戒権」見直し 法相が
審議会に諮問 児童虐待受け

法務大臣の諮問機関「法制審議会」が開かれ、山下法務大臣は、相次ぐ児童虐待の問題を受けて、親が子どもを戒めることを認める民法の「懲戒権」の見直しを諮問しました。また、戸籍がないまま暮らす「無戸籍者」の主な原因と指摘される、民法の「嫡出推定」制度の見直しも諮問しました。

親が子どもを戒めることを認める民法の「懲戒権」は、虐待する口実として利用されるケースもあり、19日に成立した改正児童虐待防止法などの付則に、施行後2年をめどに、その在り方を見直すことが明記されました。

法制審議会の臨時総会が20日に開かれ、山下法務大臣は「課題に対処するため、速やかに審議に入ってほしい」と述べ、「懲戒権」の見直しを諮問しました。

法制審議会では、「懲戒権」の規定を、民法から削除することなども含めて、議論が行われる見通しです。

また、山下大臣は、出生届が出されずに、戸籍がないまま暮らす、「無戸籍者」の主な原因と指摘される、民法の「嫡出推定」制度の見直しも諮問しました。

「嫡出推定」は、子どもが生まれた時期によって父親を定める仕組みで、今後、父子関係を否認する「嫡出否認」の権利を子どもや母親にも広げるかどうかなどが議論される見通しです。見直しが実現すれば、明治31年の制度開始以来、初めてのことになります。

懲戒権たてに体罰 正当化する親も

民法の「懲戒権」について、法務省は「子どもの問題行動を正すために一定の制裁を加えることができる」としていますが、明らかな暴力行為は認められないとしています。
しかし、虐待をした親を指導する児童相談所の職員からは「懲戒権」をたてに虐待にあたる体罰を正当化する親もいるという声もあがっています。

東京都北児童相談所の横森幸子所長は「しつけと称してたたく行為は、深刻な虐待にエスカレートする危険があり、子どもの健全な発達に悪影響を与える。しかし、体罰をやめるよう指導した親の一部には、『しつけは親の権利であってたたくのもその範ちゅうだ』などと反発する人もいる。体罰の無いしつけをどう普及させていくか、社会全体で議論する必要がある」と話しています。