愛子さま 成年行事に臨まれる
祝意に笑顔で一礼

今月1日に20歳になった天皇皇后両陛下の長女の愛子さまは、5日、皇居で成年の行事に臨み、報道陣からの祝意に「ありがとうございます」と笑顔で一礼してこたえられました。

宮内庁によりますと、愛子さまは午前中、皇室の祖先などをまつる宮中三殿に参拝したあと、宮殿で、天皇陛下から「宝冠大綬章」と呼ばれる勲章を授けられました。

そして、昼すぎに天皇皇后両陛下への成年のあいさつを終えると、宮殿の「西車寄」で待つ報道陣の前に姿を見せられました。

ティアラと呼ばれる髪飾りや勲章を身につけた白いロングドレス姿の愛子さまは、少し緊張した様子で一礼し、報道陣から「愛子さまおめでとうございます」と声をかけられると、「ありがとうございます」と笑顔でこたえ、再び一礼してほほえまれました。

愛子さまは、続いて上皇ご夫妻にあいさつをするため、東京 港区にあるご夫妻の仮住まい先を初めて訪れ、門の前では車の窓を開けて集まった人たちににこやかな表情で手を振られていました。

新型コロナウイルスの影響で、面会を控えていたため、愛子さまと上皇ご夫妻が会われたのは、およそ1年9か月ぶりだということです。


愛子さまは、このあと皇居・宮殿に戻って、秋篠宮さまをはじめとする皇族方や、岸田総理大臣など三権の長から祝賀を受けられました。

そして、行事で使うティアラを貸してくれた天皇陛下の妹で元皇族の黒田清子さんなどからも祝賀を受けられたということです。

愛子さまは、今後、成年皇族として公務に臨むことになり、年明けには「新年祝賀の儀」や「歌会始」など、宮中の正月行事に出席される見通しです。

また、学業の落ち着く来年3月には、成年にあたっての記者会見に臨まれることになっています。

皇室のティアラは明治時代から

成年の行事では、愛子さまが着用されるティアラにも関心が集まっています。

ティアラは宝石をちりばめた冠型の髪飾りで、皇室での歴史は明治時代にさかのぼります。

日本が近代化を目指す中で、明治19年、宮中における女性の正式な服装が洋装と定められ、当時の元老院の資料では正装の例を示すスケッチにティアラのような髪飾りが描かれています。

また、明治20年の新聞記事では明治天皇のきさきの昭憲皇太后のティアラの製作をドイツの職人に依頼し、60個のダイヤモンドが用いられると報じられています。

このティアラは、通称「皇后の第一ティアラ」と呼ばれ、大正天皇のきさきの貞明皇后、昭和天皇のきさきの香淳皇后、そして上皇后さまに事実上、受け継がれ、おととし11月の天皇陛下の即位にともなうパレードでは皇后さまがつけられました。

「皇后のティアラ」は、このほかにも菊のモチーフが日本らしさを醸し出す、通称「第二ティアラ」や、唐草模様のデザインが優雅な「第三ティアラ」があるとされています。

女性皇族のティアラは

歴代の皇后以外の女性皇族のティアラは、成年を迎える際などに新調されることが慣例となっています。

近年は指名競争入札などを行って、皇室の公的な予算にあたる「宮廷費」で製作されることが多くなっています。

秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さんの場合、ほかの装飾品と一式で2856万円。
次女の佳子さまは、2793万円でした。

これらのティアラは国の所有となるため、女性皇族が結婚などで皇室を離れた場合、返却され、宮内庁が管理することになっています。

一方、愛子さまが着用される黒田清子さんのティアラは、公的な予算ではなく、天皇家の生活費などにあてられる「内廷費」で作られ、結婚後も黒田さんの所有となっています。

宮内庁によりますと、今回、愛子さまの頭の形に合わせて調整が行われたということです。
側近によりますと、黒田さんが快くティアラを貸してくれたことに、天皇皇后両陛下と愛子さまは深く感謝されているということです。

ティアラ製作 デジタル技術と熟練職人の技

女性皇族のティアラはどのように作られているのか。
秋篠宮ご夫妻の長女の眞子さんのティアラなど複数の皇室のティアラを製作してきた東京 千代田区の工房を取材しました。

精巧で複雑なデザインのティアラは、宝飾品の中でも特に高い技術が求められるといいます。

デジタル技術が進んだ今は、コンピューターの設計システムを使って、部品の形や傾き、宝石の大きさなどを調整してデザインします。構成する部品のもとになる型は、3Dプリンターで作ります。

部品は1000個近くに上るということで、熟練の職人がすべて手作業で組み立てていきます。

そして、繰り返し研磨して形を整え、ダイヤモンドなどの宝石を取り付けます。製作期間は最短でも半年、皇室のテイアラではおよそ1年半かかるものもあるといいます。

この工房「アトリエマイエドール」の手鹿正博製作室長は「ティアラは一般的なジュエリーとは格が違い、技術の高さが問われていると思います。特に皇室の方のティアラに携わるのは、本当に名誉なことで、特別な思いで作っています。歴史に残るものなので、未来の人たちが僕が作ったものを見てきれいだなと思ってくれたらいいなと思います」と話しています。

製作の発注元で、皇室のティアラも手がけてきた宝飾品などの専門店「和光」の藤本麻理子アシスタントマネージャーは「ティアラの歴史はとても古くてギリシャ、ローマ時代にさかのぼると言われています。非常に壮麗で優雅で、幸福の象徴であり、デザインや素材、技術面においても宝飾製作のすべてが凝縮されていると思います。皇室の方のティアラは、格調の高さを象徴していて、取り扱う機会に恵まれたことを誇りに思っています」と話していました。

ティアラ着用は伝統の継承

今回、愛子さまが黒田清子さんのティアラを借りられることについて、皇室のファッションに詳しい歴史文化学研究者の青木淳子さんは「天皇の娘であった清子さんが着用されたものを愛子さまが着用されるということは、まさしく伝統の継承と言えると思います。また、歴史的に見ても、皇室には、物を長く、大切に使わってきた慣習があります。コロナなどもあって、国民の苦しみに配慮されてご判断されたことに皇室の堅実な姿勢を感じます」と話します。

また、成年の行事に臨まれる愛子さまについて「成年の行事にティアラを着用されるというのは、まさしくプリンセスの証しだと思います。勲章、ティアラと一式のアクセサリー、ローブ・デコルテを身にまとわれる時、皇族、皇室の一員であるという自覚をお持ちになるのではないでしょうか」と話していました。