在アフガニスタン大使館職員
国外退避 大使館は一時閉鎖

アフガニスタン情勢の急速な悪化を受け、日本政府は17日、現地の大使館職員12人を国外に退避させました。首都カブールにある日本大使館は一時閉鎖し、トルコのイスタンブールに臨時事務所を設けて業務を継続することになりました。

反政府武装勢力タリバンの進攻でアフガニスタンの政権が崩壊し、治安情勢が急速に悪化していることを受け、日本政府は17日、現地の大使館職員12人をイギリスの軍用機でUAE=アラブ首長国連邦のドバイに退避させました。

また、アフガニスタンの首都カブールにある日本大使館は15日をもって一時閉鎖し、トルコのイスタンブールに臨時事務所を設けて業務を継続することになりました。

外務省によりますと、アフガニスタンにはまだ若干名の日本人が残っているということです。

外務省は、危険情報としてはもっとも高いレベルの「退避勧告」を出し、現地に残る日本人に早期の退避を促すとともに、目的のいかんを問わず、アフガニスタンへの渡航はやめるよう呼びかけています。

菅首相「関係国と連携し適切に対応」

菅総理大臣は17日夜の記者会見で「わが国やアメリカを含む国際社会は、アフガニスタン政府自身による国づくりを後押しする前提のもとで、およそ20年間にわたり、安定化と復興に向けて一体となって取り組んできた。今般、首都カブールへのタリバンの入域によってガニ政権は機能しなくなり、タリバンへの権力移譲の流れとなったが、今後の情勢は依然として不透明だと思っている。
わが国としては、アフガニスタンの安定化と復興が、地域や国際社会の平和と安定にとって、引き続き極めて重要だと認識している。邦人の安全確保を最優先に、日本の国益を踏まえつつ、アメリカなどの関係国と連携して適切に対応していく」と述べました。

茂木外相 エジプト外相とアフガニスタン情勢への懸念共有

中東地域を歴訪している茂木外務大臣は、エジプトのシュクリ外相と会談し、アフガニスタン情勢への懸念を共有したうえで、現地の治安や秩序の回復に向けて連携して対応していくことで一致しました。

茂木外務大臣は、日本時間の16日夜、中東歴訪最初の訪問国、エジプトでシュクリ外相とおよそ1時間半、会談しました。

この中で、両外相は、アフガニスタン情勢をめぐって意見を交わし、反政府武装勢力タリバンの進攻により、政権が事実上崩壊した現地情勢への懸念を共有しました。

そのうえで茂木大臣は、情勢のさらなる不安定化を防ぐため、イスラム世界に影響力のあるエジプトと協力していきたいと呼びかけ、両外相は、現地の治安や秩序の回復に向けて連携して対応していくことで一致しました。

また茂木大臣は、エジプトは、アジアとヨーロッパ、アフリカをつなぐ地政学上の要衝に位置しており、法の支配に基づく国際秩序の推進はエジプトの利益にも資すると指摘し、両外相は、国際秩序の実現に向けて、両国間の協議の枠組みを立ち上げることで合意しました。

タリバン幹部 「女性は政府組織参加すべき」不安払拭の思惑か

政権が崩壊したアフガニスタンの新しい政権への移行について、反政府武装勢力タリバンの幹部は、国営テレビのインタビューで女性の登用に前向きとも受け止められる発言を行い、女性の政治的な権利を保護する姿勢を示すことで、国民や国際社会の不安を払拭(ふっしょく)したい思惑があるとみられます。

アフガニスタンでは、攻勢を強めていた反政府武装勢力タリバンが首都カブールに進攻し、政権が崩壊しました。

17日のカブール市内は、道路などでタリバンの戦闘員による検問が続く中、商店の多くも閉まり、道行く人もまばらとなっていて、多くの市民は外出などの活動を控えているとみられます。

タリバンが政権樹立への意欲を示す中、幹部の1人で文化政策を担当するサマンガニ氏はアフガニスタンの国営テレビのインタビューの中で「われわれは女性を犠牲者にするつもりはない。女性はイスラム法に基づいて、政府の組織に参加すべきだ」と述べ、新しい政権への移行にあたり、女性の登用に前向きとも受け止められる姿勢を示しました。

タリバンは、旧政権時代にイスラム教を厳しく解釈した政権運営を進めたことから、アフガニスタンの国民や国際社会からは、タリバンが再び政権の座につけば、女性の人権が侵害されるのではないかと懸念する声も出ています。

このため、今回の発言は、女性の政治的な権利を保護する姿勢を示すことで、こうした不安を払拭したい思惑があるとみられます。