないか」と指摘しました。