40代〜50代の重症患者
第3波ピークの4倍近くに

新型コロナウイルスに感染して重症になった患者の数は、東京都内ではこれまでで最も多かった年末から年明けの感染拡大の「第3波」のピークを超え、過去最多の176人となりました。

第3波では60代以上の世代が重症患者の80%以上を占めましたが、今回の感染拡大では50代以下がおよそ70%を占め特に40代から50代の重症患者は第3波のピーク時の4倍近くになっています。

東京都によりますと、都の基準で集計した重症患者の数は、第3波のことし1月20日に160人と最も多くなったあと、3月中旬には37人まで減り、4月中旬までの1か月間は30人台から40人台が続きました。

その後、第4波によって重症患者も増加し、5月12日には86人となりましたが、医療体制が危機的な状況となった大阪府や兵庫県などに比べると重症患者数は少なく、6月下旬には37人にまで減りました。

ところが、先月以降は感染拡大の第5波で重症者数も増加傾向となり、特に先月下旬には60人台だったのが、この3週間ほどで176人と3倍近くに急増しています。

年代別に見ると、第3波では60代以上の世代が重症患者の80%以上を占めましたが、現在の感染拡大では50代以下がおよそ70%を占めています。

特に増えているのが、40代から50代の重症患者で、1月20日の時点では24人と全体の15%でしたが、9日の時点では94人と第3波のピーク時の3.9倍となり、全年代のうちの60%を占めています。

また、30代以下の重症患者は、1月20日にはいませんでしたがきのうの時点では、10代が1人、20代が4人、30代が10人となっています。

一方で60代以上の重症患者は1月20日には136人だったのが、ワクチン接種が進んでいることもあり、9日の時点では48人でした。

7月体調急変31人自宅などで死亡 若い世代も

新型コロナウイルスに感染し、自宅などで体調が急に悪化して亡くなった人は、先月、31人にのぼったことが警察庁のまとめで分かりました。
50代までの比較的若い世代が58%を占めていて、専門家が注意を呼びかけています。

全国の警察は、医療機関以外で亡くなった人などについて詳しい死因を調べていて、警察庁によりますと、新型コロナウイルスに感染し自宅などで体調が急に悪化して亡くなった人は、先月1か月間に31人にのぼりました。

東京が13人と最も多く、次いで神奈川が7人、埼玉が4人などと首都圏で77%を占めています。

年代別では50代が9人と最も多く、50代以下が58%を占めていて比較的若い世代でも亡くなるケースが相次いでいます。

去年3月から先月までの合計では、自宅などで亡くなった人は警察が把握しているだけで合わせて567人にのぼっています。
死亡したあとに感染が判明したり、医療機関を受診する前に亡くなるケースもあり、専門家は「最悪の事態を防ぐために、体調に異変があれば、ためらわずに医療機関や自治体の窓口にすぐに相談してほしい」と呼びかけています。

重症患者の治療「これまでの大きな波の中で最も厳しい」

新型コロナウイルスの重症患者の治療についてまとめている「日本ECMOnet」理事長で埼玉県の専門病院、かわぐち心臓呼吸器病院で院長を務める竹田晋浩医師は「私の勤務先の病院でも重症患者のほとんどが50代以下で、最大8床だった重症患者用の病床に12人が入院していて、これまでの大きな波の中で最も厳しくなっている。第3波以前は、重症化する患者は高齢者が中心で90代以上だと体への負担が大きいため、人工呼吸器が装着できず、集中治療室に入らない人も多かったが、第5波では重症化しているのは日常的には活発で合併症がない若い人がほとんどで、多くがECMOや人工呼吸器の適用となり、重症病床を使い続けるケースが多くなっている」と話しています。

その上で「患者全体に占める重症者の割合は高くはないがこれほど感染者数が増えると重症者の数は増えてくる。人工心肺装置=ECMOや人工呼吸器を装着している患者の数は首都圏を中心に増えていて、重症患者の治療の現場は非常に厳しい状況だ。私たちは、重症患者を1人でも救命することに全力を注いでいるが、いま、一番やってもらわないといけないのは、感染者の総数を下げていただくことだ」と訴えました。