京で韓国文学の魅力を
語り合うイベント

日韓関係の悪化が懸念されていますが、日本と韓国の文学は互いに多くの作品が翻訳され、それぞれの読者の間で親しまれています。東京では7日夜、韓国文学の魅力を語り合う読書イベントが開かれ、参加した人からは「文学を通じて、同じ時代に生きる人が感じていることを理解したい」といった声が聞かれました。

東京 千代田区にある韓国の本を専門に扱うブックカフェでは、7日夜、韓国の現代文学の作品について語り合うイベントが開かれ、およそ20人が参加しました。

チェ・ウニョン(崔恩栄)さんの「ショウコの微笑」という短編集について翻訳者も交えて語り合い、「自分自身のつらさに寄り添ってくれる感じがした」とか、「女性どうしの絆のつながりが上手に描かれている」といった感想が交わされていました。

日本と韓国の文学は、村上春樹さんや東野圭吾さんなどの作品が韓国でも多く読まれる一方、日本でもここ10年ほどで韓国の作品の翻訳が進み、それぞれの読者の間で親しまれています。

参加した男性は「韓国のことは知っているようで知らないことが多く、最近の政治状況もあって、もっと知りたいと思っています。文学を通じて、同じ時代に生きる人が感じていることを理解したい」と話していました。

イベントを開いた、韓国文学を日本に紹介する出版社の代表、キム・スンボク(金承福)さんは、「文学は、時間をかけて人の気持ちが分かるようになる力があると思います。韓国の文学が好きな人たちが増えてきているので、いいものをたくさん紹介し続けていきたいです」と話しています。

「ショウコの微笑」韓国でベストセラー

「ショウコの微笑」は、2013年にデビューした30代の若手女性作家、チェ・ウニョンさんが、韓国で3年前に発表した初めての短編集で、日本では去年12月に翻訳版が刊行されました。

日本から韓国へ1週間の文化交流で訪れた高校生の「ショウコ」と、ホームステイ先の同級生の「私」が、10年を経て再会し、お互いの心の内に向き合う様子を描いた表題作など、7つの作品が収められています。

翻訳版の版元によりますと、静かで端正な文体で読者の心に深い余韻を残す作風が支持され、韓国ではベストセラーとなっているということです。

日韓の文学 共に両国の読者にしっかり根づく

韓国での日本文学の受容に詳しい翻訳家の舘野*アキラさんによりますと、韓国ではもともと翻訳文学の刊行が盛んで、1970年代には、三浦綾子のキリスト教の信仰に根ざした小説や、山岡荘八の歴史小説などがすでに広く読まれていたということです。

2000年代に入ると、村上春樹さんや東野圭吾さんがベストセラーの常連になるなど、日本文学の新作が同時代的に読まれるようになり、小説の分野では、今は韓国の作家と同じ程度に読まれているということです。

一方、日本では2010年代に入ってから、それまでは少なかった韓国文学の翻訳が進み、複数の出版社が現代の韓国文学のシリーズを組むなど、その魅力が知られるようになりました。

特にここ5年ほどで急速に人気が高まっていて、去年発売されたチョ・ナムジュ(趙南柱)さんの小説「82年生まれ、キム・ジヨン」が、翻訳文学としては異例の13万部というヒットを記録しているほか、先月には、韓国文学を特集した文芸誌「文藝」が、創刊号以来86年ぶりに2度の増刷を行うなど、ブームを象徴する出来事が続いています。

舘野さんは「文化はお互いに影響し合って育つものなので、非常にいい現象だと思います」としたうえで、現在の日韓関係を踏まえ、「政治と文化はイコールではないです。人間の生活を描き、楽しみや悲しみを伝えるのが文学で、それは政治状況に振り回されるものではありません。日本文学は韓国の読者にしっかりと根づいているので、不買運動が起ころうと、もう読まないということにはならないと思います」と話しています。

*アキラは、「析」の下に「日」