ンカー攻撃「不発爆弾を
イランが回収の映像」と米軍

中東のホルムズ海峡付近を航行中の2隻のタンカーが攻撃を受けたことについて、アメリカ軍はこのうち1隻の船体から、イランの精鋭部隊「革命防衛隊」が不発の爆弾を取り外す様子をとらえたとする映像を公開しました。アメリカとしてイランの関与を強調するねらいがあるとみられます。

中東のホルムズ海峡付近のオマーン湾を航行中の「フロント・アルタイル」と「コクカ・カレイジャス」の合わせて2隻のタンカーが13日、攻撃を受け、アメリカのポンペイオ国務長官は「イランに責任がある」としてイランによる攻撃だと主張しました。
ただ、ポンペイオ長官はイランだと断定した根拠は示していません。

こうした中、中東地域を管轄するアメリカ中央軍は13日夜、声明を発表し、「コクカ・カレイジャス」の船体の側面から遠隔装置で起爆させる「リムペット・マイン」と呼ばれる爆弾が発見されたと明らかにしました。

声明によると、この爆弾は爆発しておらず、攻撃からおよそ9時間後の現地時間の午後4時すぎにイランの精鋭部隊「革命防衛隊」のボートが「コクカ・カレイジャス」の船体に接近し、この爆弾を取り外したとして一連の様子をとらえたとする映像を公開しました。

「リムペット・マイン」について、アメリカのメディアは、アメリカ政府がイランの関与を主張する、先月のサウジアラビアなどのタンカー4隻への攻撃でも使われたとみられると伝えています。

アメリカのメディアは、イランがみずからの関与を隠すために爆弾を回収したとする政府当局者の見方を伝えており、アメリカとして映像を公開することでイランの関与を強調するねらいがあるとみられます。

リムペット・マインとは

リムペット・マインは、船体に取り付けて爆発させるタイプの爆弾です。

オーストラリア戦争記念館によりますと、オーストラリア海軍では1キロ近い爆薬を搭載し、タイマーで起爆させることができるリムペット・マインを1930年代に開発し、第2次世界大戦中に使用していたということです。

また、スペインで弾薬などを取り扱う会社のホームページによりますと潜水士が海中で船体に取り付け、爆発させる爆弾で、船を破壊する威力があるということです。

5月のタンカー攻撃「リムペット・マインの可能性」

現場の海域では5月も、サウジアラビアなどのタンカー4隻が何者かによる攻撃を受けています。

この事件について、サウジアラビアなどの関係国が今月6日、国連安保理に報告した調査結果では、速度の速い船舶がタンカーに接近し、ダイバーが船舶に爆弾を仕掛けて爆発させた可能性が高いとしています。

さらに報告では、残された爆弾の破片の写真を示したうえで、攻撃には船体に取り付けて爆発させるタイプの爆弾、「リムペット・マイン」が使われた可能性が高いと結論づけています。

また報告では、現場海域に停泊していた200隻余りの中から、サウジアラビアなど関係国の4隻を選び出したうえで、1時間以内に攻撃を仕掛ける巧妙な手口は、国家の関与なしにはできないと指摘しています。

サウジもイランを強く非難

今回の事件について、イランと敵対関係にあるサウジアラビアは、アメリカと足並みをそろえてイランに対する非難を強めています。

サウジアラビアのジュベイル外務担当相は13日、アメリカCNNテレビに対し「アメリカの分析に全面的に賛成する。イランにはタンカー攻撃を繰り返してきた歴史がある」と述べて事件には敵対するイランが関与しているとして強く非難しました。

また、ファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は「2隻のタンカーがテロ攻撃を受けたことについて重大な懸念を持って状況を注視している」としたうえで、「サウジアラビアは自国の港湾施設や周辺海域を守るためにあらゆる必要な措置をとる」と述べて、警戒態勢を強める考えを示しました。

イラン外相「米主張に証拠なし」

アメリカのポンペイオ国務長官がイランが行った攻撃だと非難したことについて、イランのザリーフ外相は14日、ツイッターに「事実や状況に基づく証拠は全くない」と書き込み、アメリカ側の見方を全面的に否定しています。

また、ザリーフ外相は「Bチーム」と呼ぶボルトン大統領補佐官などの対イラン強硬派にも言及し、「安倍総理大臣も含めた外交努力を妨害し、イランに対する『経済テロリズム』を隠蔽する新たな作戦を進めつつある」と批判しています。

イラン外務省「米の糾弾は危険」と反発

また、イラン外務省のムサビ報道官は、14日、声明を発表し「ポンペイオ国務長官のイランに対する糾弾は危険だ」として、アメリカがイランの関与を主張していることに反発しました。

そのうえで、「イランはホルムズ海峡の安全を守る立場にあり、短時間に乗組員を救助することでそれを示した」として、イランは必要な役割を果たしたとして、関与を否定しています。

イランは、救助した乗組員の様子を国営放送でいち早く伝えるなど、救助活動で果たした役割を積極的に発信していて、イランの関与を主張するアメリカをけん制し、事件とは無関係であることを強調するねらいがあるものと見られます。

救出された乗組員は

イラン国営テレビは、被害を受けたタンカーから救出されたとする乗組員の様子を伝えました。

映像は南部のジャスクの港で撮影され、乗組員とみられる10人余りが映っています。

このうちフィリピン人の男性は国営テレビに取材に対し「みんなとてもよく面倒をみてくれています」と話し、ロシア人の男性は「食糧や水を提供されよい世話を受けています」と話しています。

乗組員の救助後の写真 米軍が公開

一方、中東地域を管轄するアメリカ中央軍は、攻撃を受けた「コクカ・カレイジャス」の乗組員が救助されたあとの写真を公開しました。

アメリカ軍の駆逐艦の上で撮影したという写真では、医療チームが救命胴衣を身につけた乗組員の健康状態をチェックしたり、乗組員に飲み物を提供したりしている様子が確認できます。

乗組員らは、アメリカ海軍の支援を受けてすでにタンカーに戻ったということです。

1隻は乗組員戻りUAEへ

「コクカ・カレイジャス」の運航に関わるシンガポールの「バーナード・シュルツ・シップマネジメント」によりますと、安全のため別の船に救助されていたコクカ・カレイジャスのフィリピン人の乗組員らは、アメリカ海軍の支援を受けてタンカーに戻ったということです。

その後、緊急用の動力を復旧させ、現在タンカーは100キロメートル余り離れた、UAE=アラブ首長国連邦のホール・ファカンに向かっているということです。

タンカーの状況は安定していて沈没のおそれはなく、積み荷の損傷もないとしています。