好関係の基盤が」
河野外相 電話会談で

太平洋戦争中の徴用をめぐる裁判で、韓国の最高裁判所が日本企業に賠償を命じる判決を言い渡したことを受け、河野外務大臣は韓国のカン・ギョンファ(康京和)外相と電話で会談し、「日韓関係の法的基盤が根本から損なわれたことを重く見ている」と伝え、韓国側にきぜんとした対応を取るよう求めました。

太平洋戦争中に「徴用工として日本で強制的に働かされた」と主張する韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、韓国の最高裁判所は30日、「個人請求権は消滅していない」として賠償を命じる判決を言い渡しました。

これを受けて河野外務大臣は、31日午前9時すぎからおよそ20分にわたって韓国のカン・ギョンファ外相と電話で会談しました。

この中で河野大臣は、「徴用をめぐる問題は1965年の国交正常化の際に解決済みで、判決によって日韓の友好関係の法的基盤が根本から損なわれたことを非常に重く見ている」と伝えました。

そのうえで、韓国政府が日韓基本条約や日韓請求権協定にのっとって、日本の国民や企業に不当な不利益を及ぼすことがないよう、きぜんとした対応をとるよう求めました。

会談のあと河野大臣は記者団に対し、「法的基盤が損なわれれば日韓関係に影響が出ないことはないと申し上げた。韓国政府内でこの問題について対応を協議しているということだったので、韓国政府の対応方針の決定を待ちたい」と述べました。

韓国「対応案を用意していく」

韓国外務省は31日午前の電話会談について、河野外務大臣が今回の判決に対する憂慮など日本政府の立場を伝えたことに対し、カン・ギョンファ外相は「韓国政府は司法の判断を尊重して、今回の判決と関連する事項を綿密に検討し、さまざまな要素を総合的に考慮して対応案を用意していく予定だ」と説明したと発表しました。

そのうえで、双方は、両国関係の未来志向的な発展のための協力を持続していく必要性を確認したということです。

官房副長官「韓国政府の対応見極めていきたい」

西村官房副長官は午前の記者会見で、「1965年の国交正常化以来築いてきた日韓友好協力関係の法的基盤を根本から覆す今般の判決は極めて遺憾である」と述べました。

そのうえで西村官房副長官は「今後の日本政府の対応については、まずは、韓国政府がいかなる対応を取るのかを見極めていきたい。韓国政府に対して、適切な措置を講ずることを求めているところだ」と述べました。

「徴用工」判決に批判 自民外交部会など合同会議

自民党は外交部会などの合同会議を開き、冒頭、中曽根元外務大臣は「徴用をめぐる問題は、日韓請求権協定で完全に解決したとなっている。これを覆すのは国際常識でありえない。韓国は国家の体を成しておらず、韓国に投資する企業も少なくなる」と厳しく批判しました。

出席者からは「政府は、企業の財産を守らなければならない」とか、「政府だけではなく、自民党としても対抗策を打ち出すべきだ」などと、政府に対し、韓国政府には強い姿勢で臨むよう求める意見が相次ぎました。

そして合同会議では、外交交渉での解決が難しい場合には、日韓請求権協定に基づく第三国も交えた仲裁委員会の開催も検討すべきだとする決議を取りまとめる方針を確認しました。